11月4日

 我が家で自分は格下である。ペットの猫よりも地位は低いと思う。

 風呂に入るのは最後だし、食卓の椅子が一つ壊れて以来、僕の椅子はない。なので立って食べたりする。母も妹もそれにはなにもいわない。そもそも家はゴミ屋敷と化しており、椅子を一つ置くスペースはない。彼女たちは床にものを置いていく。健康食品だのインスタント食品だの薬だの、整理することもないDMの類だの。いうと「私だけのものじゃない」と謎の言い訳をする。「いつかする」とか。そのいつかはここ二十年ない。

 なんでこんなふうになったのかわからない。彼女たちがいなくなってから、このゴミを捨てる役目はきっと自分なのだろうと思う。なぜなら僕は身分が低いからだ。

 風呂に入り、本を読んでいると、腕に長い髪がからまってきた。妹のものだろう。不愉快な気持ちになって読書に没頭することができない。

 この家を、いつか売っぱらってやろうと考えたりする。

 風呂からあがっても、ゆっくりと落ち着く場所はない。むかむかしながら自室に入ると、部屋は散らかっている。つまり、彼らの家族、なのだ、自分は。

 こんな生活がいつまで続くかわからないと思いながらずいぶんと時間が経った。

 動かないことは、せわしなく動くことよりも罪深い気がする。そんなことを考えながら布団に入ったら、すぐ寝てしまった。

 深く考えないのも、やはり僕はこの家族の一員だということだろうか。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

「今日はなにー?」

「今日はかき揚げの日〜」


ああ、食べたい、油をとらないようにしているか余計に食いたい。噛んだ時の音が脳内から聞こえてくる〜!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る