　せっかく旅行に来たというのにあいにくの雨。

　梅雨ってまだじゃなかったっけ？

　旅先でビニール傘を買うことほど、もったいないものはない、と思う。

　傘をさして歩く。本当は絶景をみることができるはずだったのに、曇り空のおかげでずっと先を見ることもできない。

　もう二度とくることはないかもしれない場所だった。なので悔しい。観光ガイドに載っている景色をみたかったのに。

「まあ、こういうのもいいんじゃない」

　そういって一緒にきた友人が慰めた。友人だってみたかったろうに、気を使わせてしまい、なんだか申し訳ない。

「そうだね」

　いつか誰かにこの旅行を伝えた時、

「絶景を見逃した」

　でも、楽しかった、と伝えることができるだろうか。これから晩御飯だ。

✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

「今日はなにー？」

「今日は幸福の日〜」

幸福なんて考えないで生きていることこそが幸福、と幸せは探すものでなく、いつもあるものでした、は同じことを言っている。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい