1月21日

 パリに行くつもりではなかったんだ。

 電話口から彼が嘆いている声がした。

 なんでそんなふうになんているんだろう。わたしは不思議で、ぼうっした。パリに行くのは彼の夢であり、希望だったはずだ。

 なにもいいことがない。いつだって空はどんよりとしている。人々は僕のことを無視している。誰も優しくない。

 それはそうだろう、とわたしは思った。どこにいたって世界の中心は自分だし、場所をかえたごときでなにが変わるというんだ。

 知り合いに誰彼構わず借金をして金を作り、意気揚々と、いや、逃げるようにここから飛び出したくせに。

 帰りたい帰りたい。

 彼は言う。

 帰ったところで、きっと似たようなものだ。

 もう少し頑張れば、とわたしは適当なことを言った。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

「今日はなにー?」

「今日はライバルが手を結ぶ日〜」

俺と貴様、というやつですね。熱い展開!

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