2020年代の散文
無題(スプラトゥーン)
「無題」木村直輝
「よかったら手、繋ぎませんか?」
私は、奥手そうな彼に自分からそう言って、少しだけ彼の方へ手を差し出した。
彼は私の目を見つめて、それから私の手に視線を落とし、そうしてまた私の目を見た。その顔は、少しびっくりしているような、様子をうかがっているような、色の乏しい顔だった。
「……ごめんなさい。」
彼はそう言った。
私はきっと、さきほどまでの彼と
「小肌さんは、『スプラトゥーン』というゲームをご存じですか?」
「……知ってるってほど知らないですけど。なんか、ペンキを飛ばして戦うゲームですよね?」
私の頭にぼんやりと、任天堂が出しているコンピューターゲームの記憶が思い起こされる。やったことはないけれど、ネットやテレビで目にしたことならある。結構人気の高いゲームだったと思う。
「はい。簡単に説明すると、少なくとも対人戦の場合は、陣取りゲームです。チーム毎に色が決まっていて、その色のペンキでステージを塗り合うんです。そうして、最終的に塗られている面積の多い方が勝ちってゲームなんですけど……。」
「……」
「スプラトゥーンのプレイヤーは、自分以外の色のペンキが塗られている場所にいると、ダメージを受けてしまうんです。」
「……」
「それと一緒です。俺は、小肌さんと同じステージの上にこうして立っていますが、」
そう言う彼の右手が、私の左手へと伸びてきて、止まった。
あともう少しで触れてしまえそうな距離。でも、彼の手は止まったし、彼の口は止まらなかった。
「汚れた色の俺は、綺麗な色の小肌さんに触れるわけにはいかない。」
彼の手がすっと飛び去るように私の手から離れた。
「……」
彼の肩の横辺りで、宙に止まった手の指は止まり切らずに切なくほんのわずかにのけぞって、その後彼のポケットの中へと消えていった――。
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主人公、どんな気持ちなんだろう……。俺にはわかんない……。
#ネット小説 #アマチュア小説
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2020年2月7日
https://twitter.com/naoki88888888/status/1225552848529825792
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