第18話 少年を頼る
「これからってどういうこと?」
「……そういや……どうすればいいんだろう……」
「えっ?」
どうすればいいんだろう……ですって? まさか!?
「ねえ……もしかして、何も考えてないの?」
「…………………………………………………………………………………はい」
「ええっ!?」
少し黙ったゼクトの口から、驚くほど呆れた言葉が出た。黙った時点で予想したけど、まさか本当にそんな言葉が出るなんて……。しかも、冷や汗流してるし……。
「ちょっ、ちょっと、何も考えてないのに『大事なのはこれから』とか言ったの!? 馬鹿じゃないの!? ちょっと期待した私の気持ちを返して!」
「仕方ねーだろ! こんなきれいな女の子が泣いてんだから、男として、何とか泣き止んでほしいと思うだろーが!」
「きっ、きれいな!? ……そっ、そうね、そうよね。それなら仕方ないかも……」
きれいな女の子……この場で女の子は私しかいない! 私きれいなんだ! よかった~! 思えば父以外にきれいなんて言ってくれる男なんていなかったな~。
ふふふ! その言葉に免じて今は、これからについて二人で話すことにしましょう。そのためにも、すぐにここから脱出しなければならない。
「なあ、これからについてなんだけどさ、まず外に出て二人で決めないか? こんなとこにいつまでもいたくないだろ?」
「そうね、私にとっては最悪の場所だもの。二人で一緒に出口を探しましょう。ゼクトのことだから分からないんでしょう?」
「う……確かに分からないな……無我夢中で走ってたらここにいたからな。どうやって来たのかも覚えてないし……。ミエダは覚えてないのか?」
「悪いけど覚えてないわ。何年もたってるんだから」
「そうか、なら探し出すしかないな」
私もゼクトも出口は分らないので、とりあえずゼクトが来た道を辿ることから始めた。
だけど、それはすぐに終わった。途中で行き止まりになったから……。
「何でだ!? 行き止まりのはずがないのに!?」
「ここまでで、合ってるのよね?」
「そうなんだ! だけど、道が消えてる、いや塞がってるのか!?」
「……多分、ダンジョンの仕業よ。ダンジョンには侵入者を閉じ込めるタイプのものがあるから、私たちがいるのがそれなのよ」
「なんだって!?」
どうやら、私達がいるダンジョンは厄介なタイプのようね。こうなったら、他の出口まで進むしかない。つまり、最終的には……。
「ゼクト、私達でダンジョンを攻略しない?」
「やっぱりそうなるか…」
「うん」
ダンジョンは出口以外に脱出する方法がある。
ダンジョンの一番奥の部屋にいる上級の魔物を倒すことでダンジョンを攻略し、帰還用の魔法陣を発動させること。そうすれば、魔法陣の上に乗るだけで、ダンジョンの外に出られる。本で知ったことだ。
私は、復讐という形で実戦経験があるけど、ダンジョンに入ったことはない。それに、ダンジョンの知識も多分、古い知識でしかない。となると……。
「私はダンジョンに入ったことないから、ゼクトを頼らせてもらうけどいいかな?」
「……は?」
「私ね、一度しか戦ったことが無いの。ダンジョンの知識も古いから、今の時代を生きるゼクトの知識の方が頼れると思うの。だからお願いします」
「…………」
私は頭を下げる。私がどれだけ役立てるか分からないけど、ゼクトなら今の時代を生きてる分頼りがいがあると思う。今必要なものは、強い力と最新で正確な情報なんだから。魔王だった父からそう教わった。
「よし分かった! 俺のできる限りミエダを守る! なんせ俺には望んだわけじゃないけど魔王の力がある! いやな力だけどとことん利用するぜ!」
「……さっきまでと違って前向きね。それなら私もゼクトを守るわ。何しろ私は魔女と恐れられた女よ、もちろん望んだわけじゃないけどね」
「なんだよ、ミエダだって前向きになってんじゃん」
「ふふふ、ゼクトのおかげよ。それじゃあ、二人で力を合わせて攻略しましょう」
「おう!」
私たち二人は、いつの間にか前向きになれた。ダンジョンを出た後のこれからもすぐに決められるかもしれない。今の私達に具体的な案が無くてもね。
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