第7話 魔女の救出

 俺は決意した。ミエダの封印を解いて復活させてやる。そうしないと後悔する気がする。何でか分かんないけどそんな気がするんだ。


「ミエダ。お前の望みは封印を解くことだな」


「そうよ、もしくは……」


「もしくは?」


「私を殺すことよ」


「は? 殺す? ころ……なっ何ー!?」


 ミエダの口から予想外の言葉が出た。殺すってことはミエダは死を望んでいるっていうことか!? そんな、どうして!?


「殺すだって!? 何で死にたがるんだよ!?」


「封印が解けると思うの? 当時の魔族の最高レベルの封印よ。人間が解くのは無理よ」


「そっそれは……」


「嘘感知魔法なんて高度な魔法を使えるみたいだけど、ゼクトは人間でしょ? 気持ちは嬉しいけど封印を解くのは難しいわ」


「それじゃあ、ミエダがこの封印のことを詳しく教えてくれよ! 俺はミエダの指示に従って封印を解いてやるから!」


「この封印は私の知る限り魔界で最高レベルの封印魔法なの。私が魔法を使えても解くのは難しい。私も魔法の勉強をしてきたからね」


「!?……くっううう……」


 俺はミエダを助けたいのに殺すしか手段が無いだって? いや、確かにそうなんだろう。俺だって魔法の勉強はしてきたけど封印魔法はそこまで詳しくないし、そもそも魔族の魔法だぞ? ミエダの言う通りじゃないか! くそ! 畜生! あんな話を聞いちまったのに!


「ゼクト」


「!!」


「私を見つけてくれてありがとう。話を聞いてくれてありがとう」


「何を言い出すんだ!?」


「死ぬ前にお礼を言いたいの。私はずっと一人で退屈だったから。誰も私を見てくれなかったから」


「!!」


「ゼクトは私を見てくれたわ。本当にありがとう」


「!!」


 その言葉を聞いた時、何故、俺がミエダを救いたいのかようやく分かった。ミエダは俺と同じ、いや俺よりもずっと誰にも見てもらえずその存在を認めてもらえなかったんだ。何年の……心が壊れたのだって同じだ。いや、俺はまだいいほうだろうけど、そんな俺たちが出会ったんだ。


 それなのにミエダがここで死んで終わり? 冗談じゃない! これ以上、理不尽は御免だ! 絶対助ける! 俺の人生を台無しにした禁断の魔法を使ってでもな!


「ふざけんな! 俺はそんな理不尽を認めない!」


「ゼクト?」


「ミエダ! これが魔族の封印魔法なら、俺の中にある魔族の魔法でなら解くんじゃなくて壊せるかもしれない!」


「ゼクト!? 何を言ってるのよ!? 魔族の魔法で壊す!? 何馬鹿なこと言ってるのよ!?」


「そのままの意味だ! やるぞミエダ! お前には俺の話も聞いてもらいたいんでな!」


「何をするつもっ!? こっこの魔力は!?」


「はああああああああああああ!! 剛力魔法・ハンマーパンチ!! いっけえええええ!!」


ドガンッ!


 俺はまず、ミエダの下半身が埋まってる壁に物理的な魔法をぶつけてみた。魔法で強化されたこぶしを放つがビクともしない。それなら連続ならどうだ!連続ハンマーパンチだ!


「連続ハンマーパンチ!! うおおおおおおおおおお!!」


ドガンッ! ドガンッ! ドガンッ! ドガンッ! ドガンッ!


「ゼッ、ゼクト! 落ち着いて! 話をしよう! ゼクトの話聞いてあげるから!」


「うおおおおおおおおおお!!」


「駄目だ、聞こえてない、こんなことしても……」


ピシリッ


「えっ、嘘」


 確かに聞こえた! 壁が割れる音を! 壁の方はもう少しだ! それが終わったら鎖を壊す! そして最後は封印そのものを俺があの魔法で喰らう!


バキバキバキバキッ!


「いっけえええええ!!」


ドッゴーン!!


「かっ、壁が……壁が砕けたわ!」


「はあはあ……どうだ!」


 砕かれた壁からミエダの下半身が出てきた……と思ったら、下半身にも鎖が巻き付いている。どんだけ陰湿な封印なんだよ! その鎖も全部切ってやる!


「すごい……強力な封印魔法の壁を……」


「切断魔法・チェイサースラッシュ!」


「ゼクト……気持ちは嬉しいけど……えっ、この魔法は鎖を切り続けている?」


 このチェイサースラッシュは決めた対象を切断しきるまで切り続ける光の斬撃を生み出す魔法だ。俺は鎖を切るのに最適なサイズの斬撃作る。俺の魔力がある限り切り続けるんだ!


「これがゼクトの言ってた魔族の魔法? 見たことも聞いたこともないんだけど……」


「時代が違うってことだろうよ。おっ! 鎖が切れ始めたぞ!」


「えっ、あっ!」


パキン!パキン!パキン!…………




※数分後


パキン!…………


 ついに最後の鎖が外れた。魔力をだいぶ持っていかれちまった。だけどまだ、最後の仕上げが残っている。ミエダの周りに見えない『何か』がある。多分、封印の大本ってやつだろう。となると最後の戦いはここからだ!


「ゼッ……ゼクト……まさか……ここまでできるなんて思わなかったわ」


「ははは……随分舐めてたんだな」


「でもここまでよ。ゼクトの魔力はもう少ないわ、これ以上は……」


「最後までやるさ。壁や鎖が戻る前に大本を潰す!」


「気付いてたの!?」


「魔法の基礎は学んでるんでな。大本の方は俺の禁術で喰らう!」


「禁術!? 一体何をするつもりよ!? 禁術には代償が……」


「行くぜ! 強食魔法・ハイパードレイン!!」


「強食魔法!?」


「うおおおおおおおおおお!!」


 俺の持つ魔法の中で使うことは無いと思ってた魔法を使う。……俺は、ただでは済まないだろうがな。

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