久しぶりのトリアムだにゃ

『じゃ行ってくるにゃ、この扉は閉まったら帰ってくるまでは開かないにゃ』


「「「いってらしゃい!」」」


 扉に魔力を流すと自動ドアのように扉が開いた。向こうを覗いてみると渦が巻いたような黒い空間が広がっていて、そこに飛び込むには少し勇気が必要だった。でも準備はしっかりしたし、駄メルがあれだけ焦ったところを見るとちゃんと繋がっているはずだ、エイヤってその渦に飛び込んだ!


 渦の中に入るとすぐに前に明るいドアが見えたのでそこに向かって歩こうとしたが足場が無く歩けなかったが泳ぐようなイメージをもつとその異空間を移動することができ明るいドアへたどり着きそこから飛び出たら、そこには目を真っ赤にしてこちらを見ているクリス王女がいた。


「タ、タ、タイガしゃま?」


『そうだにゃ、タイガだにゃ、クリス様ただいまにゃ』


 クリスは俺を抱っこしてワンワン泣いていた。そこに入り口から駆け足で来たロマーノ王子が説明してくれた。


「この扉が出て4日間なにも変化が無くて、ドアも誰が開けようとしても開かずに、クリスは絶対タイガ殿がここから出てくるって言い張ってずっとここで寝泊まりしてたんですよ」


『ロマーノ王子すまなかったにゃ、もう少し早く来ようと思ったにゃ、でももしかしたら向こうに戻れないかもしれないと思って準備に時間がかかったにゃ』


「本当に猫というの動物になってるんですね」


『そうだにゃ…… 女神のいたずらでこんな格好だにゃ』


「話し方も随分かわりましたね」


『話すときも語尾ににゃとつく呪いを掛けられたにゃ、しかも念話以外は疲れるので喋りたくないにゃ』


「タイガしゃまはどんな格好でもタイガしゃまです」


『クリス様ありがとうございますにゃ』


 扉に異変があった場合に備えていつもいる孤児達に加えて騎士も数人待機していたようで、俺が来た時点でいつものように鐘を鳴らしていたそうだ。そのためロマーノ王子もすぐに駆けつけ、しばらくすると王様達はもちろん、未だに城に拠点を構えている勇者ペイロンや聖女カテリーナも駆けつけてくるとの事だ。


 いきなりドアがバーンと開いてペイロンが入って来たのだが、クリスに抱かれた俺をひょいと持ち上げるといきなり爆笑し始めた。


「ハハハッ! ヒィィィ! 面白れえええ! 本当に猫ってやつになってるんだ」


 そういいながら俺の両足をもって顔の前でプランプランさせた。


「タイガ! 裸で恥ずかしくないか? なんだちゃんと付いてるじゃないか?」


「ペイロン! 止めなさい、タイガお帰りなさい。なんか以前のイメージが強くて違和感があるけど……」


 うーん……


 ペイロン許すまじ!


 拘束魔法バインド


 魔法を掛けられたペイロンは俺の足を放して地面に這いつくばった。


『ペイロン、こんな身体でも魔法は以前通り使えるにゃ、ペイロンには特別なお土産をあげるにゃ』


「な、な、なんだ?」


『向こうの世界の香辛料で1本が金貨5枚くらいすにゃ、ありがたく味わうにゃ!』


 そう言いながらアイテムボックスから、乾燥させたハバネロを出し口の中に放り込み口が開かないように更に強い魔法を掛けた。


「うぅーうぅー」


『美味しいにゃ? 涙を出して喜んでるにゃ』


「うぅーうぅー」


 横に首を振っているが知らないふりをしておこう……


 涙目のペイロンを見ていると後ろから両手を掴まれた。


「おぉ、タイガか? ちぃちゃくなったな?」


 王様に両手を捕まれ顔元でブランブランしている。


「丸出しで、娘に抱かれていたのか、キサマ!」


 猫だし…… 仕方ないだろ?


 そう思ったら、ピーンって弾きやがった!


 拘束魔法バインド


「おい、何をする!」


『王様にも、向こうの世界の香辛料をプレゼントするにゃ、金貨5枚位する高級品だから味わって食べてにゃ』


 口を強引に開けて乾燥ハバネロを放り込んで口を噤ませた。


「うーうー」


 王様も涙目で鼻水まで垂らして首を振っている。


『そんなに美味しいならもう1本いるかにゃ?』


 全力で横に首を振っているが、結構強い拘束なのに動かせるのはさすがだな……




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