分家の話を詰めるにゃ

 12時からはこの神社の氏子関連を処理しないといけないが、新田がやる気も出しているし大体の筋書きも書けているようなので、メインは新田に任せて実務を来夢が引き継ぐような感じで話をしていくように決めた。


 12時前に昨日の3人と40代後半と思われる男性が1人神社へやって来た。


「氏子の方と、いろいろやらかした3人さんですね? わたくし、福岡で弁護士をしている新田と申します。氏子さんの今後とこの神社の今後についてお話をしたいと思いますがよろしいですか?」


 氏子らしい男性はきょろきょろと目線を動かして落ち着きのない様子で新田に話しかけた。


「氏子代表をしています稲田と申します。あまり話の内容がわかっていないのですが……」


「3人からお話は?」


「いや、とりあえず12時に神社にいかないと借金をすぐ払ってもらうことになるとしか……」


「なるほど、今はその借金のかたにこの神社の権利をその3人に渡しているんですね?」


「権利と言いましても、書類があるわけではないので口約束ですが、ここでなにかしても文句を言わないというくらいで……」


「借金はどこから?」


「そこにいる野津さんの会社からです」


「わかりました。今の現状をお話しましょう。この3人はこの神社を利用して詐欺紛いの事をしてまして、こっちじゃあまり有名ではないかも知れませんが、善猫ぜんみょう神社という猫神様を祀っている神社があるのですが、その神社の分家をかたりまして境内で何の効果もない水を高値で販売したり、置物を高額で販売したりしていたんですよ。ここからは信じてもらえないかもしれませんが、猫神様がその事を聞き大変お怒りになりまして、関係者全員を他の世界へ飛ばして魔物のエサにでもしてしまえと……」


「そんな馬鹿な……」


「信じるかどうかはそこの3人に聞いていただければ?」


「おっちゃん、マジだから……」

「信じられないかも知れないけど本当なんじゃ」


「その3人には信じていただけたみたいで、昨日のお話のとおりに今後はこの神社に一切関わりを持たないという念書にサインをいただけますよね?」


「するから、あの神様に罰は勘弁してほしいと言ってくれ、どこに書けばいいんか?」


「ここに3名の連名でお願いします。猫神様から3人は一蓮托生で約束を反故した時点で異世界にぶっ飛ばすと聞いています。異世界に飛ばす術式を左肩に刻印しているから一瞬でこの地球上から消滅すると言われてました」


「嫌だああ、助けてくれ」


「昨日猫神様と約束してませんか? 今後は犬や猫の保護を一生をかけて携わりなさいと」


 3人はそれぞれの左肩を確認すると、3人共今まではなかったホクロのようなものが肩に出来ているのを確認して3人共ガクガク震えていた。


「その刻印をワザと消そうとしたら発動するって言ってましたから、決して消そうとか考えないが良いと思いますよ?」


「なぁ先生、先生は猫神としゃべれるのか?」


「残念ながら猫神様は巫女さんかここにいる来夢さんしか話をする事はできません。ちなみにですが、このお二人に害をなそうとした方は翌日から消えました。完全に誰の記憶の中からも存在がなかったように消えましたので多分神罰があたったのでしょう。私も猫神様から少しだけ加護を頂いているようなので、その事案で私達はなにがあったか覚えていますが、他の人はその消えた人達の事を一切解らなくなっていたので完全に消滅したのでしょうね?」


 新田の作り話がとっても怖く出来ていて、あの二人になにかあればとっても怖いことがおきますよということは4人共理解ができたようだった。


「猫神様の言う通りすれば大丈夫なんだな?」


「それは大丈夫だと思いますよ? 神様ですからね」


「じゃここにサインしたから、俺らはもう関係ないで良いのか?」


「ちょっと待って下さい。ここに100万円がありますので稲田さんの借金を消して下さい。なお変な事をすると解っていますよね?」


「わかった、すぐに俺が行って消して証拠も持ってくるから、雅人達はここにいてくれ」


 いてくれと言われた二人はブルブルと震えているが新田がやさしく声を掛けた。


「もうこれで何にも問題ありませんから、そんなに怖がらなくて大丈夫ですよ、万が一この100万を持ち逃げされたら目の前からあなた方3人がいなくなるだけでしょうから……」


 いや、新田…… それって全然慰めになってないしビビらせてるだけじゃ?


「十分解っているから、すぐ戻ってくる」


 そう言って野津は駐車場へ走っていった。


「さて、稲田さんですが、借金はこちらで返済させて頂きましたが、あくまでも100万円は貴方にお貸しする形になりますので借金が無くなったわけではありませんからね? なお利息は全く必要ないので借金だけは貴方がちゃんと働いて返してください。変なお金で返済したら多分罰が当たりますので気をつけて下さい」


「あいつらの態度みてたら、本当にやばそうだからちゃんと返すよ」


「ではこの神社の管理形態についてお聞きしたいのですが?」


「この神社は随分前は俺の父親が神主をしていたが、今じゃ神主もおらず地域の人達でたまに掃除したりする程度で氏子も俺を含めてもそうはいない。どこか壊れても修理もままならんし、賽銭なんて年に5万も集まれば良い方で、修理の積立で全部消えてしまう。俺も父親がここの神主をしていたから氏子代表しているが、そうでなかったらやっちょらん」


「ではこの神社の管理を任せていただけないでしょうか? 収益がでれば神社の修理等も当然行いますし、お祭りをしたり地域に根ざした神社にしますので」


「それであんたらに何があるんだ?」


「善猫神社の分家みたいな扱いでこの辺りの方たちが集えるようにすることと、本家同様にここに猫や犬の保護施設を作って保護をしたいと思います」


「お金に全くならないのに?」


 来夢が新田のバトンタッチして話を始めた。


「私は猫神様に命を助けてもらったので、猫神様から猫や犬の保護をお願いされたのでお金とか関係なく、動物の保護に力をいれたいんです。たぶん少しは神社に還元できると思いますのでご協力お願いします」


「俺はもう神主でもないし、この神社だけちゃんと存続できればそれでいい。他の氏子も名前だけなので問題ないと思うぞ」


 また、新田が主導権を取って話始めた。


「大きな建築基準法の関係するような建物を建てる事はないとは思いますが、なにか権利証関係が必要な時にはご協力いただければ助かります」


「それは大丈夫だ、あの3人の態度を見ていれば断った方のデメリットの方が大きすぎる気がする」


「それは大丈夫ですよ、彼らはやってはいけないことをしたから、あのような事になってますが、貴方は場所を貸しただけですからそんなにビクビクしなくても問題ありません。今後収益が上がったからと自分の懐に入れようとしたりしなければ対等なお付き合いが出来ると思いますよ」


 それからしばらく新田と稲田が細かい打ち合わせに入ったので、来夢となな子達は巫女の4人娘と話をしようと3人娘のところにいくと、そこには4人娘から囲まれたまりのの姿があった。


「「「きゃー可愛い」」」「抱きつきたいハァハァ、巫女たん可愛いハァハァ」


 なんか違う反応の1人が怖い…… へんな道に引きずり込まないで欲しいんだが……


 でも冗談抜きに猫耳の着いた巫女服を着たまりのは可愛らしく、結婚なんてしてないけど父性MAXで近寄る不届きな男性はマジで氷結魔法で氷漬けにしてやろうと思う……


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