エリクサーの行方はどうなるにゃ
翌朝、まりの親子二人は小さなペットボトルを数本持って神社へ向かった。いつものように本殿にお参りするところから動画で撮影をしている。特にクワズイモの場所では金色の粒がうまく映るように工夫をしながら撮影をしつつ、少し大きな声で昨日の話を説明するように話しながら5本分くらいの雫をペットボトルにそれぞれ3滴程入れた。
「まりの、猫神様のお話覚えている?」
「はいなの、採る量は一人分で3粒まででそれをあっちの池の水をいれると出来上がりなの。もしも沢山とれても多すぎると効かないの。あと金色の粒が出なくなっても数日でまたでてくるから大事にするの」
「そうだね、ちゃんと管理すればずっと使えると沢山の人が助かっていいね」
「だからまりのが毎日確認するようにするの」
クワズイモの雫を入れた後に湧水池から、柄杓でそれぞれのボトルに水をいれペットボトルをしっかりバッグにしまい込んだ。昨日猫神様と打ち合わせをしたように、まりので死角をつくり、周りから何本採ったのかわからないように入れていた。
製薬会社の二人は木陰から覗き見ていたが、手元をはっきり見ることは出来なかったので、下西親子が5本も採ったとはわからなかった。しかし、まりの達の会話からまりの達がいた場所のクワズイモの葉っぱの雫と湧水池の水を混ぜれば完成だということは確認できた。
「中林課長、あの芋の葉っぱにそんな効果あるんですかね?」
そう問われたフェイザー製薬の中林は部下の鹿野に向かって
「わからん。あの葉っぱの水だけでいいのか、そこの湧水池の水と反応して効果あるのかはわからん。だがこの水で3人が治ったのは確かなので、なにが何でも手に入れなければ……」
「あのイモも採るんですか? ほかの場所じゃ育たないとか言ってたような気がしますが……」
「とりあえず、植物関係の部署でプロジェクトチームを作ってクワズイモを育てる環境を早急に作ってもらってからだな…… それまでは交代でこいつの監視だ。社運がかかっているプロジェクトになるかもしれないから気をいれて行動してくれ」
「わかりました。とりあえず監視しておくので早く交代の人間よこしてくださいね」
「わかった、わかった。俺は病院に行ってあの2本をどうにかして手にいれてくるよ。交代はその間に手配しておくから安心しろ。交代がきたら好きな昼飯経費で食っていいから」
「本当ですか? デザートも食べますよ?」
「いいぞ、何食ってもかまわん」
「ラッキー! でも早く交代はよこしてくださいね」
「りょうーかい、じゃ行ってくるわ」
木の上からその様子を俺はみていたが、鹿野だけになったのを確認して先程の話からするとクワズイモの栽培準備ができるまでは採取されないだろうからとりあえず病院へ行くことにした。あとでマルと相談してあの苗を捕りに来たら教えてもらうように段取りをつけないといけないな…… 最近チュルンって猫用のフードが大人気らしいので、それで買収しよと思いマルを探したが目につくところにはいなかった。しばらくは大丈夫そうなので、あとからもう一度探しに来ればいいかと思い、転移で病院へ向かった。
しばらくすると中林が着いたようだ。絶対に何かしてきそうなので後をつけると迷わず医院長室へ入っていった。
「医院長、ちゃんとこの目で確認してきましたが、夕方に持ってくると思います。どうしますか?」
「前回は浜名が主治医だったから勝手にしたが、今回は主治医が違うから勝手に飲ませることは出来ない。一度検査をして間違いないかを確認してからしか飲ませられないと言ってその間にすり替える。効果なかったらそれはその水に効果がなかっただけだと言い張れば良い」
「大丈夫ですかね?」
「じゃもったいないが1本を半分に薄めて飲ませるか?」
「あの効果を考えれば半分でも十分効果あるかもしれませんね」
「そうだな、全く効果ないとなったら疑われそうだし仕方ないな」
「もしも半分でも効果あったら、そのイモをどうにかキープしないと、あの親子や他からの話が広がるとまずいぞ」
「ええ、その件はもう専門家を含めて栽培場所の確保と人材は準備できそうなので、すぐにでも回収する予定です」
「ちゃんと、薬ができたら最優先で回せよ」
「もちろん、世界をびっくりさせるような薬ですし、裏で時価で販売する予定ですのでその一部はこの病院に還元させていただきます」
「金持ちはいくらでも出しそうだしな」
「万能薬なんて出したら同業者から恨まれますし、なによりも病院が無くなってしまいますよ」
「それもそうだな…… じゃ夕方あの親子が来たらすぐに井垣に病室に待機させておくよ」
よくもこれだけの悪巧みを考えるな。あの効果を考えればしかたないか? 半分に薄めてもたぶん効くとは思うけど様子をみてみよう。念の為に医院長室にボイスレコーダーをセットして神社へ戻った。
「マルいる?」
「なんかようか?」
「ちょっとお願いがあるんだが、聞いてくれるかな?」
「内容にもよるぞ、あの祠から3本目の木の後ろにあるクワズイモを掘り返そうとする人間がきたら、教えて欲しいんだけど」
「見張るのはいいけど、どうやって教えるんだ?」
「それは、あそこで大声で盗られるうううって叫べば大丈夫だ。報酬として今大人気のおやつチュルンを協力してくれたやつ全員に食べ放題とかどうだ?」
「なに!? あのチュルンを食べ放題だと? この間メイが人間からもらってむちゃくちゃ美味しくて、あんなの食べたこと無いって言ってたやつだな? 本当に食べ放題なのか?」
「大丈夫だ、約束する。先日も俺のパートナーがここに寄付しに来ただろう? いろいろグッズも持って」
「あぁ、食事用の皿とか新しくなったぞ」
「そいつに持ってこさせるから、よろしくな」
「わかった。このへんのやつ全員で交代で見張るよ」
マルと話をした後はクワズイモが見える位置を探して木の上を駆け上がり、良い場所があったので防犯カメラをセットしてみた。ネットで見つけた防水で電池で1ヶ月ほど撮れるらしく、SDカードで数日分の保存もできるそうだ。万が一マル達がその瞬間を逃しても十分撮れるはずだ。そしてマル達が叫んだ時に反応するように魔石に一定の音量がなったらつながるように魔道具を作った。人間の頃と違い爪で魔石を掘るのは大変だった……
準備をしたり、マルト達と話をしていると夕方前になってしまったので病院へ行くことにした。病室へ行くと、ちかと綾香の病室には見たことの無いひょろっとした白衣を着た男性医師が立っていた。こいつが井垣か? とりあえずベッドの下で待機しようとしたら、まりの達が入ってきた。
「ちかちゃん、綾香ちゃんこれが猫神様のお水なの、飲んで」
まりのがペットボトルを2本差し出すと井垣がそれを取り上げてから
「医院長から話は聞いています。なにやらご利益のある水らしいですが、病院である以上一度開封した飲み物をそのまま渡すわけにはいきませんので、少ししらべさせていただきます。そんなにお時間取らせませんのでお待ち下さい」
そう言ってペットボトルを持っていってしまった……
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