第114話 最強の殺し屋

複数体の巨人を観測。

直後、その生命活動の停止を確認。

無理だと思った。

何処に出現するかもわからない巨人から街をたった一人で護るなど不可能だと思った。

しかし最強の殺し屋は、誰も彼もの想像のその先を行くほどに出鱈目であった。


「まずい、こっちにまで巨人が」


遠くで巨人の首が切られるのを見た。

けれど、目の前では同時に出現した巨人が今にも動き出そうとしていた。

倒そうと鎖を動かし始めたその時、衝撃と共にギルティが飛来した。

巨人の瞳に黒色のナイフを突き立て、次の瞬間に巨人の頭部を四つに切り分ける。

切り分けられた頭部が、切り分けられていると気付く頃には、次なる巨人の元へと飛んでいる。

速さが違う、技術が違う、力が違う、何から何まで彼は出鱈目であった。

巨人が現れれば即座に殺す。

数が増えるのであれば速度を上げるだけ。

最速の死神が、巨人の命を刈り取っていく。

巨大な地響きが一つ。

街を取り囲むように巨人が地下から出現した。


「ソルト」


「わかってます」


ソルトは地面に手を付け、地下が穴だらけとなり地面から崩れる可能性のあるこの街を崩れさせないように異能を張り巡らせる。

そしてその異常に気付いた。


「君がソルト君だね」


ロルフがソルトの頭にポンと手を乗せる。


「安心したまえ、私が生きている限りこの街は沈ませないさ」


地下に異常な空間ができてから、この街は常に浮かんでいた。

異常な空間によって浮いていたのではなく、異常な空間ができたことに気付いたロルフがこの街を浮かせたのである。


「私を見ている暇はあるのかい?君達のボスを見ていた方がいいんじゃないかな」


視線を戻したとき、ギルティは一呼吸入れ終え、街の外周を駆け抜けた。

次々と巨人の首を切り落とし、全ての巨人を殺し終えると、街の真ん中、ソルトのいる場所に着地した。

力が抜けるようにガクリと膝を落とすが、バランスを崩しただけで倒れるようなことはなかった。


「久し振りの全力だからか、ちょっと疲れたな」


あれ、全力出したことあったっけ?


濁っていく思考から、抱き着いて来たキャロルが引き戻す。


「ありがとう。やっぱり、一人は駄目—————」


突如地面にぽっかりと穴が空いた。

周囲に人は居らず、近付いて来たソルトもその穴の外であったためにその穴に落ちたのはギルティとキャロルのみ。

一瞬の思考にて判断する。

キャロルを放り投げソルトに受け取らせ落ちながらに伝えた。


「誰も来るな、足手まといだ。長くかかるかもだけど、必ず帰ってくる。だから信じて待っていてくれ」


そこの見えない穴の中へ、ギルティは消えていった。

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