第121話 じょなん
翌朝、
しかし登校時間を過ぎても大豪院は現れず、鍬形は1人待ちぼうけをくらっていた。
『転校2日目でサボりとはなかなか尖ってるな。俺も真面目に学校出てる場合じゃないな…』
そう考えるや鍬形は校門から飛び出して行った。背中に「待ちなさい!」と指導教諭の声が掛かるがそんな物で止まる鍬形ではない。
『どうせ
という考えの元、鍬形はノープランで繁華街方面に走って行った。
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もちろん大豪院は学校をサボるつもりなど無かった。ただ朝から奇妙な事件が多発しており足を止めざるを得なかったのである。
鼻血少女から解放されて1分も歩かないうちに別の少女が大豪院に話しかけてきたのだ。
「そこの体の大きい貴方! 貴方に
長い髪を縦ロールに巻き上げたお嬢様風の少女が芝居がかった物言いで大豪院の前に躍り出て、手に持っている通学鞄を押し付けてきた。よく見れば先程アミの失敗をからかっていた少女であり、彼女がアグエラの第2の刺客であると理解できる。
「このウネ様の鞄を持てるなんて程の幸福、今後貴方の人生に訪れる事は無くってよ?」
そう言って手荷物を大豪院に押し付けようとする縦ロール。余りにも一方的な物言いに大豪院は内心辟易しながらも、無視を決め込みその場を去ろうとする。
すれ違う刹那に縦ロールの鞄が大豪院に触れる。その瞬間『してやったり』と顔を薄く歪ませる縦ロール。しかし大豪院は何らの変化も見せる事無くその場を立ち去って行った。
縦ロールの思惑が何であれ、その目論見が失敗した事は彼女の絶望的な表情を見れば明らかであった。
振り向いて「ちょっと待ちなさいよ!」と声を掛けようとした所で縦ロールの動きが止まった。彼女の目の前に先程の鼻血少女(今は両鼻の穴にティッシュを詰めている)が立っていたからだ。
「何よ、偉そうな事言ってウネだって失敗してんじゃん。アンタの設定は不自然すぎるのよ」
「うるさいわよ。設定とかどうでもいいの。私の戦法は媚薬のたっぷり詰まった鞄に触れさせさえすれば、それでどんな男でもイチコロなのに… なんで…?」
必勝の作戦が失敗して愕然とする縦ロール、いやウネの肩をアミがポンと叩く。
「ね? 分かるでしょ?
潤んでとろんとした目つきで、自分の右手の人差し指をスティックキャンディの様にしゃぶりだしたアミを見て触発された様に、ウネもブルリと身震いをする。その細く絞られた目には狡猾な光が宿っていた。
「ダメよアンタ達、どうしちゃったのよ? いつに無くそんなにガッついて…?」
正気を無くしている様にも見えたアミとウネの後ろから第3の少女の声が掛かる。黒髪ロングの涼やかな美人、カテゴリ分けするなら『学級委員長』というタイプだ。
「オワか… アンタもチャレンジすれば分かるよ。あの大豪院って男はとんでもない難物だよ、でもだからこそその先の『私に屈したアイツ』を想像したらもう…」
「そうね、これは冗談抜きに私達淫魔部隊最大のミッションになるでしょうね」
アミとウネが続けて委員長、いやオワに答える。悶えながら話すアミもウネも目が座っている。もはや片手間の遊びではなく、全霊を賭けて大豪院を攻略するつもりのようだ。
「
3人の淫魔少女の視線の先に居たのは、どことなく綿子と似た雰囲気を持つ元気そうな小柄の短髪少女であった。
「わぁ、お兄さんスゴイ体してるねぇ。アタシ筋肉フェチなんだよねぇ、ちょっと触っても良いかな?」
性別が逆なら事案になりそうな事を言いつつ大豪院に近づく短髪少女、いやイル。
イルはなんだかんだと話しかけつつ大豪院の周りを歩いて回る。一方の大豪院はイルを全く無視して道を進んでいた。
恐らくであるが、大豪院はイルを意図的に無視しているのでは無く、その身長差から彼の視界にイルが入っていなかったのかも知れない。
終始大豪院に羽虫の如く纏わり付くも無視されて、悔しさで涙を目に一杯溜めて佇んでいたイルがアミ達に発見されたのは5分後の事であった。
「あ、あいつ… グスッ、一度もあたしの事を見もしなかった… んだよ…? こんな屈辱初めてで… もうどうしたら…」
「アンタ意外とメンタル弱いのね? まぁちんちくりんには過ぎた任務だったのよ。さて、お次はエトか…」
ウネの残酷な言葉を受けてイルは本格的に大泣きしてしまう。そんな
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