世界のピンチが救われるまで本能に従ってはいけません!!

アマンダ

第1章 少年聖女が誕生するまで

第1話 女神の目覚め

 暖かな寝台で何百年の時を過ごしたのだろうか。

 久しぶりに自分をかすかに呼ぶ声が聞こえて女神エルカラーレは微睡から目覚めた。

 少し眠りすぎたみたいだ。

 ここ数百年は我が愛し子たちは自分で解決していたため油断してた。


「いけない、いけない。現状確認っと。」


 鏡を覗くと大地を侵食する黒い霧が見える。


「あの子たちが作った自動浄化装置?だっけ?どうなったのかしら。」


 女神にとってはつい昨日のことのようだが愛し子たちにとってははるか昔になってしまったあの日の記憶を呼び起こす。


「あらまぁ、壊れてるじゃない。何やってるのよ全くもう!」


 現状に気づいた女神は大きな目をさらに丸くした。


「愚かなかわいい私の子供たち。そうねぇ、また彼女を呼んでひと暴れしてもらうかしら…」


 我が子の愚かさには呆れるところだが、寝坊してこの事態を見過ごした自分も迂闊だった。

 うっかり女神は口ではぶつぶつ言いながらもその声は浮かれていた。

 異なる世界からもたらされる化学反応は愛し子たちを思いもよらない方向へ突き動かす。

 その新しい物語をまた見れる喜びが隠しきれていなかった。


「さてさて、どこにいるかしら〜っと。かわいい救世主さんは。」


 鏡に手を伸ばしその表面を混ぜるように手を動かすと先ほどまで見えていた光景は渦を描いて変わりだす。


「みーつけた!あら?もしかしてこの子は…。やだもう〜こんな偶然ってあるの??」


 鏡に映った黒髪の少女を見てボヤく。


「困ったわ〜、このままだとうまくいかないじゃない…どうしましょう〜。でもこの子じゃないといけないし…あぁでも見つかったら絶対ただじゃ済まない…むしろバラバラなのがおかしいっていうか…出会ったほうがいいけれど出会っちゃったらそこでおしまいなわけで…あぁもう。」


 なんとも独り言の多い女神である。

 綺麗な形の眉をしかめ部屋をグルグル回りベッドへダイブして足をばたつかせた女神はしばらく動かなくなった。

 幼い言動であるが彼女がすると茶目っ気のあふれたいい女に感じてしまう。不思議だ。


「そうよ!とっさにこんなことを思いつくなんて私はやっぱり神!」


 とっさという割には半日ほど悩んでいたが、神であることは確かな女神は早速動きだした。

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