第873話 全部は帰ってから
父さんの昔語りを一通り聞いた、俺とコルネちゃん。
その日は王都の父さんの邸に泊まる事になった。
いや、予定通りなんだけどね。
俺は用意された来客用の寝室に、コルネちゃんはユリアちゃんを連れて自室へと向かった。
コルネちゃんが、どう母さんに報告したのか、父さんに通信させたのかは、俺は知らん!
下手にそんな事に首を突っ込んで巻き込まれたくないからな。
だから、俺は『おやすみ』とだけ言って、さっさと2人(ユリアちゃんはメイドさんが抱っこしていった)と別れたのだった。
準備された寝室にはシャワーブースが設置されているので、寝る前に軽く汗を流してすっきりとする事にした。
このシャワーって、俺の居る寝室よりも高い階でお湯を沸かして壁の中のパイプを通じて流しているだけ。
本当は、呪法具か魔道具で作成した物を設置したかったのだが、元々のこの邸の持ち主のこだわりで造られた物だとかで、改装はあまり歓迎されなかった。
使用人さん達の仕事の負担を少しでも減らしたかったのだが、たまの来客の為なのだから、そこまで負担とは感じないそうだ。
この邸を管理してくれている使用人さん達が、負担に感じて無いんだったら、まあいいか。
ちなみに、父さん達家族や使用人さん達の使う浴場には、しっかりと魔道具でお湯を出せるようになっている。
さて、汗を流し着替えも終えた俺は、来客用の為のベッドに飛び込んだ。
皺も染みも無く、綺麗に洗濯されたシーツと枕。
そしてしっかりと干された布団から、お日様の匂いがするベッド。
いや、待てよ…お日様の匂いじゃ無くて、ダニが死んだ臭いとか聞いた事もある。
真相は知らんけど、あんまり匂いを嗅ぐのは止めておこう。
とか考えながら、俺はごろんと転がり天井を見上げた。
さて、さっきの父さんの話で気になる所があった。
いや、フラグといっても過言ではない、あの話。
王国の北に位置し、遠く雄大に広がる山脈。
あの向こうに、父さんや母さんが若かりし頃に攻め入って来た、まだ俺が知らない国。
その国の名前は、どうにも気になるアルコーン国。
確か、俺の記憶が確かであるならば、偽の神様とか悪魔とかって意味のギリシャ神話の言葉だったはず。
もしかしたら違うかもしれないけど、アイオーンが神って意味だったから、多分間違ってても近い意味だと思う。
しかも全員が羽が生えてるって、それって本当に鳥の獣人なんだろうか。
そして驚愕すべきは、まだこの世界で見た事も無い銃や手榴弾の存在。
いや、前世でも本物は見た事ないけど…。
そんな武器を携えてグーダイド王国に攻め入って来たというアルコーン国は、俺の祖父母の仇の国でもある。
アルコーン国の国民全てが仇とは思わないが、そもそも攻め入って来ていなければ、まだ存命だったかもしれない。
そう考えてしまうと、何ともやりきれない気持ちになるのは許して欲しい所だ。
さて、問題は銃と手榴弾だ。
約20年前に実用化され、量産され、そしてそれを兵士全員に持たせる…国力的にはかなり高いのでは無いだろうか。
それを押し返した所か、銃弾が降り注ぐ戦場を生身で駆け抜け、敵の将兵を討ち取った父さんって…化け物?
父さんが化け物ってのは、今に始まった事じゃないけど、それよりもアルコーン国の事だ。
どうやってあの山脈を越えて来たんだ? 移動手段は何だ? まさか飛んで来たのか?
いや、何故山脈を越えて攻め入って来たんだ? その理由は?
そして最大の問題は、アルコーン国がグーダイド王国に攻め入るのを、本当に止めたのかって事。
もしも、まだこの国を狙っているとしたら…。
そして、さらに進化した銃器や武器類を大量生産していたら?
考えは尽きない…。
でも、父さんのあの話って、絶対にフラグだよな。
この先…いや、近い将来、アルコーン国ってのが我が国に攻め入って来るって事なのかな。
う~~む…今の我が国の戦力で言えば、そうそう簡単に負ける事は無いはずだ。
いや、大抵の敵には勝てるはずだ…が、空を飛ぶ敵ってのは、ちょっと厄介だな。
戻ったら、ちょっとその辺を考えてみるか。
面倒な敵だったりするのなら、サラかリリアさんが教えてくれるはずだしな。
アルコーン国か…ん? ちょっと待てよ。
確か、以前にナディアやアーデ、アーム、アーフェンが作ってくれたこの大陸の地図に、そんな国はなかったはずだぞ?
あの山脈の向こうは…えっと…何があったっけ。
帰ったら最初に確認する必要があるな。
それと武器…は、ユズカ提唱の例のミサイルとか火炎放射器の製造も進めるべき…かもしれない。
ま、全部は帰ってからだな。
今日の所は寝てしまおうかな。
明日は、朝早くに出発だからな。
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