第798話  コース イン!

 さて、ではユズカ提案のアクティビティーがどうなっているのか、ちょっと試してみようかな。

 すでにコルネちゃんやユリアちゃんは、小型の4輪バギーっぽいのにまたがって、ドワーフさん達から操作説明を受けて終わったらしく、瞳をキラキラ輝かせて、今すぐにでも走り出したそうだ。


 では、俺もバギーの操作の仕方のレクチャーを受けようかね。

 …ほむほむ、なるほど! ほぼスクーターと同じ操作方法なのね。

 子供でも運転できそうなぐらい、とても簡単で非常によろしい! 花丸をあげよう。

 それでは、妹天使と書いてマイエンジェル達が早く遊びたくてうずうずしているから出発を…っと、大事なことを忘れてた! これて身体がむき出しだから、何かあったら大変じゃないか!

 ヘルメットとプロテクター類はもちろんだが、グローブとブーツもバイクに乗るときは必須だぞ?

 その辺はどうなってんだ、ユズカ?」

「伯爵様、装備類の開発はまだなので、ご自身でご用意ください」

 自分で装備一式を用意しろと?

 何も知らずにここまで来たんだぞ? 準備なんてしてるわけなかろう?

 あれ? そう言えば最初からこうなることが分かってたコルネちゃんやユリアちゃんも、お弁当しか持って来てなかった様な。

「おにいちゃーーん! しゅっぱつするよーー!」

 じれたユリアちゃんが、そう声を掛けて来たけど、普段着ではちょっと危ないと思うんだけど…お兄ちゃんとしては…。

「伯爵様、何かお忘れではありませんか?」

 ユズカが馬鹿にしたような顔で、そんな事を言い出した。

 確かにお弁当は持ってきてないが…それは忘れたとは言わないし…俺、何を忘れたの?

「マジで忘れたんですか? もしかして若年性痴ほう症!?」

 ちゃうわ!

 いや…改めてそう言われると、何だか最近物忘れも激しくなってきたような気が…。

 もしかして、俺の脳細胞に管理局が何かしたのか?

「はぁ…あんた、変身できるでしょうに…」

「あっ!」

 言われるまで忘れてた! そうだ、このメンバーなら全員変身できるから、装備なんて不要だった!

「装備類の開発が出来てないので、一般人にこのアクティビティーを利用してもらうのはまだ早いですが、バギー本体とコースのテストならば、このメンバーなら何の問題も有りませんからね」

 めっちゃドヤ顔だな、ユズカよ。

 確かに言ってることは間違いない。

 ふむ…ならば、俺が言う事は一つだな。

「全員変身! その後、全力でアクティビティーを楽しもう!」

 そう言って俺が右手を天に突き上げると、

『おーーーーー!』

 俺と同様に右手を突き上げ、全員が大声で応えた。



 それでは早速、コースとその他諸々ををご紹介しましょう。

 このテストコースは、まず真っ白な砂浜の一角に造られた木造のバギー置き場から始まる。

 ここはごく簡単な木製の台で、なだらかなスロープが砂浜へと続いている。

 正式にコースを造る時には、世界ラリー選手権(WRC)の初日に観客へラリーカーをお披露目する時のセレモニアル・スタートみたいな派手なスタート台を作っても良いかもしれない。

 既に変身を終えた俺は、バギーをゆっくりとスタートさせてその台から砂浜へとコース イン!

 俺のすぐ後ろはユリアちゃん。

 ナディアとタンデムしているコルネちゃんがその後に続き、メリル、ミルシェ、ミレーラ、マチルダ、イネス、ユズカと続き、最後尾はユズキとなっている。

 勿論だが、ナディア以外の全員が既に変身をしているので、何があっても大丈夫。

 ドワーフ衆の説明では、俺達が乗っているバギーは、悪路走行と安全性を重視した設計となっている分、速度は大幅に犠牲になっているそうだ。

 前世でアクティビティーで乗ったバギーもそんな感じだったな。


 全員が砂浜のコースをバギーで走る。

 コースは赤い紐で区切られており、俺達のバギーもそれに沿って走っているのだが、砂浜を走るコースでは、波打ち際や意外と凸凹している砂浜を上手く使っており、なかなか楽しいものが有る。

 特に波打ち際を水しぶきを上げながら走るのは、全員がキャッキャと喜んでいた。

 やがてコースはヤシの並木の間を抜け、グラベル…つまりはダートとも呼ばれる未舗装路面へと突入。

 いや、砂浜も未舗装路だけど…そう言いたい気分なんです。

 降り重なった木の葉や剥き出しの木の根の、砂浜の凸凹とは全く違う堅い路面の感触がタイヤ(?)から伝わる。

 木々の間から零れ落ちる日の光も、何だか森の中を探検している様な気分にしてくれる。

 TVで観ていた川口〇探検隊も、こんなジャングルの中を進んでいたっけなぁ。

 やがてコースは少し泥濘になり、これまた車輪に巻き上げられた泥が盛大に飛び散って、後続の皆がその泥弾の餌食となる。

 女子供は、こういった汚れる事は嫌なんじゃないかと思い振り返って、俺は振り返ってみたのだが、そんな事は杞憂だった。

 泥を被った全員が、本当に楽しそうに声をあげたり笑ったりしている。

 そういや俺も子供の頃は、こんな泥んこの中に突入して遊んだりしたよなあ。

 泥まみれで帰ったら、母親にこっぴどく怒られたりもしたもんだけど。


 うん、何か楽しくなってきた!



※こっそり新作投稿しています。

 姫様はおかたいのがお好き

 https://kakuyomu.jp/works/16817139558018401730

 不定期更新ですが、( `・∀・´)ノヨロシクオネガイシマス!

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