第793話 ある日それは起こった
ミリタリー感満載の、ユリアちゃん、コルネちゃん、母さんに嫁ーずの新型蒸気自動車が納車されてから約10日ほど経った。
ちなみに俺が使っていた試乗車は、何の改良もされてない…。
ユリアちゃんとコルネちゃんは、毎日の様に…いや、本当に毎日朝から晩まで嬉しそうに車で遊んでいる。
別に走り屋になったわけでは無くて、ただあちこちをドライブして楽しんでいるだけらしい。
らしいというのは、俺がどこで何をしているのか直接見たわけでは無く、必ず2人のドライブにナディア達妖精族が1~2人付いていって、その話を念話だったり、直接聞いたりしたから知っているだけだ。
そんなユリアちゃん、コルネちゃんも、きっちりと昼食時には屋敷に戻って来て、しっかりと食べてからまたドライブに行っていた。
しかし、ある日それは起こった。
それは、とある日の朝。
朝食を摂ったユリアちゃんとコルネちゃんは、何故かドワーフメイド衆から、お弁当の入った唐草模様の風呂敷包みを受け取ると、ナディアとユズカを連れて、
「今日はお昼には戻りませんが、心配なさらないでください」
「ちょっとおでかけしてきまーす!」
コルネちゃんとユリアちゃんは、俺達に向かって元気よくそう宣言。
「2人共、どこに行くのかな?」
俺がそう尋ねても、
「内緒です」「ないしょー!」
そう言って、教えてくれない。
ん~? ナディア、どこ行くんだ?
俺が念話でナディアに訊いても、ナディアも知らない様で、意気揚々と2台の車は屋敷を後にした。
お弁当持った2人は、とても楽しそうに、どうやら秘密の場所に行くそうだ。
俺や嫁ーず、母さん、それにサラにリリアさんとユズキの、誰もが首を傾げた。
「一体、どこに…?」
俺の呟きに、
「僕も柚夏から何も聞いてませんが…まさか、浮気!?」
ユズキが何か言ってるが、それだけは無いからな、絶対に。
「トール様、ちょっと後をつけてみません?」
ミルシェが楽し気に笑いながらそう言った。
「トールちゃん、あの子達の事だから危ない事はしないと思うけど、ちょっと気になるから、様子を見て来てくれるかしら?」
母さんにまでそう言われたら、行かないわけにはいかないな。
「それじゃ、今日は仕事も珍しく無いし、ちょっと様子を……」
俺が母さんに向かって返事をしようとしていると、何故か集まった全員がワクワクした顔で俺を見ていた。
「も、もしかして…皆行きたいの?」
『はい!』
あ、そ…全員、興味津々なだけでなく暇なのね…。
「んじゃ、全員で尾行する?」
『するするー!』
本当、君達、暇人なのね…。
そういや、いつもさぼってるサラとリリアさんは、どこ行ったんだろ?
ま、どうせどっかで昼寝でもしてんだろ。
さて、尾行とは言っても、コルネちゃんとユリアちゃんには、妖精族であり結界というかシールドを使いこなすナディアがついている。
しかも、俺とは念話で距離なんて関係なく会話が可能だ。
つまりは、2人の行動は俺に全部筒抜けなのだ。
だから尾行なんてしなくてもいいんだけど、どうしてもこの目で確認しないと、俺…じゃない、全員が納得しない。
だけど、幾ら小さい街だとは言っても、2人を探すのはちょっと大変だから、ナディアに現在地を確認。
おーい、ナディアー! 今、どこー?
『あ、マスター。え~、今は魔族さんの牧場の横を、色とりどりの羊さんを見ながらドライブ中です』
ああ、あの放牧地ね…って事は、どこに向かってるんだ?
『多分ですが…保護地区ではないかと』
ナディアもはっきりとは知らないのか。
でも、確かにその方角だと、保護地区の方角だな。
『ええ、一応ですがユリアーネ様にも確認してみたのですが、行先は秘密だと…』
ふむ…取りあえず、俺達もそっちに向かってみるとするか。
ナディア、行先がはっきりしたら、教えてくれるか?
『了解しました、マスター』
って事で…
「では、皆でコルネちゃん達を追いかよう。どうやら彼女達は、保護地区方向に向かってドライブ中の様だ。俺とユズキはうさぎちゃん号、皆は新車に乗って付いて来るように」
そう指示を出した俺は、ユズキと嫁ーず専用車であるうさぎちゃん号に乗り込んだ。
嫁ーず一同は、納車された例の真っ黒豪華仕様のミニバンだ。
「それじゃ、出発!」
2台に分乗した俺達暇人…もとい、妹(嫁)心配組は、一路保護地区の出入り口を目指して、車を出発させたのだった。
※こっそり新作投稿しています。
姫様はおかたいのがお好き
https://kakuyomu.jp/works/16817139558018401730
不定期更新ですが、( `・∀・´)ノヨロシクオネガイシマス!
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