第786話 工房到着
「おにいちゃん、きいてる!? ユリアも、おくるまほしいの!」
…どうしよ、コレ。
「えっと、取りあえず工房に行くから、お車に乗ろうか」
「は~~~~い!」
ここで話してても仕方がないので、ユリアちゃんとコルネちゃんに車に乗る様に促すと、元気よくユリアちゃんは両手を上げて万歳しながら返事をしてくれた。
コルネちゃんは、さっきのユリアちゃんの言葉に思う所があるのか、ちょっと難しい顔をしているいが、素直に頷き車へ。
2人を乗せた俺は、蒸気自動車を始動させて、しゅぽしゅぽのんびりとドワーフ親方のいる工房へと向かい車を走らせた。
ネス湖の湖畔を走り、温泉街を横目に魔族さん達の住む土地を駆け抜け、やって来たのはアルテアン領トールヴァルド地区にあるエルフ&ドワーフ保護地区。
ここは結界で守られていて、出入口は限られている。
しかも、俺が開発に参加した陸上自衛隊ばりの数種類の緑色や茶色、黒色などをドットで配した新型の迷彩服を着こみ、竜の鱗を加工して表面に貼りつけたヘルメットを被り、大きな剣や槍で武装した屈強な筋肉エルフが数人で護っている。
これだけをみたら、どっかの自衛隊の基地の出入り口みたいだな。
まあ、手に持ってるのが小銃じゃなく、剣とか槍な所が違和感バリバリだけど。
そんな出入り口で、エルフさんの検問を受け、俺達の車は結界の中…つまりは、保護地区の中へと車を進めた。
エルフの筋肉戦士もユリアちゃんとコルネちゃんの、可憐で佳麗でとてもスイートな笑顔の挨拶にはノックダウンされたのか、表情がだらしなく崩れていたのは見なかった事にしてあげよう…武士の情けだ。
さて、結界の門を通り過ぎて、ほんの少しだけ中に入った所に、蒸気自動車工房がある。
蒸気自動車工房とはいうが、正確には蒸気自動車の基幹部品や技術に関する研究所と言うべきか。
実際に蒸気自動車の各パーツを製造して組み上げてているのは、父さんの領地の方に建設した工場になる。
だからこの工房は、そんなに大きな建物じゃない。
日本の農家さんの倉庫と、そう変わりはない。
その工房の入り口近くに車を乗り付けて、俺とコルネちゃんとユリアちゃんは、車を降りた。
ここは深い深い森に囲まれた場所で、ドワーフさんの小さな家もチラホラと周囲には建っている。
興味深そうにそれらをキョロキョロにているユリアちゃん。
そんなユリアちゃんが、急に走り出したりしない様に、しっかりと手を繋いでいるコルネちゃんも、辺りを観察していた。
「2人共、工房にはいるから、こっちおいで」
そう俺が声を掛けると同時に、とても強面で髭面の工房の主、ドワーフ親方が建物から出て来た。
「誰かど思ったきや、領主さんだばねだてか。来てたんだてね」
「お久しぶりですね、親方。こんにちは」
うん、相変わらず素のドワーフさんの言葉は田舎のおばあちゃんっぽい。
「今日は妹2人も一緒に…ほら、コルネちゃん、ユリアちゃん。こちらが蒸気自動車の研究工房の親方。挨拶してね」
元気よく親方の元に駆け寄ったユリアちゃんと、それに引きずられる様にやってきたコルネちゃんは、
「こんにちわー! おにいちゃんのいもうとのユリアです!」
「こ、こら、走らないの! あ、失礼しました。トールヴァルドお兄さまの妹のコルネリアです。こちらは末の妹のユリアーネです。どうぞよろしくお願いします」
ユリアちゃんは元気いっぱい、コルネちゃんは丁寧に挨拶をした。
「んだがそうが。2人共領主さんのめんじさんか。めごいねぇ。しうこそ工房へ」
ドワーフ親方も、2人にの可愛さに、更に田舎のお婆ちゃんっぽくなった…いや男なんだからお爺ちゃん?
ちょっと方言(?)が強すぎたのか、ユリアちゃんはちょっと首を傾げていたが、コルネちゃんはニッコリ笑顔で会釈した。
本当、この世界の自動言語翻訳システムって意味わかんないよなあ。
日本語とかこの大陸の他の地域の言葉で話しても普通に会話が成立するのに、何故かエルフさんはカタコトだし、ドワーフさんは方言バリバリ、人魚さんは昭和の死語だったし、魔族さんは怪しい外国人っぽい言葉。
何でちゃんと翻訳されないんだろう?
だけど、どうせまた管理局の仕様なんだろうから…深く考えるのはよそう。
※こっそり新作投稿しています。
姫様はおかたいのがお好き
https://kakuyomu.jp/works/16817139558018401730
不定期更新ですが、( `・∀・´)ノヨロシクオネガイシマス!
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