第779話 んじゃ!!
ふぅ…父さんの屋敷から俺の屋敷へと向かう短い空の旅の中、俺は何とか癒しという名の地獄の夜を回避する事が出来た…と思う。
結局、母さんを含めた女だらけの会議の内容までは教えてはもらえなかったが、教えてもらえたら、それはそれで何か怖い事になりそうな気がしたので、追及するのは止めた。
夜の帳が下りる前に、ホワイト・オルター号は、山の向こうへと沈む太陽が朱に染め上げた空を映す聖なる湖、ネス湖の畔にある俺の屋敷の裏手へと静かに着地した。
四季という季節の移ろいがほとんど無い世界ではあるが、昼の太陽の傾きや天気、夜の満天に輝く星空などが、このネス湖の湖面を様々に飾る。
そして、どこまでも澄んだネス湖では、その美しく彩られ飾られた景色の向こう側、湖の底で静かに佇む、白く美しい聖なるネス像を見る事が出来る。
最大水深は50m程だが、聖なるネスの頭頂部までは20m程あるので、ネスの全体像を見る事はもちろん敵わないが、美しい顔ははっきりと見る事が出来る。
時折浮上させ、人々に受け取り方次第でどうとでも解釈できる神託を授けているので、ネスを正面に見る事が出来る湖畔の施設は…まあ、鳥居があるんで神社風の建造物なのだが…大変人気の観光スポット。
もちろん、この神社風の建物は、広島の海に立つ巨大な鳥居を持つ神社をパクったものだが、舞台では俺の屋敷に滞在している時であれば、ナディア、アーデ、アーム、アーフェンが、それ以外の時は妖精達がランダムで踊りを披露するというイベントも不定期で開催されている。
幻想的な妖精族の踊りも大人気となっており、多くの人を虜にしている。
多くの人が、女神ネスを詣でに押しかける俺の領地にある総合温泉スパリゾートと進化した街では、ゆったりと湯につかるも良し、マッサージやエステで身体を磨くも良し、家族と共にリゾートで遊ぶのも良し、大人なむふふな店やカジノで遊ぶのも良し、土産物屋通りで多種多様な買い物するも良し、と訪れた老若男女問わず満足できるだろう。
また、この温泉スパりぞーとは、多くの雇用を生み出した。
エルフ族、ドワーフ族、人魚族、そして魔族という、王国ではかつて絶滅したと思われていた幻の異種族が溢れ働く街だ。
種族と交流できる…だけでなく人魚さんとはみっちり触れあえるが…この街は、更に他の異種族も呼び込み、最近ではネコ耳とかイヌ耳とかが頭に付いている獣人族も増えて来た。
元々、領地だけは馬鹿みたいに広かったが、住人は領主の俺を除けばメイドのミルシェとサラしか居なかった未開の大森林という弱小領地だったのだが、今ではそれも見違える様だ。
この街を、ネス湖を造って、本当に良かった。
過去の俺を褒めてやりたい。
さすが俺!
「えっと、何してんですか?」
俺がネス湖を見つめながら、色々と回想をしていると、背後からペタンコJC風メイドのサラが声を掛けて来た。
「誰がペタンコかー!」
何故か俺の心の声が聞こえる様だが、だからと言って有能では無い。
むしろ、馬鹿だ。
「あんた、私に喧嘩売ってんですか!?」
こんなドジだのロリだの無乳だのドMだのと属性てんこ盛りのサラとも、随分永い付き合いになるなあ。
「色々と文句も言いたいとこですが、まあ確かに永いですねえ」
そう、永い間こいつも俺の傍に居たわけなのだが、昔からずっとこの絶壁のままで1ミリとて成長してない。
「おう、ちょっとツラかせや!」
煩いなあ…俺はもちょっと1人で居たいんだよ。
「そうですか、そうですか。よっく分りましたよ。んじゃ奥様連合にその様に伝えときますね~! んじゃ!!」
な、お、おま、ちょっと待て!
俺が振り返った時には、漫画の様にどぴゅーんと砂埃を巻き上げ、「きーーーん!」とか言いながら走り去っていった。
ってか、お前はア〇レちゃんかよ!
いや待て! 嫁ーずに告げ口なんてされたら、色々と俺の危機だ!
くそ、ダッシュで戻らねば!
『なんですってー! トールさまが、やっぱり癒しを求めてるですってー!?』
あ、あの馬鹿、もう告げ口しやがった!
いかん、いかんぞ! また今から永い旅路がまた始まっちまうじゃねーか!
『では夕飯前に早速!!』
声が駄々漏れだ、嫁ーず。
ってか、何で声が揃ってんだよ!
俺は裏口の扉を開け…え、開かねぇ!!??
まさかサラが鍵かけたのか!
畜生、なら窓から…って、全部鍵掛かってんじゃねーか!
うわーーーん! 正面玄関まで行かにゃならんのか。
俺はダッシュで正面玄関へと回り、扉を軽く引いてみたが…あ、ここは鍵掛かってねえや。
と、その時、何かがピンッときた!
ま、まさか、もしかして…これは俺の超絶スキル、スーパーウルトラ虫の知らせ第六感が覚醒したというのか!?
いや、そんなスキル無いけど。
ただの経験則というか、普通に第六感です、はい。
いやな予感がしつつも、俺がそっと玄関扉を開くと、中にはずらりと並んで獲物をを捕獲…もとい、俺を待ち構えていた嫁ーずが。
もしかして、俺が屋敷に入る場所を限定するために、あちこち施錠しまくったというのか!?
くっそ! 胸はナイナイなくせに、悪知恵だけはアルアルなのかよ、サラ!
やばいやばい! 世紀末が来るぜ!
『誰がシブがき隊のナイ〇イで上手い事言えっていったーーー!?』
サラが頭の中で怒鳴っていたが、そんな物に返事している余裕は俺には無かった。
『ツベコベ言うなよ! 明日なんて無いさ!』
屋敷へ入った瞬間に、俺は嫁ーず5人にがっしりと捕獲され、半ば引きずられつつベッドルームへと連行された。
クソ! サラも返しが上手くなったじゃねーか。
あ、あの、奥様方? 俺も疲れてるんで、出来ればお手柔らかに…。
ここでの返しは、泣きたいのは俺の方さ…ってか?
いや、割とマジで…泣きたいかも…。
※こっそり新作投稿しています。
姫様はおかたいのがお好き
https://kakuyomu.jp/works/16817139558018401730
不定期更新ですが、( `・∀・´)ノヨロシクオネガイシマス!
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