第652話 アンニュイ?
我がアルテアン領への出発の刻限には、かの戦で裏方として活躍した運転手達も王城横のあの練兵場に集合。
お使徒の近衛騎士さん達も見送りに来てくれ、何故かタラップを上がると、万歳三唱が始まった…意味がわからん。
まあ、それでも気分は良いので、お見送りの父さん母さんと、コルネちゃん、ユリアちゃん、そして妖精族(4人共王都に残す事にした)が手を振る中、ゆっくりとホワイト・オルター号は練兵場を飛び立った。
ここからの旅は、ガレオン船に似た飛行船のキャビンに乗った本当に本当の身内だけとなった。
父さんや母さんにコルネちゃんやユリアちゃんは、もちろん身内なんだけど、やっぱ気の置けないトールヴァルド領の仲間といったら、この船に残っている仲間だろう。
航路なんて物のないこの世界で、空の旅を邪魔するのは精々が空を飛ぶ大型の魔物だろうが、そんな物に出くわすはずも無く、のんびりした旅路となった。
眼下に広がるのは、あまり人の手が入っていない自然が多く残る世界。
所々に人々が生活を営む村や街、それらを繋ぐ道が見えるが、多くは緑に覆われた森林や大地だ。
輪廻転生管理局の局長さん曰く、近いうちに人の生存圏が足りなくなるらしいのだが、これらを切り拓けばもっともっと多くの人々が生活出来る土地が広がると思うんだけど、それが出来ない理由でもあるのかなあ?
もしかしたら、俺が保護地区としている、エルフやドワーフの住む森のような場所が、誰も知らない人達がひっそりと暮らす集落や村がこの緑の大地の中にあるのかもしれない。
局長の言葉の全てを信じたわけじゃない。
でも、本当にこの大陸で、誰も知らない種族が誰も知らないところで暮らしているとかだったら、ロマンあるよなあ。
いつかそんな人達と会って話してみたい。
『妙に浸ってるところを何ですが…すでに接触してますよ?』
んぁ、サラか? 接触…誰と?
『表の歴史の舞台に出てこない人々と』
エルフとかドワーフとか?
『それは歴史から消えてしまった種族ですけど、確かに接触しましたよね』
え~っと…魔族さんとか人魚さんの事?
『ええ、それも間違いではありません』
え、他に居たっけ?
『居たじゃないですか! 例の不思議電波少女、ポリンちゃん率いる地底人が』
確かに俺が地底人とか勝手に命名してはいるけど、あれって人だぞ?
『歴史上、あんな地下に居住空間を持って生活をしている種族なんて存在しませんよ? 遠い昔に地下に住むしか無くなったのかもしれませんが、表の歴史から姿を消したのは、ドワーフとかエルフとかと一緒です』
なるほどなあ…言われてみれば、確かにそうか。
『それで、結局ポリンちゃんはどうするんです?』
べダムさんに丸投げしたけど、これから建国する国のどっかに月神の教会か神殿でも造ってもらって、初代教祖とかにしちゃおうって事でまとまったぞ。
『きょ…教祖!? あのポリンちゃんにですか?』
そうだけど、周囲をまともな人で固めれば大丈夫じゃね?
『ポリンがサリンを造らなきゃいいですけど…』
造らねーよ! ってか、造れねーよ! 何だよ、語感が似てるじゃねーか!
『きっと、月神様以外は神に非ず! 全てのすべての魂をポリン…もとい、ポアするぞ! とか言い出しますよ?』
言う分きゃねーだろーが!
『いつか、自分は時間と空間を超えることができる! と言い出すかもしれませんね』
無いわ! 絶対に無いわ!
『お約束のネタもやった事ですし、そろそろお昼寝でもしましょうかね』
ネタかよ! お約束なのかよ! ってか昼寝だと? 仕事しろよ!
『嫌ですよ~! 大河さんだって、眼下を眺めながらアンニュイ決め込んでたくせに、何を私だけ働かそうとしてるんですか』
俺は、一応お前のご主人だよな? 俺がのんびりしてても、お前は働くのって、普通の事だよな?
『そうですか? なら、ご主人様、本日の営業時間は終了いたしました』
おまっ、営業時間ってなんだよ!
『ほ~た~るの~ひ~か~り~♪』
ほう、そうか…よっく分かった。
あ~あ~んん…おーい、リリアさ~ん!
『呼ばれた気がしましたが…はて、何でしょうか?』
ええ、リリアさんを呼んだんですよ。
実はですね、サラが今からしっぽりしっとり寝たいなどと言い出しまして。
『ちょっ、大河さん!?』『ほほ~サラがねぇ』
ええ、そこでリリアさんには、是非ともサラの相手をしてあげたら、喜ぶのではないかと愚考いたしました次第でございます。
『承りました。では、ここからはメイドのお仕事は少しばかり手を休める事となりますが、代わりに手を動かしましょう…ぐふふ』
『ちょっ、リリア!?』
狭い船内だからね…すぐに捕獲できると思うけど…確か、今は食堂でお茶菓子貪ってると思う。
『貴重な情報、感謝いたします! では、早速…』
『汚ねーぞ! 情報を売りやがったな! ってか、ほとんど嘘じゃねーか!』
ふっ…色々と汚れてしまえ。
『サラ、見つけましたよ!』『んぎゃーーーーー! もう来たーーーーー!』
あ、もう見つかったか、サラ。
まあ、頑張れよ。
『おーぼーえーとーけー!』『待ちなさい! 今から私の超絶テクニックをその身に刻んであげましょう!』
あ、そろそろ五月蠅いから、思考を切り替えて遮断しよ。
さて、頭の中の五月蠅いのも居なくなった事だし、もうちょっと風景を愉しもうかねぇ。
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断罪の刃 闇を照らす陽の如く
https://kakuyomu.jp/works/16816927861644288297
ちょっとダークなお話し…かな?
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