第493話  リリアさん打ち明け話 1

 景色は変わったが、俺とリリアさんの相対位置も姿勢も変わってない事から、どうやらここが危険場所では無いだろうなと、何故か冷静に考える俺が居た。

 辺りは薄暗く、遠くに無数の光る星がある。

 呼吸が出来ているんだから、ここが宇宙ってわけじゃ無いのかもしれないが、もしも宇宙に出たらこんな感じなのかなと。

 もしも平時の俺だったら、『人類が増え過ぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に〇世紀が過ぎていた』などと、某アニメのナレーションを思い浮かべていた事だろう。

 いやいや、今それに思い至っただけでも、十分に平静なのかもしれないな、俺。


『何を考えてるのですか? 貴方様は馬鹿ですか?』

 ふいにリリアさんが俺の思考に割り込んできたが、馬鹿とは何だ馬鹿とは!

『いや、あまりにも馬鹿な事をうだうだ考えているので、つい…悪気はありますけど』

 あるんかい! って、ツッコめる余裕があるって事は、やっぱ通常営業だな、俺。

 んで、何で俺をここに連れて来たんだ?

『サラは構いませんが、あそこでは他に聞かれたくない方も居ましたので』

 なるほど。つまりサラは今から話す事をしっているという事だな。

『ええ、大凡その認識で間違っておりません』

 ん? 大凡? って事は、サラも知らない事があるって事なのか?

『勿論です。今から話す事は、管理局内でもごく一部の者にしか知らされていない事ですから』

 ふむふむ…で、俺にそれを言ってもいいわけ?

『ええ。いつかは貴方様も気付くだろうと、局長はお考えでした。そしてその時は、話しても良いと許可も頂いております。ちなみにここは、精神と時間を止める部屋で、私の許可泣くここには誰も入れませんので、ご安心を』

 なるほど、すでに想定済み…って、ここって精神〇時の部屋なの!?

 まさか、重力や気温や空気が…って、普通だな??

『はい。では順を追って説明いたしましょう。心と体の準備は宜しいですか?』

 心は分かるけど…体も? やっぱ精神と時〇部屋なのか?

『貴方様はアホですか? そんな話をするのに、そんな面倒な部屋に私が来るわけ無いじゃないですか』

 はい、ごもっともで…んで、説明って?

『それは話せばご理解頂けるかと思います。まずは心の方からですね』

 よっしゃ、ばっちこーい!

『その気勢は、私のヤル気が削がれる様な気もしないでは無いですが…』

 いいじゃん、はよはよ。

『まず、貴方様が地球の日本で死亡したのは間違いありません。そしてその魂が輪廻転生管理局のシステムにより【Reincarnation control system】つまり、輪廻の輪システムに取り込まれたのも、また間違いのない事です』

 なんか、格好いいネーミング来たな…それはそれとして、まあそこまでは理解してる。

『本来であれば、システムに取り込まれた段階で記憶や経験等の前世に関する物はデリートされます』

 あれ、転生の時じゃなかったっけ? システムに取り込まれた時には、すでに削除?

『はい。本来は取り込まれた瞬間です。転生時うんたらかんたらの説明は、貴方様用です』

 んん?

『つまり微妙に嘘の情報を流していたのです』

 何でまたそんな事を。

『それは貴方様の前世での記憶などをシステムでデリート出来なかったからです。というか、貴方様が全て思いだしてしまったからですね。そして局長がシステムからはじかれた貴方様をピックアップしに行ったのです。ここの記憶が残っているからこそ、先程の説明になったのです。貴方様は見たはずです。次の転生先への長い長い魂の列を』

 おお、それなら確かに見たな。ぼんやりと光る丸い球が、遥か先までいっぱい列を作って並んでた…あれ?

『気付かれましたね。そうです、あの魂達にはすでに記憶がありません。純粋なエネルギー体なのです。ですから、一言も発していないし、長い列を長い時間、整列して並んだところで、誰も文句など言いません。前世での記憶や経験、そして感情などの一切が削除された状態だからなのです』

 ………つまり、あれって次の身体をこの世に出すために必要なエネルギーって事か。

 いや、それは聞いてたな、うん。確か魂のエネルギーが目減りしているとか…あれ? それはこの星か。

 むしろ地球は大量に魂が…んんんんん? よく考えたらおかしいぞ?

「輪廻転生システムは、平等にエネルギーを振り分けてるわけじゃ無いって事?」

 思わず口に出してしまった。

『そうです。言ってみれば需要と供給のバランスでもあるのですが、その星々の文化レベルに依存している部分もあります。なので、地球…特に日本のごく一部の地域のエネルギー要求量が大きいために起きているアンバランスです』

 なるほど。いまいち理解できんが、まあ今は良いや。

『貴方様の魂は元より巨大なエネルギーを持っていました。貴方様が記憶を削除された本来の魂であれば、無数に分割する事も可能でしたが、記憶を残したままだとそれが出来ません』

 あ、そうなんだ…しか言えねーよな。もっとも、切り刻まれたくはないけど。 

『ただ、貴方様の持つエネルギー量が巨大すぎたのです。なぜ貴方様のエネルギー量が大きいかの説明は受けましたよね』

 確か、原初から寝てたとか何とか…

『正解です。あなたをピックアップした局長も、非常に驚いておりました。しかし今更分割できないので、そのまま使う事にしました。先ほど貴方様の魂のエネルギーが、この世界の人々換算で数千兆分相当だと説明しましたが、そのエネルギー量は実は当時から保有していました』

 え?

『それを敢て抑えていたのです。そして身体の成長に合わせて、少しづつ使えるエネルギー量を増やしていったのです』

 マジっすか! なるほど…

『ここまでが心に関する部分です。そして貴方様が最も懸念しているであろう、体の事ですが…』

 

 えっと、もの凄く面倒くさくなってきたけど…俺、実はそんな事まで考えて無かったんだよね。マインドコントロールとか洗脳とかされてたんじゃ無いかとか、思考誘導されたたんじゃ無いかとか、そっち方面の話であって、もしそうなら止める様に言ってもらうつもりだったんだけど…大事になってきた気がするぞ、コレ。

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