第491話 実話なの!?
危険な奴ら…もとい転移者達は、はっきり言って結構な人数である。
つまり個々に指示を出すなんて面倒くさい…もとい不合理である。
線引きとしては人種で無能力かつ15歳以下が優先保護指定。
それ以外の、人種で無能力者が優先保護指定第二位。
この世界に居て繁殖できる可能性が非常に高い人種以外の無能力者が、優先保護指定第三位。
それ以外は、基本的にこの世界から物理的にご退場願う方向に決めて、モフリーナに伝えた。
今この時間にも危険な奴らはダンジョン大陸を闊歩しているだろう。
保護していない人々が、彼等によって倒されたとしても、俺は一切関知しない。
モフリーナや配下の魔物達が保護するタイミングで生き残っていた者だけを保護していく。
冷たい様だが、そこまで手が回らないし、気にしても居られないからだ。
そもそもの話なんだが、転移者のほとんどは無害な一般人であり、人種であり日本人である…らしい。
次元とか時間の軸とか進化元とかが違うらしいが、とにかく日本人だ。
他の次元とか過去未来から来た、見た目が普通の日本人なら問題は個人に因るものだから、まだいい。
だが、進化元が霊長類以外だとかなり変な種族となってしまうし、問題も多い。
無害な転移者ではあるのだが、あまりにもこの世界の人々とかけ離れてしまった姿をした人達は、どう頑張ってもこの世界に馴染めるとは思えない。
種族が違うってだけでご退場願うのは、何かやっぱり間違っている気がするのだが、少なくとも同じ種族の男女が居なければ、この世界で増えるというか繁殖というか、とにかく子孫を作る事は限りなく難しい。
たった一人で異世界に放り出される恐怖は、想像するだけでもかなり怖い。
彼等を何とかしてあげたい気持ちは重々あるのだが、俺の力だけではどうにも出来ない問題だ。
俺はこの世界では少し力を持ってはいるが、基本的にただの人だからな。
なので、ここは困った時のサラえもんにお願いしてみよう。
「なあ、サラ…あの進化元の違う日本人って、どうにもならんの?」
「誰がサラえもんか!」
そこは良いから。
「どうにか出来ないかと言われたら、出来ない事も無いですが…エネルギー変換玉でもかなりの難問ですよ」
ガチャ玉かぁ。俺もちょっと考えたんだけど、イメージが全くわかないんだよな。
大きさだけなら、超時空なマク〇スで、デカ〇チャーとか言ってたでっかい人を小さくしたり、その逆もあったりしたけど、種族そのものを変えるのは無理っぽいよなあ。
「そもそも遺伝子が大きく違います。言葉は通じる様になっていますけれど…人とミミズぐらい離れてると思いますよ?」
そんなにか!
「同じ種族同士で男女とかペアになりそうなのって居ないの?」
「出来るだけ似通った種族を、モフリーナともふりんに同じダンジョン塔へと誘導はしてもらってますが、ペアは出来ないですね」
むう…俺如きの考えはすでにお見通しか。
「そもそもさっき言った様に、種族ごとに遺伝子レベルで大きく差があるのです。単為生殖が出来るエイ〇アンみたいな奴とか、異種族でも繁殖できるラノベお馴染のゴブリンやオークに近い種族も居る様ですから、どうにか出来るかもしれませんが…」
そうだよなあ…ってか、くっ殺さん出る前に、そんな危険な奴は隔離しとけよ?
「もう諦めて消えてもらうしかありませんね。あ、そう言えば!」
「どうしたどうした?」
「ウル〇ラマン・シリーズの敵星人に似た奴らは、何故か手を取り合って団結してます。復習だ! とか気勢をあげてましたが、何を復習するんでしょうねえ。テストでも近いんでしょうか?」
「そら、ウルト〇マンに復讐って意味だろ! 勉強し直してどうすんだよ!」
ふくしゅう違いだ!
「なる程…では、あちらの日本人は隔離しましょう」
サラが指さした先のモニターに映っているのは、ごく普通の日本人の青年に見えるが…まさか!?
「元々、ウ〇トラマンの話は実話を元にしてますから。管理局員が重力の墓場へ送る予定だった死刑囚を逃がしてしまった事が原因の」
何か聞いた事がある設定だな…でも、あんな実話あるのか?
「逃げる死刑囚を追いかけた管理局員でしたが、地球まで追いかけてきた時に飛行機と誤ってぶつかってしまい、搭乗者を死なせてしまったので、已む無く管理局員が自らのエネルギーをその搭乗者に憑依させて…」
「まてまてまてまて! それは完全にハヤ〇隊員じゃねーか!」
「そして憑依された搭乗者は、管理局員の肉体を再調整して出来た超小型プラズマスパーク核融合装置とベーターコントローラーを用いる事によって、変身できる様になったのです」
「や・め・ろ! 完全に…いや、微妙に違うがウ〇トラマンじゃねーか! どこが実話だ!」
嘘も大概にしとけよな。
「いえ、円〇プロダクションは、管理局員が設立しましたし、その時の話を元に物語を完成させましたので」
まさかの〇谷プロダクション創設者=管理局員だった!?
あの国民的番組が、まさかまさか!
「平成版では、新たな局員が多数派遣されて頑張りましたが、玩具メーカーの圧がすごくて…皆、ノイローゼ気味です」
「いやな話だな、オイ! って、あのモニターに映ってる日本人の青年て、まさかウル〇ラマンなのか!?」
それは色んな意味で危険だぞ!?
「いえ、強力な敵との壮絶な戦闘で倒れた彼に憑依していた管理局員は、ゾフ〇ーが管理局へと一旦回収しましたので、もうあそこの青年はただの人だと思いますよ」
もう、完全にウルト〇マンだな…そっか、局員は回収されたのか…だが、
「ふぉっふぉっふぉとかに見つかったら危険だから、絶対に会わない様にしてあげて」
「了解です!」
こんなとこでバトルは止めて欲しいから。そもそも何の力も無いそうだし。
「んで、あのふぉっふぉっふぉを含めて、危険指定された人々はサクッと倒しちゃっても…もう、俺の心は何も痛まない…」
色々と俺の心は壊れかけてるのかもしれない…
「ユリアちゃん連れて、もうお家にかえる…疲れた…」
もう、保護とか種族毎の繁栄とか考えるのは止めよう。
俺にとって不要な奴らは、さっさと消えてもらった方が、俺の精神衛生上良いかもしれない。
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