第464話  よっくわかるよ

「ま、まあ冗談はさておき、ちょっと聞きたい事があるんだけど」

 真面目な顔になった俺を見て、即座に全員が居住まいを正す。

「サラ。俺と同じ世界から来たっていう、三木 あいちゃん(4才)の死因って何だ?」

 そう、俺と同じ世界から来たんだったら、あっちの世界では死んでいるんだと思うんだ。

 局長は単に転移してくると言ってたけど、生きてる人間を拉致するのって難しいだろうから、きっと死んだんだ…と、思うんだけど…違うかな?

「ああ、なるほど! えっと、あいちゃんは…幼稚園の送迎バスの中で取り残されて熱中症で…確かに死んでますね」

 危険信号察知! これ以上は、ご時世的に危ない!

「すとっぷすとっぷすとーーーーっぷ! 分った、もう分ったから! んじゃ、例の秋葉原に出没しそうな奴とかは?」

「あれは簡単です。キモイと袋叩きに合ってました。夜の新宿歌舞伎町で」

 …世知辛い。でも、俺の推測は正解っぽいな。

「そうか…ご愁傷さまとしか言えんな」

 すかさずリリアさんが、

「この世界でもご愁傷様ですよ? 死ぬ方向で放置されてるんですから」

 あ、それもそうか。

「んんっ! それは自然の摂理のなせる業である。つまり、仕方が無いのだ」

 隠れヲタクは良いんだ。でもあそこまであからさまなのは、もう「自己責任でね!」 としか言えないだろ? 前世でもひどい扱いだったみたいだけど…。

 え? お前は何て薄情な奴だって? お前もヲタクの端くれだろうって? 知るか! 俺はあそこまで泥沼に浸かってねーよ!

「そっか…その他の放置物件も同じ処置なんだな? あのバ〇タン星人とかメフィ〇ス星人とか、エイ〇アンとかプレデ〇ーとか」

「ええ。ミク〇マンだとかサイボ〇グ1号だとかゴール〇ライタンも。あ、レインボ〇マンに似たのも居ましたよ?」

 マジかよ! もう何でもアリだな、輪廻転生管理局は!

「まあ、種族は今はおいといて。結局は全員死んでから転移されて来たって事でいいんだな?」

「はい、その推測で間違いありませんえね…1人を除いて」

 サラが真面目っぽい顔して答えたけど、真面目っぽいだけだな…こいつは。

「その1人ってのは、火御華だろ? 何となく分かって来たよ」

「大~正~解~! どんどんどんどん!」

 うん、やっぱ真面目っぽいだけだった。

「そっか。まあ、それはいいや。あと、自立できる可能性がある奴等は当面はほっとけ。襲わせる魔物のレベルはどんどん上げていってな。最悪死んでも構わん」

 モフリーナに向かって、放置組への処置を伝えると、

「はい、承知しました。もふりん、そのように取り計らいなさい」

「あいあいさー!」

 モフリーナの指令に、ビシッ! と敬礼で応じるもふりん。

 やっぱ、背伸びしてる子供みたいで可愛い。いつか撫でてやろう、そのネコ耳を。

 それはそれとして、

「んじゃ、保護対象は全員確保済みと考えていいんだな?」

「はい。トールヴァルド様のご指示通りに隔離しております。現在は、スライムやゴブリン、コボルトに猫又が面倒を見ています」

 ん?

「猫又って、俺の屋敷にいるノワールとか、コルネちゃんのペットのクロちゃんの事?」

「はい、そのコピーになります。きちんと人語を解せる様に改良しております」

 なるほど。それならうちのペットも改良して欲しかったかも…いや、それじゃ嫁達にばれるか。

「なるほど、了解した。保護した者達がくれぐれも故郷を思い出して泣いたりしない様に。万が一泣いた時は、ちゃんとあやす様に頼むぞ」

「仰せのままに…」


 俺の告白から、急に従順(一部厳しい面もある)になったモフリーナ。

 聞けば、ダンジョンを管理している神様だとか、魔族達に神託を与えていた神様、その他この星に関与している神様連中は、将来俺の部下になるそうだ。

 というか、俺が神様に昇格(?)した暁には、晴れて神様の任を解かれるて自由の身になって、実質的に俺がこの星を統括する…拘束されるとか。

 まあいいけど…ってことは、俺の部下1号が決定しているサラも上司になるって事なんだよな、モフリーナよ。それで本当にいいのか、管理局!?

 まあ、モフリーナが従順(ロリコンは禁止された)なのは悪い事では無い。むしろ協力的なのは有り難い事ではある。

 おかげで今までこそこそとやっていた創造を堂々と出来るのだから、俺的には全くもって良い事づくめな気もする。

 モフリーナにとっては、現在の上司の正体が分かってしまったという、気まずくなる様な出来事ではあるかもしれないが、俺の自由度が上がった事と天秤に掛けたら、俺に軍配が上がる様だ。 

 そりゃ、正直な話、モフリーナもサラリー・ウーマンなわけだ。

 将来必ず自分の上司になろうかという奴が目の前にいれば、そりゃ胡麻の1つもすろうってなもんだよな。

 俺にも心当たりがないわけじゃ無いから、そこんとこはよっくわかるよ。


 ってことで俺は気兼ねなく、次の段階へと移行出来るわけです。

「んじゃ、局長に旧火御華のボディーを送っちゃおうかね」

 色々とぶっちゃけちゃったんで、もう何も怖くない! 状態の俺様です。

 植物状態っていうのかな? 俺が習った知識では、遷延性意識障害って言うらしいんだけど、とにかく自発呼吸とかの大脳の機能の一部を残して意識を取り戻さない状態の旧火御華ボディーには、まだ大王の欠片が残ってる。

 精神や記憶のほとんどを改ざんしたりはしたものの、人としての機能のほぼ全てを移植した新火御華ボディーの方が人であり、旧火御華ボディーは、恐怖の大王の巣食う不要物となり下がったわけだ。

 不要な物なら、大宇宙のごみ箱に捨てても問題ないし、俺の心も痛まない…と、強引に自身の理性を抑え込んだ俺は、早速局長へと、旧ボディーを送る事を決断した。

「んじゃ、良心が咎めないわけではないけれど、『全部すいと~る君』と『エネルギー吸収ボール』を創るとしますかね」

 早く処理して、帰って寝たいんだよ、俺は。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る