第459話 希望の光
モフリーナの待つ管理室へと、俺とサラとリリアさんは帰って来た。
もちろん、精神体が現時点では入っていない火御華の新・ボディーを伴って。
俺が抱き上げると言ったのだが、「貴方にだけは任せるわけにはいきません」と、リリアさんが頑として譲らなかった。
俺がお姫様抱っこして、そっと運んであげるつもりだったのに…腕に柔らかい身体があたるのは不可抗力だと言い張ろうと思ったのに、その目論見は儚くも崩れ去ってしまった。
済んだことは仕方ない…今回だけは諦めよう。
いきなり仮死状態の裸の幼女を抱えて転移してきた俺達を見たモフリーナは少しだけ驚いた様だが、まあ俺が関与しているんだから、そんな事もあるだろうと流した様だ。
次は精神体の移植準備というのかな? 移し替える為の準備にかかろう。
「では、設定を始めましょう」
リリアさんが、モニターの中にいる火御華を見ながら、呟いた。
「今回は性格とか記憶とか思考とか、色々と手を加えるんだよな?」
「ええ。大幅に色々と改変しなければなりません。辻褄合わせが非常に難しいですが、そこは管理局の超高速演算装置を使用する事によって、上手くすり合わせをしますのでご安心を。二度とあのモニターの中の火御華には戻れませんが…」
まあ、それは仕方ない。この世界で上手く生きていければいい。
アストラル体の分離が上手くいけば、恐怖の大王の欠片だけとなった本体を、局長に渡してポイッ! して貰えるんだし。
「ところで、貴方からご要望はありますか?」
「要望? 性格とか変える時の事?」
「ええ。悪と戦う正義の使者である…とか、思い込ませることは可能です。まあ、人の持つ倫理感的な制限はありますが」
むむ…なるほど。「人殺ししろ!」は、駄目だけど、「正義のために戦え!」は、許されるのか。
いや、そんな簡単な問題じゃ無いのか? まあ、どうでもいいや。
そもそも俺は、この世界で幸せに暮らして欲しいだけだからな。
「特に俺からの要望は…いや、待てよ?」
そうだ、コルネちゃんは最近拒否されているが、まだ真っ新な心ならもしかしたら…
「お兄ちゃん、一緒にお風呂にはいろう~♪ とかは、に言わせませんからね?」
「え?」
「今夜、お兄ちゃんと一緒に寝てもいい? 何て絶対に言わせません!」
「おま!」
「お兄ちゃんのパンツと一緒に洗濯しないで! とは、言わせますけど」
「なんだと!?」
「ロリコン&シスコン根絶宣言発令中です!」
「いやだいやだいやだーーーーーーーーー!」
何て恐ろしい宣言をする気だ、リリアさんは! それだけは却下しなくては!
「モフリーナさん、奥様方とご両親とコルネリア様に通達を」
「やめてくれーーーー! 俺の人生が終わってしまうーーーーーーーー!」
そんな恐ろしい事が知れ渡ったら…社会的にも物理的にも、俺の人生 The end だ!
「っという事で、何かご要望はありますか?」
「……御座いません…コルネちゃんに準じた性格で結構です…あと、火御華の名前も変更お願いします…」
俺の言質を確認したリリアさんは、とても良い笑顔で、
「はい、了解しました。では、あとの事は全てお任せください」
「…はい」
俺の希望の光は、ここに閉ざされたのであった。
火御華って名前は、流石にこの世界では浮くからな。
この世界風の名前に変更してもらえるなら、もうそれでいい。
もの凄く残念だが…一緒にお風呂に入って洗いっこする夢が…人偏に夢って書いて儚い。そう儚い物だよ夢って…。
「あ! ところで、例の三木 あいちゃん(4才)は?」
「ましたーのしじで、とーるさまのめのとどかないところにほごちてまちゅ」
俺の問いにもふりんが答えた。
「何でだよ! 俺がちゃんと見ておくよ! 保護するよ!」
「ましたーは、ただひとこと。きけんだ…でし!」
モフリーナめ! 何てことをしてくれるんだ!
火御華の性格を弄れない今となっては、俺の心のオアシスは、三木 あいちゃん(4才)だけだというのに!
「どけ、もふりん! 何としても探し出してやる!」
「それだけは、きょひちまちゅ! ろりこんしすべし! って、さらおねえちゃんがいってまちた!」
「サラーーーー!! 何を教えとんのじゃーーーー!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます