第332話 第28回 トール様の婚約者会議 ③
『これが基礎テクニック編…ごくり!』
『そうですよ、マチルダさん。如何にして殿方を悦ばせ寵愛を受けるか…のテクニックが、びっしりと書かかれています』
マチルダが、その内容に衝撃を受けつつも期待に喉を鳴らすと、メリルが追撃を仕掛けた。
『そして応用編では、特殊なプレイを図解しています!』
『と、特殊なぷれい?』
『そう、特殊なプレイです。わかりやすく説明しすると、かなり変態的な行為です!』
『ごくり!』
さらにマチルダの喉が鳴る。
それはうわさに聞く、あんな事やこんな事なのだろうか…などと妄想が膨らむ膨らむ。
妄想とは口にせずば、誰にもその内容などわかるはずもないのだが、マチルダに関しては非常にわかりやすかった。口をもごもごさせながら、足の付け根あたりを押させたり、内股をモジモジしてみたり、胸のあたりを触ってみたり、終いにはおしりにまで手を伸ばしたりと、誰が見ても何か変な事を考えているのは明らかである。
実は、肉食系女子のふりをしたむっつり女子のマチルダであった。
『マチルダさん、この基礎・応用・上級の3冊は、夜の夫婦生活を円滑にしつつ充足させ、なお且つ子宝に恵まれる為の物です。まずは、しっかり隅々まで熟読してください』
『はい! 了解しました!』
マチルダの決意に満ちたか燃える瞳と、力強い返事に満足したのか、メリルは腕を組んで大きく頷いていた。
『そして私達のお愉しみはこれからです。ミルシェさん、あれを』
『ここに!』
ミルシェが恭しく捧げ持つのは、王都にある有名な書籍店の物とわかる紙袋。
『今回の入手は、非常に困難でした…しかし、私達の心の癒しのため、トールさまの目を盗み書籍店を巡りました!』
『ご苦労様です、ミルシェさん。では、この会議の真の目的…鑑賞会を始めましょう!』
『『『『 わーーーーーい! 』』』』
何やら不穏な空気かと思いきや、どうも風向きがおかしい。
具体的には、5人とも紅い顔をしながら、徐々に息遣いが荒く、時折ため息とも喘ぎともつかない声が漏れ聞こえる。
『はぁはぁ…良いですか、みなさん…これは芸術鑑賞なのです…そう、これは芸術です!』
『『『『 はぁはぁ…究極の芸術です! 』』』』
その紙袋の中から取り出された芸術作品に、全員が夢中になっていた。
そう、騎士と貴族の少年の愛の物語…所謂、BL本が、彼女達にとっての最高の芸術であり、この婚約者会議という名目のパジャマパーティーの真の目的なのであった。
実に残念な事に、腐に染まってしまっていた5人であった。
『ってな事がありまして、私も皆さんが堪能した後ですが、貸して頂ける事に成りました!』
なあ、サラ。それって本当の事なのか?
『ええ、勿論です! でなければ、私が至高の芸術本を読めないでは無いですか!』
いや、そうじゃなくて…それって本当の話なのかって事だよ!
『皆様のお茶くみとして、部屋の隅っこでじっと聞き耳を立ててましたので、間違いありません。全て本当にあった怖い話です!』
そ、そうか…本当の事なのか…確かに怖い話だけど…
『みなさん、実に良く腐に染まってらっしゃる。このまま順調に成長すれば、いずれは中年ガチムチ同士の絡み本にまで手を伸ばすかも知れませんね!』
それは、完全にモーホー本だろうが! BLならまだ良い…いや、良くは無いが…まだ美少年とかの絡みなんだろ?
『もちろんです! 今回ミルシェが手に入れたのは、なんと主人公の貴族の子息が、大河さんに似ているのです!』
その情報、誰得なんだよ! いや、そうじゃ無くて、モーホー本は、おっさん同士じゃねーか! キモイだけだろーが!
『ちっちっち! 甘いですね、大河さん。ディープでコアなファンは、行きつくとこまで逝くのです!』
絶対に、ぜ~~~~ったいに阻止するからな! その終着点だけは!
『それならば、そっちに手を出されない様に、大河さんが彼女達を満足させなければなりませんね』
うっ…それは…
『あ、そういえば会議の最後に一つだけ、満場一致で可決された事がありました』
何だよ…BL本の続編を手に入れる事か?
『それは議題にすら上らない、当たり前田のクラッカーな事です。そうでは無く、初夜の順番です』
ふぁ!?
『嫁の序列順に、メリル、ミルシェ、ミレーラ、マチルダ、イネスの順に、5夜連続で行うそうです』
ご、5夜連続! マジか!?
『そりゃ、5人も居るんですから当然では?』
そ、そうだな…そりゃまあ確かにそうだよな…
『あと2ヶ月ありますから、全員が上級編までマスターするでしょうね。実に頼もしい!』
上級…
『しかもそれを3セットと言ってましたから、それはもうガッツリと搾り取ってくれると思いますよ?』
さ…3セットだと!? つまりは…えっと15日間かよ!
『きっと16日目には、全員で搾り取りにくるのでしょうね。ハーレムプレイ♡』
…そうか…5人も嫁が来るんだから、多少のリスクは覚悟していたが…
よし! 俺はやるぞ!
たとえ勝ち目が無くとも全力を尽くすぞ!
死ぬかも知れないが俺はやる!
『虎だ…虎になるんだ! 白い~マットの~…って、何の脈絡も無くいきなり何ですか? 白いベッドの上で虎になるんですか? どっちかというと草食動物の大河さんが、あの肉食獣相手に?』
いや…虎になりたいが…やっぱり喰われるのは俺なんだよな…
『ええ、すでに決定事項です。大河さんが喰われるのは(笑)』
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