第299話  密談

「えっと…母さん、よそ様の家の子の一生を、勝手に決めちゃって大丈夫なの?」

 いくら何でも、我が家とほぼ無関係な少女の一生を、教会に縛り付けるのは、許されるのだろうか…

「ええ、本人の希望ですから」

 母さん、微妙に目が泳いでるんだが? イネスとマチルダの方も見てみると…顔を逸らされた!

 これ、絶対に密室で何かあったに違いない! どんなお話しして来たんだよ、母さん!

「あ~え~…では、本人の口からも、その旨を聞かせて頂きたく…」

「不要よ?」

「いや、でも…」

「不要よ!」

「でも…」

「トールちゃん、不要というのは、必要ないという事よ?」

「うん、それは分かるけど…」

「分かったのなら、この話はお終いね」

 母さん、絶対に退かないつもりだな…まあ、教会造るんだから、誰か管理者は必要だろうし、その候補者としてあのポリンさんを指名させるとするか、キツネ耳の月神様に。

 一生とかは可哀想だから、後々何か考えるとすっかね。

 今のオコな母さんに逆らうなんて、俺にはとても出来ないから(涙)。


「分った…ところで、そのポリンさんは?」

「今は母さんの部屋で、こうそ…んっ! とじこ…んんっ! かんき…んんんっ! 休んでもらってます」

 いや、全然全くこれっぽっちも誤魔化せて無いからね!

 拘束して閉じ込めて監禁してんのかよ! 犯罪だぞ、母さん!

 俺の訝し気な視線を感じた母さんが、

「密航してきたのですから、きちんと立場のある方に身元引受人になってもらうまでは、部屋から出ない様に言い含めてます」

 いや、それ完全に後付けの良い訳だから! 絶対にさっきの歳の話のせいだろ! 逆鱗に触れたからだろ、母さんの!

「何か言いたい事でもあるのかしら、トールちゃん」

 助けを求めて周囲を見回すが…全員がサッと俺から目を逸らしやがった! 

 そんなに母さんが怖いのかよ! いや、怖いですよね…うん。

「いえ、何も御座いません、お母さま!」

「それでいいのよ。では、月神様への連絡お願いね」

「いえす まい まむ!」

 この世には、絶対に怒らせたり逆らってはいけない人がいるのだ…我が家のママンの様にね…


 月神様へのコールは、サラとナディアと天鬼族3人娘だけを伴って行う事にしてある。

 使徒として、眷属として、無理なお願いをするのだから、どんなお叱りを受けるか分からないし、もしも神罰などあった時に…うんたらかんたら…とにかく、てけとーな理由を並べ立てて、俺達だけにして貰いました。

 いや、単に完全な内輪で相談するだけなんだが、家族がいたら邪魔じゃん?

 扉の向こうで聞き耳を立てているかもしれないから、密室とはいえ念話を使いましょう。

 もちろん結界は展開済みだが、最近の我が家の面子は、何でもアリになって来てるからなぁ…念のため。


『それで、あの娘はどうするんですか? すでに嫁枠も妹枠も側室枠も愛人枠も完全に埋まってますよ?』

 いや、サラよ…嫁枠は良いとして、その後のは何だよ?

『え、大河さん気付いてないんですか?』

 いや、薄々は気付いていたが…お前がアホな事は…

『そーれーはー、違いまっする! ナディアが側室枠で、アーデ、アーム、アーフェンが妹枠で、サラちゃんが秘めた愛人枠で決まりでしょうよ!』

 いや、考えた事も無いな…特に最後のだけは、この宇宙が崩壊しても無いかな。

『がーーーーん!』

『という事は、私の側室枠は可能性が残ってるという事ですね、マスター?』

 何故にそうなる…ナディアよ。

『『『私達は、愛妹でよろしくお願いします。禁断の兄×妹(3倍)は、いつでも準備おっけーです』』』

 お前ら…それは無いからな、本当に無いぞ!? フリじゃないからな!

 何で俺の周りの女子は、肉食系ばっかりなんだよ! 癒し系は居ないのかよ!

『その枠は、ドワーフ娘メイド衆達が狙ってるポジションです』

 その情報は要らなかったぞ、サラよ…ってか、アレこそロリッ娘だぞ? 

 俺の求める癒し系は、こう…むっちりしてて出るとこは出る、引っ込むとこは引っ込む体形で、ちょい垂れ気味の大きい瞳で、ぽっちゃりとした唇で、柔らかく微笑むお姉さんキャラなんだけどなあ…

『マスター、やけに具体的ですね』

 まあ、俺の周囲に居ないタイプだよな…

 おかしいな? 異世界物のラノベやアニメだと、必ず巨乳のお姉さんが何人も登場して、色々とえっちぃ事を主人公にしてくれるはずなのに、俺の転生ではそんなキャラ居ないよなあ。

 これが現実か…寂しい…


『大丈夫です、大河さん! このサラちゃんが、あと数年でボンッキュッボンッ! に、成長する予定ですから!』

 …スリムな胸とふくよかなウェストの、残念キャラのサラが言ってもなあ…

『残念って何ですか! ん? スリムな胸? ふくよかなウェスト…幼児体形じゃないですかー!』

 幼児体形のサラは、ほっといてっと。

 あのポリンちゃん、どうすっかねえ…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る