第242話  あの日の真実

「でもでも、トールさま。井戸を掘ればいいんじゃないですか?」

 うむ、ミルシェよ。良い質問だ。

「さっきも言ったが、この土地の地質が問題だな。水はけが良すぎるんだよ」

 全員が、『??』って顔になってる。

「いいか、この国はアーテリオス神国よりも標高が高いんだ。簡単に言えば、山の上の方にあるでっかい平地だと思ってくれ。神国が井戸を掘って水が出る深さまで掘ろうと思ったら…」

「高くなった標高の分だけ、深く掘らなければならない?」

「マチルダ君、正解です。けど、ただ掘っただけで本当に水が出るかも怪しい。まあ、無いとは思うんだが、もしも地下水脈が山脈を越えて繋がっていた場合、標高の高いこの盆地の水脈の水は、標高の低い神国とか周辺国側に…」

「…流れてしまってて、無いかもしれない…と、いう事ですか?」

「はい、ミレーラ君。その通りです。実際に山脈の下を水脈が通ってるのかどうかは、何とも言えないけどね。長い期間乾燥した空気に触れてきたせいで、土に含まれる養分も枯れちゃってしまってるから、複合的な理由で農業には向かない土地になってしまったんだろうなあ。ま、何とか出来ない事も無いけどね」

 そう説明すると、全員の俺を見る目がキラキラ輝き、もう尊敬しますオーラが出まくっていた。


 ふっふっふ…出来る男なのだよ、トール君は! 褒めたまえ! 崇めたまえ! わーっはっはっは!

『でもヒントが無ければ、回答にたどり着けませんでしたよね。それなのにこの態度…流石心臓に剛毛を生やしてるだけは有りますね、大河さん。あそこの毛はまだかわいい産毛なのに』

 おま、何で股間の事をお前が知ってるんだよ! 見たわけでも無いくせに!

『え? 大河さん…以前、風邪をひいてぶっ倒れた事ありましたよね?』

 お、おお…あったな、そんな事も…

『あの時、看病という名目で、全員で清拭したんですよ? 着ている物は全て剥ぎ取って』

 え…全員…?

『ええ、もちろん屋敷中の女全員です』

 う、嘘だ! だって、あれは魔族の看護師さんがしてくれたって…

『嘘です』

 ほっ…良かった…

『ユズカだけは参加してません。ユズキ以外のは、見るのも触るのも、のーせんきゅーだそうです』

 良かねーよ! んじゃ、ほぼ全員が見てんじゃねーか!

『え? 見るだけじゃないですってば。つんつん触って引っ張って、きれいきれいしましたけど、何か?』

 も…もう、お婿に行けない…

『いや、あんた嫁が5人も居るのに、今さら何言っちゃってんの? あ、私とドワーフメイド衆は愛人枠でよろしく~』

 え…え? 嘘でしょ? ねえ、嘘でしょ? 嘘だと言ってよバ〇ニィ!!

『あ、大河さん。劇中にそのセリフは出てきません。第5話のサブタイトルなだけですから』

 うるせーーーー!


「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 いきなり喚きのたうち始めた俺にびっくりした面々だったが、俺は全員により速やかに取り押さえられ、魔族さん特製の鎮静剤を無理やり飲まされた…らしい。

 気が付くとベッドで横になっていた。

 しかも…そっと掛け布団をめくると、また服が…下着まで代わっていた。

 もう、布団の中で生活したい…


 その後、母さんによる威圧的でとっても怖い取り調べが行われ、なぜ俺が発狂したのかが白日の下に曝された。

「減る物じゃなし、何をそんなに取り乱す事があるのかしら?」

 取り調べによって明らかにされた事実に、母さんは呆れていた。

「ちなみに、今日は私が着替えさせましたからね。立派になったっていうのに…」

 ちょっとまてーい! 母さん、何が立派になったって? まさか、ナニの事なのか?

「本当、まだまだ子供の皮を被ったままなのね…小さい男」

 まてまてまて! それは肝っ玉の事か? まさかナニの話じゃないよな?

 どっちの事なんだよ! はっきりさせてくれ! お願いだ、マミィ!

「どうせ結婚したら、お互い全部見るし見られるのよ? グチグチと細かい事を言わないの! いいわね?」

 俯いてプルプル震える俺に向かって、当然と言えば当然の事を言い放ち、部屋を悠然と出て行く、マミィ… 結局、どっちの事だったんだろう…

 マミィの出て行った扉から、こちらの様子をこっそりと窺う、婚約者~ず…

「………君達、何かいう事があるんじゃないかなぁ…」

「「「「「ごめんなさい!」」」」」

 全員、バッと頭を下げて謝罪の言葉を口にした。

「「「「「反省はしてます。でも後悔はしてません!」」」」」

「………………」

「「「「「トール様が見たいと仰るのなら、私達も脱ぎます!」」」」」

 マジっすか!?

「「「「「見たいですか?」」」」」

 何だその媚びた表情と上目遣いは? お前ら、反省もしてないだろ?

 あまりにも揃い過ぎてるぞ、声が! 練習してただろーが!

 ってか、お前達、絶対に欲求不満だろ! そうだろ! 

「「「「「お義母さまが、スキンシップしても良いと仰いましたから!」」」」」

 もうヤダこの娘達…飢えた狼じゃない。僕は憐れなウサギちゃんなのね…

 きっと将来は、骨の髄までしゃぶられる運命なのだわ…よよよよ…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る