第191話 晩餐会の思惑
アルビーン男爵邸で開催される晩餐会がいよいよ3日後に迫った本日、俺と婚約者ーず5人とユズキとユズカ、天鬼族3人娘、おまけのサラを連れてマイ ドリーム ハウスを出発。
この日のために、マイクロバスサイズの大型蒸気自動車を急遽製造した。
なんてったって、我が家だけでも10人を越える大所帯。
運転手はユズキが担当。この日のために、毎日運転の練習をした結果、まあ普通に運転する事は出来る様になった。
「ユズキ、そんなに緊張するな。厳しいようなら代わってやるからな」
「は…はい! 大丈夫です…右を確認して…歩行者巻き込み注意…急発進厳禁…ゆっくり発進…」
大丈夫かな。滅茶苦茶緊張してるけど?
すっごいトロトロとした速度で、我が領の街を抜け、なんとか父さんと俺の領を繋ぐトンネルを通過。
父さんの領もトロトロと進んで、普段なら蒸気自動車でのんびり1時間もあれば着くところ、3時間近くかけて到着した。
乗ってる俺達全員もドキドキ緊張しっぱなしだったから、無事に到着した時はどっと疲れたよ。
父さんの家で一泊し、翌日父さんの所有する蒸気自動車で出発する予定だ。
まだ本日は日暮れまで時間があるのだが、女性陣は晩餐会のために仕立てたドレスを受け取りに洋服屋さんへ。
ちゃんと事前に対策を施していたので、一緒に行こうとは誘われなかった。
「晩餐会でみんなの綺麗なドレス姿を見るのを楽しみにしてるね」
な~んて、先回りして言っておいたので、付き合わずに済んだ。
女性陣が街に出て、絶対に仕立て上がったドレスを受け取るだけで済むなんてはずはない。
仕立てに婚約者~ずが実家に行った時も、結局泊りがけになったぐらい時間がかかったし、帰って来てから話を聞いたところ、デザイン決めや採寸と装飾品選びが済んだ後に、街のおしゃれな店をぐるぐる巡っていたらしい。
どこの世界でも女性の買い物は時間が掛かるものなんだよ。
ってことで、女性陣が街に出かけた後、俺は父さんと打ち合わせ。
現在、父さんの領を中心としたこの一帯の領主貴族達による、アルテアン派なる派閥の存在。
アルビーン男爵邸で開催される晩餐会の思惑の予想。
父さん、やっぱ寝耳にミミズ…じゃなく、寝耳に水状態でかなりびっくりしていた。
まさか自分が派閥の盟主となるなんて、考えても居なかった様だ。
アルテアン領をグーダイド王国トップの領地に育てた伯爵様だけど、父さんの本質は体育会系で脳筋。
困ってる人は見捨てられないし、手を差し伸べたくなる性格だし、あまり物事を細かく考える性格でも無い。
ある意味、陰謀とかと一番縁遠い人間だからね、父さんは。
とは言っても、父さんに足りない部分は、俺が補えばいいだけの事。
なんたって親子なんだしさ。
「アルテアン派とかいう派閥のメンバーを集めて開催される晩餐会で、考えられる目的や企ては3つ』
「3つもあるのか」
そらそうでしょう、父さん。本当はもっと色々考えられるよ?
「1つ目は、『単に周辺の貴族達の親交を深める』。これなら特に問題はない」
「うむ。問題ないな」
「2つ目は、『父さんを派閥の盟主と公言し、派閥結成を大々的に発表する』。まあ、これも特に問題にはならないかな」
「う…ん?問題はないのか?」
「別に父さんを中心とした派閥が出来たって、父さんが陛下や他の派閥に反旗を翻さなきゃ問題ないよ」
「なるほど…」
俺達がクーデターでも起こさない限り問題は無いはず。
「もし派閥の奴らが勝手に動いたら、父さんの派閥なんだから絶縁でもして、陛下や他の派閥に連絡すればいい」
「確かに…」
盟主のいう事を聞かない奴なんて、切り捨てればいいだけの事。
「3つ目は、『婚姻問題』。今回、一番注意しなきゃいけないのはこれ」
「婚姻? コルネリアのか?」
「それだけじゃないよ。父さんも俺も含めてのね」
「どういう事だ?」
「現在、アルテアンと縁を結ぼうとすれば、唯一婚約者を持たないコルネリアを狙うのは明白。これはいい?」
「コルネリアは政治の道具になんぞせんぞ!」
「当然! アルテアンの至宝コルネちゃんは、誰にも渡さん!」
ガッシと父さんと手を結んだ。
「だけど、父さんにも魔の手が伸びる可能性があるよ。これだけ領地が発展したんだから、まだまだ領地を分割して街を造って行かなきゃならない。その時に各街を治める代官や領の内政は、出来れば身内にさせたいと普通は思うのはずだけど、子供が俺とコルネちゃんしかいない」
「う、ん?」
そう、今回ここが問題になりそうなとこ。
我が領は発展著しく、今は分散している村々も、そろそろキャパオーバーっぽい。
分散した村のままでは防衛面でも不安が残る所なので、近いうちに街へとシフトした方が良い。
するとどうしても人口1~2万の街がまだまだ増えるわけだ。
「街に代官を置くなら身内が良いけど、どうしても人手が足りないでしょ? そこに周辺の貴族が自分の身うちを押しこもうとするかもしれないけど、これは篩に掛ければ良いだけの事」
「確かにな」
「調査した結果、周辺各貴族の子弟は、はっきり言ってバカばっかり。全部不採用で問題ないから良い。多分、アルビーン男爵とかもそれは分かってると思う」
「ふむふむ」
いくらバカでも、それぐらいは考えるだろう。
「だったら自らの血縁者をアルテアン家に作ればいい。つまり父さんに第2、第3夫人を送り込んだり、側室や妾を押しこんで来る可能性が大なんだよ」
「いや…俺にはウルリーカが居るぞ?」
まあ、あんた達夫婦は何時までもラブラブだけど、
「問題は、俺に5人の婚約者がいるって事。結婚して全員が子供を1人産めば、アルテアンの代官は十分に足りるだろうし、将来的に財はもう外には流れない。ならば俺やコルネリアと同格の者を先に作ればいい。つまり腹違いの弟妹だね」
だから、今回狙われるのはあんただよ、父さん!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます