第178話  感動の再会?

 マチルダさんの御実家は、それはそれは立派な建物でした。

 これ、もう豪邸って呼んでもいいんじゃね?

 この世界の不動産売買だと店舗付き住宅って紹介される様な物件。

 だけど規模が巨大すぐる…敷地面積が100m四方ぐらいあるんだけど…

 敷地の半分近くを占める巨大な4階建ての建造物の2階までが店舗やら事務所で、その上階が住居らしい。

 スロスト商会って、もしかしなくても大商会なのでは?

 

 そんなスロスト商会の前に着いた馬車5台から、続々と我が家の面々が降りた。

 マチルダさんが俺達を先導して商会の入り口に向かうと、従業員(?)さん達が、

「お嬢様! いつお帰りになったんですか!」「お久しぶりです、お嬢様!」

 などなど、口々にマチルダさんへと声がかかる。

 へ~マチルダさんって、お嬢様なんだな。

 だが、普段のイメージとギャップがありすぎだ。

「みんなただいま戻りました。伯爵様と子爵様、それとご家族の方々が来られてるので、応接室にお通しして。それとお父様とお母様を呼んでくださらない?」

 うん、急に口調もお嬢様っぽくなった。

「「「はい!」」」

 従業員さんも、よく鍛えられてるなあ。動きにキレがある。

 マチルダさんに連れられて、俺達は3階の住居区画にある、応接室へと向かった。


 応接室って、こんなだっけ?

 舞踏会でも出来そうな広さのホールなんだけど…いや、応接セットがあるから応接室なのか?

 横並びで10人座っても余裕ありそうなソファーが3脚、中央に大理石を切りだして作られたドデカいテーブルを囲んで置かれていた。

 四角いテーブルの残りの1面には、これまた2~3人は座れそうな1人掛けのソファー(これが普通サイズのソファーだよな?)が置いてある。

 金持ちの家って、どっこもこうなん?

 俺達はなんとなく手近なソファーに座って、この家の主が来るのを待った。

 巨大なソファーにはそれぞれメイドさんが2人ずつ付いて、それぞれの前にお茶を並べたちと世話をしてくれた。

 程なくして遅れていたメリルも合流し、マチルダさんとこの豪華で巨大な応接室についての感想などを話していると、少し老齢の執事さんが、この家の主の登場を告げて来た。

 

 扉が開かれて入ってきたのは、細身でダンディーなおじ様と、母さんに似た雰囲気だけど、ちょっとおっとりした感じのおば様、そして俺より多分年上であろう少年と少女…顔そっくりだけど、双子かな?

「姉さん!」

 母さんが挨拶もそこそこに、おば様に抱きついた。

 伯爵夫人としては、少しはしたなくないですか、お母さま?

「ウルリーカ…何年ぶりかしら…会いたかったわ…」

 2人の目には光る物が…うん、何だかドキュメント番組、涙のご対面! 感動の再会! って感じだから無粋な事は言わないでおこう。 

 一頻り抱き合い再会を喜び合った2人が我に返ると、注目されて居る事に気が付いたのか、赤い顔で小さくなった。

 ん~、2人共ちょっと可愛いと思った。


 その後、両家でご挨拶。

 母さんのお姉さん…つまりは伯母さんの名前は、オレーシャで、母さんより3歳上。おしゃーれじゃないよ? いや、おしゃれだけど…俺、何言ってんだろ…

 旦那さん、つまりは伯父にあたる方は、伯母さんと同い年のゴルジェイさん。

 そして俺より2歳上の双子の従兄妹である、アルヴィン君とアンシェラちゃん。

 おお! 親戚が増えた! 双子の従兄妹達は、俺が子爵でありネス様の使徒である事から、滅茶苦茶に固くなってるけど、もちょっとお話がしたい…あ、そういや王女様もいるから難しいか。

 マチルダさんも、両親や姉弟と数年ぶりに会えて嬉しそうだ。

 この世界では仕事をしてると、なかなか長距離の旅って出来ないからね。

 俺の領地からここまでだと、普通馬車の旅だと往復で1ヵ月半から2ヵ月ほど掛かる。一旦、遠くに離れてしまったら、今生の別れになってもおかしくない世界だもんなあ。

 

「トールヴァルド子爵様…この度は本当に何と感謝して良いやら…」

「ウルリーカとはもう二度と会えないと諦めておりましたのに…本当にありがとうございます」

 うん、伯父さん伯母さん、そんなの気にしないで。まあ、連れてこれて良かったよ。

「トールちゃん、姉さんに会わせてくれて本当にありがとう!」

 うーむ…もう三十路後半とは思えないハリとボリュームの双丘に、ムギュ! ってされました。

 実母とはいえ、ちょっと危険なので放してもらえますか? どこがかは言えない…


「いえいえ、私達は身内なのですから、どうぞお気になさらず。私も伯父様、伯母様や従兄妹殿と会えて嬉しく思います」

 にっこり微笑んでそう告げると、スロスト家の面々も同じ様に微笑んだ。

「それでですね、スロスト会頭。私からちょっといい話があるのですが、しばしお時間を頂けませんか?」

 

 後程ミルシェに聞いた話だが、と~っても黒い笑顔だったらしい…俺が。失敬な!

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