第12話 三者面談
すいません。
私は 会話力が 皆無でした。
言葉 でない キャラ 動かない (泣き)
投稿 遅い 申し訳 無い
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体がやけに重い。
小鳥のさえずりが聞こえるが、見上げる天井は暗い。
部屋を閉め切っていたことを思い出す。何日ぶりか、僕と外とを遮っていたシャッターを持ち上げた。
日の光が差し込み、息苦しささえ感じるこの部屋に新鮮な空気が一気に流れ込む。
あの事件が起きてから二日目の朝が来た。
正直な話、心地のいい朝だ。
今気づいたのだが、どうやら自分は意外とあっさりとした性格らしい。
暁さんをバカにした野崎という男への怒りが無くなったわけでは無い。
次会ったら暁さんのまえで土下座をさせる。ただ、それ以上に怒ろうとする気は無かった。ヒロインをバカにされたアニメの主人公みたく、キレて相手をボコボコにするーーみたいな展開はきっと起こらない。そもそも起こせないが。
「......なんか、暇だな」
一ヵ月間の停学処分。
昔の僕だったら歓喜こそし、落胆なんてしなかったことだろう。
だが、いざこの身で体験してみるととにかく退屈で仕方がない。
「取り合えず朝ごはんを食べに行こう」
丸一日顔を見せなかった僕があっけらかんとリビングに顔を出した結果、母さんは少し呆れたように笑い、弥美は涙を流して抱き着いて来たのだった。
☆彡
あれから数日が経ち金曜日が訪れた。
僕と言えば何ら変わらず家でゴロゴロ勉強とゲームを繰り返している。
少し太ったかもしれない。母さんにも「今のあんたニートみたいよ。ちょっとは体を動かしなさい」と注意を受けたので早朝ランニングを前向きに善処する方向性で検討中だ。
ぼんやりと携帯の画面を眺めているとピンポーンと鳴った。
部屋を出ると玄関から弥美と誰かの話し声が聞こえた。
大方彼女のクラスメイトか友人が来ているのだろう。ドアのハンドルに手を掛け、部屋に戻ろうとすると同時にバタバタと誰かが駆け上がってきた。
黒い髪を靡かせ弥美が現れる。
「兄さん! あの女誰!?」
突き刺すように言葉を発し、階段先を指さす。
「誰って、弥美の友達じゃなかったの?」
「違います! とりあえず来てください!」
「え、ちょっと待って」
僕の声は弥美に届かず、渋々顔を出せば言葉を失った。
「梨彗君お久しぶりですね」
見間違えるはずもないのだが、にわかに現実を信じられなくって目頭を押さえる。
当然何回見ても変わるはずもなくそこには制服に身を通した暁さんが佇んでいた。
「今お邪魔でしたか? 今週分のプリントを纏めて持ってきたのですが」
控えめに笑う彼女に心を奪われ、ついーー
「よかったらお茶でも飲んでいかない?」
そんなことを口走ってしまっていた。
☆彡
「暁さんはお茶かジュース、コーヒーとかもあるけど何がいい?」
「じゃ、じゃあお茶を貰ってもいいかな」
「おっけー」
暁さんを椅子に座らせキッチンに入る。
コップを取り、暁さんから見えていないことを確認するとその場に屈んだ。
今になって事のヤバさが波の様に押し寄せてきたからだ。
好きな人が家に来た。好きな人が家に来た。好きな人がーー。
心の中で叫び終えると、コップを三つ持ち指にお茶が入ったポットを掛けてリビングへ向かった。
そこにはダイニングテーブルに向き合って座る暁さんと、弥美の姿があった。
「......なんで弥美もいるんだよ」
「私がいたら何か?」
「いや何か、って」
「私は気にしないから大丈夫だよ梨彗君」
「ふんっ」
今日の弥美はすこぶる機嫌が悪いな。
コップに三人分のお茶を注ぎ、僕も座った。
少しの間、無言の時間が僕らを包み込む。
「そういえば梨彗君怪我は大丈夫?」
「うん。まだ少し痛いけどあの時程痛むことは無いよ」
「それならよかった」
暁さんはホッとため息を落とした。
「暁さんの方こそあれから大丈夫? 絡まれてない?」
「流石に学校が違うからね。会うことも無ければ特にメッセージもきてないよ」
「それもそっか」
「うん」
そこでまた会話が途切れる。
緊張のせいか喉が異様に乾き並々入ったお茶を飲み干す。
暁さんもどこか気まずそうに視線を逸らし、弥美は何故か暁さんから目を離さない。
なんだこの状況。
ひとまず空になったコップにお茶をつぎ、話題を考えるがまるで思いつかない。
「そ、そういえばこれって弥美ちゃんだよね!」
そういって暁さんは携帯の画面を僕らに見せた。
ピンク色の可愛らしい背景に映るのはヤミというアカウント名と一枚の写真。
やはり暁さんに写真を送ったのは弥美だったようだ。
「......ということは貴方が兄さんの想い人なんですね」
「「えっ」」
ギョッとして弥美を見るが彼女は何か決意した様な様子で立ち上がった。
「私は認めません! 兄さんは私の未来のお婿さんなんですから!」
バンッ!
勢いよく扉が閉められ、彼女は自室へと消えていった。
最大級の地雷を置いて。
その場に残される僕達二人はもはや顔を見合わせる事すらできないでいた。
校外学習の日に告白未遂となり次の機会をうかがっていたが、今この状況で、妹から想いをバラされるとは思いもしなかった。「これは違くてーー」と、喉から溢れそうになった言葉を僕はぐっと堪えた。
性格が悪いと思われても仕方がない。
ただそれ以上にこの状況で彼女がなんと答えるのか、言葉を待った。
「お、お兄ちゃんが好きなんだね。梨彗君の妹さんは」
当たり障りのない回答に僕は少し肩を落とした。
「きょ、今日はもうお暇しようかな。お茶ありがとうね梨彗君」
「えっ。あ、うん。こちらこそプリント持ってきてくれてありがとう」
逃げるように彼女は玄関へ向かい、ドアを開ける音と共に聞こえてきた「お邪魔しました」はあっと言う間に聞こえなくなった。
一人部屋に残った僕は机に置かれているプリントに目を向け「課題するか」と一人ぼやいた。
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