第4話 夢であれば

 主人公の妹の名前『やみ』をひらがな表記にしていたのですが明らかに見にくかったので『弥美』と訂正いたしました。


 ーーーーーーー


 彼女のいない年数と年齢が同じ。

 そんなよくある言葉で済まされる内の一人だった自分が今、屋上でクラスの一番かわいいであろう女子に告白しようとしている。


 しかし、雨風と経年劣化で汚れたコンクリートや昨夜の雨で作られた水たまり。風は強く、髪が逆立ってしまう。


 漫画の様な告白を心のどこかで想像していたが、現実は目を背けたくなる様なものばかりだった。


 好きな人が落とした写真は無くし、暁さんには何故か睨まれる。そして、今......僕の携帯が震え妹からのメッセージが届いた。


 それは、机に置いてあった写真を知らないか?

 という文面に対する返信だった。


『写真ですか? それでしたら横にあった便箋に同封しておきましたよ』


 ......。




 ☆彡




 気が付くと、僕はベッドの上で天井のシミを眺めていた。


 窓から差し掛かる日差しが部屋を明るく照らし、小鳥の甲高い鳴き声が朝の到来を否応なく突き付けてくる。


 酷い夢を見た。

 断片的な記憶だが、思い出すだけでも胸が苦しくなる。

 僕は暁さんに告白しようとして......脅迫、写真。ーーッ!


 ーー告白当日の夢で見る内容じゃないって。


 落ち込んだ気持ちを抱えながら僕は目覚し時計を手に取った。


「まだ六時か」


 普段ならもう一時間程二度寝するところだが今日は暁さんに告白をする日だ。目覚し時計で設定した時間よりも大分早く起きてしまったが、仕方がない。

 夢の二の舞にならないためにも時間に余裕をもって支度をするとしよう。


 僕は青色のタオルケットから抜け出そうとして、気づく。


 6:00とアナログ表記された下にある曜日と日にち。今日が六月一日の火曜日と表記されていることに。


 いやいやそんな馬鹿な。


 目頭を押さえ、ふと過った考えを振り払おうと頭を振ると、机に置かれたおにぎりが目に入った。


「......」


 昨晩食べた料理が思い出せない。

 それ以前に昨日家に帰ってからの記憶がない。


 何かの間違いだ。そうだ、確か携帯の時計は自動で時刻が合わされるはず。

 しかしどこを探しても携帯は見当たらない。それよりもどうして僕は制服を着ているのだろうか。まさかと思い太ももに感じる違和感を取り除くと、それは紛れもない僕の携帯だった。


 もう無心になって携帯の画面を映し出すと日付は六月一日の火曜日を記しており、ついでに弥美から幾つかのメッセージが届いていた。


 メッセージ件数が百を有に超えている。

 もしかしたら昔の友人の可能性も考えメッセージアプリを立ち上げると、その微かな期待は粉々に打ち砕かれた。数百もの通知は全て弥美からのモノだった。


 僕はそっと携帯の画面を閉じ枕元に置いた。

 足元に追いやったタオルケットを頭まで被り枕に顔を沈め、全てを忘れるためにもう一度眠りについたのだった。




 ☆彡




 僕は生まれて初めて土下座をした。


 相手は母である。理由はどうしても学校に行きたくなかったから。

 しかし体調が悪いわけでもない僕を休ませてくれる訳もなく、けつを叩かれいやいや学校に行くことになった。ただ、家を出る寸前に母から千円札を一枚貰った。


 これで少し贅沢な昼飯でも食べて元気を出しなさいとの事。


 お釣りはお小遣いにしていいと言われた。


 少しだけ元気が出た。




 ☆彡




 帰りたいです。


 僕は生まれて初めて土下座をされました。

 相手は暁さんである。理由はーー


「梨彗君ごめんなさい! 昨日の写真を間違えて一年生のグループチャットに送ってしまいました。すぐに消したんですけど何人かに見られちゃったみたいで、一年生の間で梨彗君は変態という肩書を作ってしまいました!」



 は?






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