三十夜   遠星

万華世界を堪能した六人は、桜木町から電車に乗り、横浜の町をあとにした。

「東京駅、東京駅」

インドラたちが急に消えたスタート地点に舞い戻ったが、インドラとハスの行方も元の世界に帰る手がかりひとつも掴めないでいた。

「楽しい時が終わり、元に戻れたけど何もわからないな」

「本当だな」

「私たちが、この地球の日本にたどり着いて、時間飛ばしがあったが、まだ、二日くらいしか経っていないが、モルディーに、いや、海辺の町に戻ることも出来ない。それに、何日時間が経っているのかもわからないしな」

フーガは少し窓を眺めながら言うと…また、景色が変わった。

「あれ?」

海が現れた。

「横浜に戻ったのか?」

「違う。ここは海辺の町だ」

フーガが指差した先には、二つの塔が見える。どうやら、地球からモルディーに戻ったようだ。

「時計で確認したけど、私たちが、敦子さんと尚樹さんに、インドラくんと再会した時間から一時間も経っていないわ」

「え?」

「ティアおばさんが、あの遠距離恋愛の歌を歌ってくれた時と同じ?」

「みたいね…」

ユリたちが時計を確認したら、ティアが歌を歌ったあの時間で止まったままだ。

これは、どうしことか…?

だけど、

「ねえ、見て」

ルルとラッシェオが普通の服から、さっき着ていたチャイナ服に変身できた。さらには、中華まんなど横浜名物が、満漢全席が普通に現れた。

しかも口にしたら、満腹する。

「俺たちの思いや考えが具現化するのか?」

「まじかよ?」

「でも、願いが簡単に現実になるなんて、漫画やおとぎ話じゃあるまいのに…」

「そうだよな」

ラッシェオが試しに今の願望を口にして念じた。

「甘いチョコ食べたい」

ルルも

「ホワイトクッキー食べたい」

ユリは、

「シュークリーム食べたい」

ティアは、

「お団子食べたい」

ピースは、

「ビール」

フーガは、

「焼酎が飲みたい」

すると目の前にそれらが現れた。

何と望んだものがテーブルに乗って現れた。

声を揃えて六人は叫んだ。

「すっげー」

「これは、凄いわ」

全員でテーブルに並び、願ったものを口にした。

「このチョコ、甘い甘い、甘すぎくんだぜ」

「ホワイトクッキーも普通にお店で売っているのとは違うわ。なんだが、隠し味があるわ」

「ルル、チョコ分けてあげるよ。クッキーにつけたら美味いんじゃないか」

ラッシェオがルルにチョコを分ける。

「ありがとう。わあ、絶品」

ルルはさらに美味しく頬張った。

「ああ、生クリームが効いているわ」

「お団子も美味しい」

「かー生き返る」

「この焼酎、かなりいい、今まで呑んだ中で絶品だ」

両親たちも自分たちの好きなものに舌鼓みを打つ。

波音と潮風を浴びながら、身体と心を預ける六人は、少しだけ元の世界に戻った疲れを癒やすために、広場にパラソルを立ててシートを敷いて昼寝をする。

「本当に不思議な時間だったな」

「いきなり、敦子さんの心に入ってしまった時はびっくりしちゃったけど、でも、その魅力的な熱い時間を体験できたわ。ハスお姉ちゃんと再会出来たのが嬉しいかったな」

「本当に、地球と言う私たちのご先祖さまが暮らしていた故郷ととも言える世界に行けたんだから、これは誰も体験したことがないことだ」

「ラッシェオがいつぞやの夜に言っていたナツヤスミは、異世界「遠星」で楽しめるなんて、神様も粋なプレゼントをしてくれたな」

ピースが遠星と呟いた。

「父さん、それはどういう意味なの?」

ラッシェオが父に尋ねる。

「スポーツの試合で遠くに行くことを遠征するって言うだろう。それにかけて作ったんだ。俺たちは遠くにある惑星地球に行った。そして、心や身体、頭に記憶し思い出を作った。だから、遠い惑星に行ったから遠星えんせいだ」

すると、子供たちと妻たちもパチパチと拍手を贈る。

「ピース、詩人だな」

「おっちゃん、凄いわ」

「感動だわ」

「もう、書くことないと思うけど、絵日記に書けるよ」

「流石は私の旦那様」

皆に褒めらてピースは、よせやいと照れ笑いする。










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