第34話
階段の一段一段が高いのを上るのに、ちょっとだけ苦労したけど、なんとか上りきる。まだ、ざわざわしてる所を見ると、もう少し待つか。なんか、修学旅行かなんかの売店みたいだな、とか思いながら、少し人が空くのを待った。
……なかなか、空かない。しかし、この中に入るのはなぁ。
「おいっ、もうポーションないのかっ!」
「おばちゃん、もうちょっと小さいリュックないの?」
「ダンジョンの地図は?」
ん? ダンジョン?
気になるワードが聞こえてきた気がするけど、確認したくても殺気だってて、入りたくない。そこはヘリウスに聞けばいいかな? なんて思ってたら、ちょうど階段を上がってきたヘリウスに声をかけられた。
「なんだ、まだ買ってなかったのか」
「ヘリウス! あれ見てよ」
「……あぁ、こりゃ、お前には無理か」
よし、と気合を入れたかと思ったら、ヘリウスは俺の脇を掴んで、肩車をしてくれた。おお! 視野が広がった! 冒険者たちの頭ばっかりだけど。
「ハル、お前も探せよ」
「うん!」
俺は上から覗き込むように、商品を探すことにした。
結局、小さな小銭入れを手に入れることが出来た。何の革でできているのかわからないけど、いい飴色な使い込まれた感じなのは、俺好みではある。
「いいのがあって、よかったな」
「うんっ」
小銭入れをしげしげと見ていた俺の頭をグシグシ撫でて、ニカッと笑うへリウス。俺もつられて笑みを浮かべる。後でウエストポーチにバラバラに入れた小銭を整理しなくちゃ。
「さて、この時間にもなれば、外の店もやってるだろう。今のうちに買い出ししておくか」
「そうだね。食料もあんまり残っていないし……でも、俺、あんまり金ないよ?」
村を出るときにボブさんたちが山ほど詰め込んだはずなのが、ほとんど残っていないのは、この大食らいのせいなんだけど。本人に自覚はなさそうだ。
それにさっきの財布を買ったので、ほんとに手元には大した金額が残っていない。
「金のことは気にするな。お前みたいなガキんちょに金を出させるわけないだろう」
「ガキって言うな」
「ハッハッハ!そうだ、食料もそうだが、ハル、お前の防具や武器も、買っておいたほうがいいだろう」
「え、これじゃ、ダメ?」
一応、ボブさんの息子さんのお下がりを着ているけれど、自分としては気に入っている。それに、今はウエストポーチにしまいこんでいる小型の弓。流石に、剣はこの身体には無理があるし、皮を剝ぎ取るための小刀くらいしかない。
「そうだなぁ、それは、ボブたちホビット族だったら十分だろう。やつらは意外に頑丈な身体をしてるからな」
言われてみて、なるほど、と思う。そんなに悪くはないと思っていたんだけど、もう少し丈夫なものに変えたほうがいいらしい。
「それに、一応、腰に下げられるようなナイフもあったほうがいいだろう。一々、ポーチから皮をはぐ小刀を出す余裕があるとも限らないしな」
「……わかった」
俺たちは冒険者ギルドを出ると、人の流れだした街の道を歩きだした。
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