14.意味のない行為

 と頭の隅で考えながらもすっかりその気になった私は、起き上がって慎也さんの浴衣の腰紐をえいやっと引っ張って衣を剥ぎとり、馬乗りになった。

 ひっかかったままだった自分の浴衣もぱっと脱ぎ捨てる。慎也さんもそうだけど風呂上りに下着はつけてなかったからこれで生まれたままの姿だ。


「十和子さん、まだ……」

「大丈夫、ほら」

 さっきまでのぐだぐだを振り払って私は楽しむことだけを考え始める。


 シモンが吸血行為で魔力を得るように私は男性との性交渉で霊力を回復する。どうやらシモンはまるっと外部から魔力を取り込むようだが、私は私自身の体内で霊力を生産する。

 だから私がもらう男性の精はいわば原材料で行為自体に意味はない。挿入して射精してもらうだけでいいのだけど、それじゃあつまらない。どうせなら楽しくないと。だから私の相方は慎也さんじゃないとダメ。今は。


 見つめ合ったままくちびるを寄せる。

「慎也さん、気持ち良くして」

 お願いすると肩を引き寄せられた。体の上下を入れ替えて布団に押しつけられる。


 あられもない声が漏れるのが恥ずかしくて肩にしがみついて夢中でキスする。ぴったり胸を合わせて舌を絡ませているとどこもかしこも繋がった気になって幸福感が増すけど、肝心の気持ちが繋がっていないことは頭の隅ではよーくわかってる。


 達成感に脱力して息を整えながら私たちは繋がったまま前戯のようなキスをまた繰り返した。





 たくさん愛してもらってお肌はつやつや、腕の噛み傷もほとんど直ったし、大きめのばんそうこうを貼るだけですんだのであんずには「ちょっと転んじゃった」とごまかせた。


 ストーカーは捕まえてうんと懲らしめてやったから大丈夫、つきまとわれることはもうないから。なんの保証もないことを力強く言い切ったところ、あんずは納得したにせよそうでないにせよ、笑顔を見せて頷いた。

「トワさんがそう言うなら安心です」

 もーやだ、このコ。素直で可愛すぎる。


「これから解剖?」

「はい。今日でやっと一区切りです」

 あんずが胸元で握っている手は、小さく震えていた。

「いいものあげる」

 そんなあんずに、私はピンク色の小さな巾着型のお守りを渡した。

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