02 記憶のない少女



 俺と出会った時、その少女はすでに消失病にかかっていた。


 だから、自分が誰さんで、どんな性格の人間なのかもまったく思い出せない状態だった。


「私は誰ですか」


 そんなのこっちが知りたいくらだ。


 彼女は公園のブランコに座ってぼんやりとしてた。


 その姿が、あまりにも儚く感じられて、今すぐに消え去ってしまいそうだったから。


「少なくとも貴方は女性に見える」そんな風に俺は話しかけた。「そして、性格は控えめ」


 それだけ。


 俺は彼女の友人でも知人でもないのだ。


 交わせる言葉なんて、たいして持っていなかった。


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