第101話 コボルト大発生?!2

コジローはニール村に向かって進みながら、索敵能力を最大範囲で展開する。ゼフトにもらったブレスレットに込められている索敵魔法は、周囲にいる生物、その魔力や敵意さえも色分けして表示してくれる。


村に近づくにつれ、村の人間達と思われる反応と、その周囲を取り囲むような魔物の反応が見えた。どうやら村は既に襲撃をうけているようだ。




村を襲撃しているのはコボルト。犬系の人型モンスターである。知能が高く、群れで狩りをする。非常に動きが俊敏で、コボルトに比べるとかなりやっかいな相手である。


だが・・・


村の門の前にいた数十匹のコボルトは、一瞬にしてすべて斬り飛ばされた。コジローの加速は既に50倍速に到達している。加速中のコジローにとっては、止まっているかのような相手を片端から斬り伏せていく作業でしかない。


コジローは加速を一旦解除し、村に向かって声を掛ける。


「救援に来た!!」


「おお?!・・・おっ!」


城壁の上からコボルトに向かって矢や石を放っていた村人は一瞬嬉しそうな顔をしたが、コジローの後ろに現れた魔狼を見て声を詰まらせた。


「ああ、彼らは俺の従魔だ!もう大丈夫!マロ、頼む!!火災になるから火は使うな!」


マロと子供たちは瞬時に村の外周に沿って展開、村を取り囲んでいた大量のコボルトはアイスアロー、サンダーアローで殲滅されていく。その様子は圧倒的、魔狼はまるで、強力な移動砲台のようなものだ。数匹居れば都市を壊滅する事も可能な戦力である。それが味方として協力してくれるのは本当に心強い。


村の外壁にとりついていたコボルトの殲滅を終え、マロ達は攻撃の範囲を外へと広げていった。村の外の森の中に隠れていたコボルトを発見しだい射殺していく。


コボルト達は突然現れた脅威に、撤退していった。


コジローはあまり深追いはしないでいいとマロを呼び戻し、一旦村に入ることにした。




「ありがとう・・・アンタは?」


村長らしい老人が前に出てきて言った。


「俺はアルテミルの冒険者コジローだ。アントとビートに頼まれてやってきた。」


「おお、アントとビートが?!・・・して二人は?」


「ああ、ちょっと待っていてくれ、連れてくる。」


コジローは転移によって姿を消し、しばらくして少年二人を連れて再び現れた。


村人のなかなかから少年の名を呼びながら出てきた老夫婦が二人を抱きしめた。


「ビルはどうした?!」


「あんちゃんは・・・コボルトにやられて・・・俺たちだけを逃して・・・」


アントが泣きながら説明した。


コジローが見渡すと、村には老人と子供しか居ない。尋ねてみると、若者はもともと多くはないが、それもコボルトとの戦いで亡くなってしまったという。


とりあえず、マロ達が居れば村の守りは問題ないだろう。


コジローは村人にコボルトの集落の場所を聞き、偵察に向かうことにした。




集落のある方向へ森を進むコジロー。索敵機能で既に大量の魔物の反応を捉えている。その数・・・数千?いや、万に達しているかも知れない。


これだけの異常発生はさすがにおかしい・・・


嫌な予感をコジローは感じていた。




とりあえず、コジロー一人で集落に斬り込んでみた。

次元剣を伸ばし、3メートルもの長剣にした状態で、コボルト達を薙ぎ払っていく。


加速を発動しての攻撃である。普通の人間相手であれば、止まっているようにしかコジローには見えない状態である。動きが俊敏なコボルトであってもスローモーションでしかない。

こうなると、もはや草刈りならぬコボルト刈りである。


だが、それにしても数が多すぎる。すべてを刈り尽くすには、コジロー一人ではやはり時間がかかる。


コジローも普通の人間である、いずれ体力も魔力も尽きる。ある程度刈って疲労を感じるようになってきたところで、転移で村に戻ることにした。




本当は、コジローは一人で集落を殲滅するつもりだったのだが、それができないほど数が多かったのは予想外であった。


数回に分けて何度も「刈り」続ければ、いずれは駆逐できるだろうが・・・


あるいは、死霊の森に一旦戻り、マロ達の仲間の魔狼軍団を連れてきて殲滅してしまうという手もある。


しかし、こんな大量発生は異常である。その原因を調べる必要があるし、村への事後のサポートの問題もあるので、討伐隊が来るのを待つことにした。


とりあえず、報告をあげるため、コジローはノークの街へと転移した。



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