第22話 森1
コジローとマロは森へ入っていった。目指すはギルド受付で教えてもらった薬草がある場所。
また、薬草以外にも、魔法や剣の練習ができるような場所も見つかればよいなとも思っていた。
街道では旅人や商人とその護衛の者などをチラホラ見かけたが、森へ向かうルートへ入ると一気に人がいなくなった。
人がいなくなったので、コジローは転移の能力について試してみることにする。
まずは、少し距離のある転移の実験。
周囲に人が居ない事を確認して、コジローは転移を発動すると、数百メートル先に瞬間移動した。
見える範囲であれば、あまり距離の制限等はなく転移できるようだ。
コジローはすぐに元の場所に戻るつもりだったのだが、マロは瞬時にコジローの転移先に追いついてきたので必要なかった。フェンリルの足の速さは転移にも劣らないんじゃないかとコジローは思う。
次に、マロと一緒に転移ができるか試してみる。
成功。
ただ、一人の時と比べて、僅かだが違いがあった。
どうやら、距離が大きくなったり転移する人や物が増えるなど、負荷が大きくなると、発動までに貯めの時間がじゃっかん必要になるようだ。また、発動まで溜めがあると、一瞬ではあるが地面に魔法陣が浮かび上がって見えるようだ。
試しに、マロと一緒に2メートルほどの近距離転移を行ってみると、一人の時とほとんど変わらない感じだった。
次は、長距離転移。
魔力次第ではあるが、数キロ・数十キロ・数百キロ先でも転移できるらしい。
ただし、"行ったことがある場所" という制限は変わらないようだ。
試してみよう。
と思ったが、考えてみれば、コジローがこの世界で行ったことがある世界というのは多くはない。
少し考えて、コジローは、マドリーの家の裏庭をイメージした。
コジローとマロの足元に魔法陣が浮かび上がる。そして、転移先にも魔法陣が浮かび上がっている様子がコジローに見えた。
転移が発動され、コジローとマロはマドリーの家の庭に居た。
どうやら転移先が見えるので、様子を確認して問題ない場所を選べるようだ。もし問題がある場所(人や物と重なってしまう等)に無理に転移しようとすると、転移を発動できないような安全機能があるらしい。
☆大昔の話、転移魔法が初めて編み出された頃。転移に失敗して、岩の中や海中、壁の中にめり込んでしまう事故が続出したため、最初に場所を確認する術式が必須プログラムとして組み込まれるようになったのだった。
さらにコジローが受け継いだのはゼフトが独自に開発・改良を重ねた術式なので、行き先を確認するだけでなく、そもそも転移先が安全でない場合は発動しない、無理に発動させても安全な場所にすこし転移先をズラすなど、かなり高度な判断ができる術式となっているのであった。
ゼフトの魔法は、ゼフトが人間だった頃生きていた、失われた古代魔法文明の時代の魔法であり、その後ゼフトが独自に改良を重ねていったものである。そのため、現在この世界で広まっている一般的な魔法とは術式がかなり異なっている。
転移魔法についても、この世界で現在一般的な転移魔法と比べて、必要な魔力量は劇的に少なく済む。
コジローはまだ知らないのであるが、コジローが使っている短距離転移はタイムラグもなく魔力消費量も極小だが、この時代の一般的な転移魔法では、そんな芸当は実はできないのであった。つまり、コジローが使っている転移を組み合わせた剣撃は、コジローにしかできないオリジナル技ということになる。
マドリーの家の裏庭。
そこに魔法陣が浮かび、コジローとマロが現れる。
裏庭なら誰も居ないだろうとコジローは予想したのだが、たまたまマドリーが近くで畑仕事をしていたのであった。
「おや、コジロー、戻っ~」
コジロー達が現れたのに気付いたマドリーが声をかけようとしたが、コジローたちはすぐにまた転移で消えてしまった。コジローはマドリーに背を向けていたので気づかなかったのだ。
「・・・・忙しそうで何より。」
マドリーはまた畑仕事を再開する。ゼフトと付き合いがあるマドリーは、そうそうの事では動じないのであった。。。
コジローの転移の実験は続く。
長距離転移は、行ったことがある場所にしか行けない。
では、短距離なら?
森を進んでいくと大きな岩があった、距離にして10mほどであるが、岩の向こう側は見えない。試しにその向こう側に転移してみようとしたが・・・
できなかった。
岩の向こう側を確認してからであれば、長距離転移と同じ手順で転移することができた。
カラン。
音が頭の中で響く。ゼフトがオーブに組み込んだレベルアップのお知らせ。
確認すると、【転移・方向転換】が使えるようになったようだ。
これまでは転移後の向きは、転移する前と同じ方向を向いていたが、転移すると同時に自分が向いている方向を変える事ができるようになったらしい。
転移斬を使うには結構便利かも知れない。
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