第1章 ヒロイン誕生するらしい
【オレという登場人物】
オレの野望を知って貰えた(?)ところで、オレがどんな人間かを説明しよう。
名前は
高校1年生の時はそれなりに彼女が出来たこともある。まあオレには画面の奥に嫁が居るから現実世界のおなごとは2か月も続かないんだけど。
そしてオレのメインであるカッコよく言うと影の顔。RPG作品を全制覇する目標真っ只中のオタクだ。
勿論リア友でこんな一面を知っている人はいない。
オレの影の顔をさらけ出しているのはSNSだけだ。
ネットはリアルと違ってオタクを毛嫌いしないどころか、むしろ仲間が寄ってくるフィールドだ。だから好きだ。
そんなオレのルーティンは、朝学校(いわば戦場)に登校して精一杯陽キャを演じる。
地を這って帰宅後、疲弊しきった心と体をRPGの嫁に癒してもらう。
そして1日のゲームに関する出来事をグフグフ言いながらブログに綴る。
ちなみにオレの生きがいが詰まったブログの購読者は3,024人だ。
ちょっとした自慢でもある。
これでオレの野望と素晴らしい人間性を分かって貰えたことと思う。
明日から高校2年生。目標は「RPGもヒロインみたいな子を彼女にする」だ。
認めたくはないが、次元のお引越しは現社会でまだ開発されていないのでRPGのヒロインを嫁にすることは不可能だと分かっている。
だからこそ、RPGのヒロインみたいな子を彼女にしたい。
そんな子を見つけるべく、オレは奔走する。
1
時刻はAM1:25。
新学期に備えて早く寝ないとと思いつつも手は今ハマっている「ハードドラゴンズシリーズ」に伸びていた。
通称「ハドドラ」と言われているこのRPG作品は、名前こそダサいものの名作だ。
今はシリーズ12作品まで出ていて、言わずともオレもプレイしている。
その中でも名作中の名作であるハドドラ8に再び熱を上げているオレは、次のボス戦に向けてレベル上げしている真っ只中だ。
ちなみにこのハドドラ8に出てくる魔法使いのステラが今のオレの嫁だ。
いつものように今日のハドドラの進捗をブログにあげようと思い、PCを起動したオレはあるサイトが目に留まった。
その名も『もし自分がRPGヒロインと結婚するなら』。
実にくだらない、と思うかもしれない。普通は。
だがみんな言わないだけで、こういう手のサイトは大好きなんだ。もしテキトーだとしても、「このキャラとお似合いだよ!」みたいなことを言ってもらえたら嬉しいじゃん。
だからオレは迷わず自分の名前・ゲームでも使う『シュウ』を入力する。
だが、いつもならニックネームでいいはずの所がこのサイトは本名表記だった。
最初はなんか気が引けたが、自分の嫁を選出してもらえると思うと夜中であろうと気持ちは
質問の回答を終え、結果待ちの今。もうすでに3分経っている。
早く嫁を知りたいオレとしてはこの3分が苦痛でしかない。
気づいたらガタガタ貧乏ゆすりしていたオレ。はたから見るとただのキモい
そして待ち望んだ結果が出る。
『真白 柊さんがRPGヒロインと結婚するなら…ハードドラゴンズ5のキーラだよ!』
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」
思わず歓喜の声をあげるキモいオレ。それも無理はない。あの名作のハドドラシリーズでオレの好みど真ん中の”聖女キャラ”であるキーラが嫁候補だ。
お淑やかでフワッと温かく包み込む包容力の持ち主。口調は丁寧でまさに女神だ。
そして職業はそんなキーラのキャラにドンピシャの「僧侶」。
ハドドラ5をプレイしていた時はゲーム内でもリアルでも心と体をキーラに回復してもらっていたオレ。
まあサイト内の妄想であれ、嬉しいものは嬉しいしブログでシェアでもしとくか。自慢と記念にな。
そうして興奮冷めやらぬまま時計を見たらAM3:40。
さすがにやばいと思い、簡単にブログを終わらせて就寝。
いい夢が見られそうだ。
2
「朝ですよ、起きてください♪朝ですよ、起きてください♪」
枕の下に突っ込んでおいたスマホのアラームが鳴りだす。
ちなみにこのアラームはハドドラ8の予約者対象のステラアラームだ。
このアラームにしてから、無理やり起こされる事への不快感が半減した。
AM7:00。夜更かししたせいでやたら眠い。
「柊ーごはんーー!!」
下から元気な母さんの朝ごはんコール。
「今行くーー!」
そう返事したものの、寝不足のせいで体が重い。
まだ完全に目が覚めないまま、トイレに向かう。
ガチャ―――
「わわっ!!」
バンッ!!
声がしたので瞬時にドアを閉めた。
「…母さん。入ってるなら鍵しめてくんない?」
「…」
「母さん?」
すると台所の方から声が聞こえる。
「柊、なにブツブツ言ってるの?早くご飯食べないと冷めるよーーー!」
…あれ?
聞き間違いかと思いもう一度ドアを開けてみる。
そこには―――
「あ、あの…初めまして。パソコンの前に出たハズが、何故かトイレに…」
現実世界には珍しいローブと杖を身に着けた女の子が照れ臭そうに立っていた。
オレはゆっくりとドアを閉めた。
3
始業式の朝。自宅にて。
オレの目が腐っていたのか、ハドドラ5のキーラがトイレにいた。
一旦落ち着いて考えてみる。
オレの知らないところで次元のお引越しを政府が始めたのか。
あるいは現実世界の何らかのバグか。
そう考えている内に、オレが封印した扉がゆっくりと開かれる。
「あのー…真白 柊さんの嫁候補で来ました。ハードドラゴンズ5のキーラです。」
こうして、可愛く言えば”ハチャ☆メチャ”、悪く言えば壮絶な高校生活がスタートした。
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