第29話 シフィ姉ちゃんの深層思考の考察⑬
だけど、その小さな呟きは、誰の耳にも届かないほど、聞き取りづらかった。
だけど、その場にいないモフモフの山に埋もれてるシフィ姉ちゃんの記憶を覗いている私には、何故かしっかり聞こえたし、全ての映像も鮮明に見えてるよ。
多分、これも神獣ベロリンサラちゃん効果だろう。
これってどういう理屈なんだろう。
ちょっと気になるけど、それは、取り敢えず横に置いとこう。
今は、未練たらたらな呟き声が聞こえてしまい、どうしても、言いたくなったからね。
心に溜め込むのは、身体によくないらしいから、吐き出しちゃおう。そうしよう。
コスタおじちゃんの器が小さすぎて、これって貴族としてどうなのよ。
心が小さいよ!!心が女々しいよ!!心がみすぼらしいよ!!
男性は、大きな心を持つ方が、断然魅力的だって、学校に通う女子のお仲間達が話してたよ。
脳筋お馬鹿さんは、何か嫌なことが起こると、すぐに執着するから、困るのよ。
周りにいる家臣達も相当大変そうだと思うよ。
だから、私が周囲を見渡した時には、騎士達は誰もこちらに視線を合わせようとしなかったのね。
コスタおじちゃん、早く気づかないと、周りには誰もいない裸の領主様になるよ。
否....違うよ、間違えたから、訂正するよ。
コスタおじちゃん、早く気づかないと、誰も臭い蛸なんか、見たくもないし、近寄りたくもないし、触りたくもないし、ましてや食べたいとは誰も思わないだろうから、きっと生ゴミとして捨てられちゃうよ。
──おっと、他所見しないで、私はしっかりラスレちゃんを応援しよう。そうしよう。
そのラスレちゃんは、幸福絶頂の天使の眼差しをコスタおじちゃんに向けていて、何か聞き取りにくい言葉を
「コスタドル様の側から考えますと、直接顔を合わせずにこの話し合いで、大分気心が知れた私達を通して、製作者としっかりやり取りが出来ますし、なによりも、交渉の破談を防ぐことができます」
コスタおじちゃんの独り言の呟きを無視して、ラスレちゃんはそのまま話を続けていた。
そして、蛸魔王のコスタおじちゃんから、ラスレちゃんを守る為の陣形をとる勇者役のグランさんは、蛸魔王に両目の視線を注ぎつつ、手の空いてる右手の指先を使い、従者役のセルディさんに、意思の疎通を図ろうとしていた。
その指先の意思の疎通を正しく理解できたセルディさんは、ラスレちゃんの真横に控えていた場所から、より前方のグランさんと肩を並べる場所に、緊張した様子でじりじりと滲みより、
その陣形が完成したのを横目で見届けたラスレちゃんは、更に気合を入れ交渉の戦い挑んでいき、次の一手を指し示す。
「何故、私がこの提案を頑なに
この場で、コスタおじちゃんの非難をし始めたラスレちゃんは、姿勢はすっと伸ばした状態で、両手をお
そんな、貴族役の舞台女優のように完璧に役に溶け込んだ姿が私の視界に映りこんでいる。
「──小娘が何を言うかと思えば....」
殆ど、誰にも聞こえない程の小声で、
は―、コスタおじちゃんには、もう掛ける言葉がないし、正直どうでもいいよ。
仲よし子よしのラスレちゃんに傷さえつけなきゃそれでいいから、大人しく黙っていてほしい。
その、2人の護衛に守られたラスレちゃんは、明るい茶色の髪の毛を片手でかきあげているけど、その仕草がなんだか、次の戦闘開始の合図を予感させた。
「先程までのコスタドル様のご様子をつぶさに拝見しましたが、私の知る製作者の性格とは、まさに水と油としか、言い表わすことができないほどに、かけ離れています」
「先程も少しお話しましたが、製作者はかなりの偏屈者です。そのお2人が
「また、近い将来に必ず起きる予測としてですが、私が目を閉じた時に見える幻覚の世界では、2人が直接対立する姿が、鮮明な映像として幻視できていますので、そのような衝突の未来予想を未然に防ぎ確実に回避する為にも、思考を重ね合わせて、この案を考案しました」
貴族令嬢の
だけど、余りにも話の内容が正直すぎて、私の知る貴族令嬢の皮肉の込めた遠い言い回しとは、全然違うから、ちょっとびっくりしたよ。
これってコスタおじちゃんと、私の性格の悪さを暗に指摘して、2人が接触したら全ての計画が水の泡になるから、絶対に接触させないから他の方法で我慢しなさいって、明確にコスタおじちゃんに宣言したように聞こえちゃうけど、いいのかな?
この説明した内容は、どう考えてもコスタおじちゃんの感情を
そんでもって、この言い回しだと、少し大人しくなったコスタおじちゃんが、また真紅の茹で蛸コスタおじちゃんにジョブチェンジしちゃわないかな?
──もしかして、それを狙っているのかな??
このままだと、横柄で横暴で強情なコスタおじちゃんに強引に押し切られそうだから、ラスレちゃんが勝負にでたのかもしんない。
──あっやっぱり、コスタおじちゃんのお顔が、どんどん赤く染まってきた。
──両目も血走っているんですけど....
あっと.....そう言えばさ、オロおじちゃんから言われた事を、今思いだしちゃったよ。
なんでも、魔物のお肉を主食にしてる人は、直ぐにキレて、怒りやすくなるらしいってさ。
その魔物のお肉は、私にとって錬金術の材料でしかなかったから、今まですっぽり抜け落ちてたよ。
御免!御免!ゴメンこさん!
人間は、魔物のお肉を食べるとその魔物の魔力をある程度、消化吸収することができるらしいけど、1日の摂取許容量を超えると、魔物のお肉に含まれる強い毒素に、次第に犯されていくんだって。
怖いね。ぶる..ぶる..ぶるるん。
レベルが高い魔物になる程、そのレベルに応じて、それだけ魔力毒素がどんどん強くなるらしいよ。
レベルが高い魔物のお肉を食べると、身体能力が上がったり、身体レベルも上がりやすくなったり、その魔物の能力を身につくこともあるらしいって聞いたけど、やっぱりそんなに上手い話は転がってないよ。
それが一般常識だから、魔物のお肉は安易に口にしないように、オロおじちゃんに教わったけど、脳筋さんには、難しくて理解できなかったのかな?
もしかしたら、コスタおじちゃんは魔物のお肉を食べすぎて、魔物のお肉に含まれた魔力の毒素に、犯されたんじゃないのかな?
あくまでも可能性の問題だけど、そういう可能性も考慮しよう。そうしとこう。
魔物のお肉を調理して食べる前には、しっかり神殿で数日から数ヶ月聖水につけて浄化するか、神官さんに浄化の聖句を唱えて、しっかり浄化してもらうかしないと、絶対に口にしたら駄目なんだからね。
だけど、コスタおじちゃんは純粋な脳筋さんだから、自分はそんな毒には、屁っちゃらだって言いながらガツガツ食べてる姿が、思い浮かびそう。
──あれっ....あーあっまた、コスタおじちゃんの変身が完了しちゃったよ。
さっきみたいに、第2段階のウネウネ触手の気の
佇まいもブルブル震えていて、装備している使い古した全身魔導鎧もカチャカチャ変な音がして、超気持ち悪いし汗臭そう。
は──ぁ、もうそろそろお互いの
ひ──っ、コスタおじちゃんのお顔が、メチャクチャ怖くて真っ赤なお顔になってるよ。
ふ──、もうさ、何度怒れば気が晴れるんだろうね。こうなったら、ラスレちゃん!──次こそ茹で蛸おじちゃんをへろへろになるような言葉を叩き付けて打ち負かせてよ。
へ──ラスレちゃんは、凄く頭いいんだねって、みんなに褒められるような、最高の言葉の必殺技パンチを見せてちょうだい。
ほ──ら、茹で蛸おじちゃんが襲いかかろうと、お顔を真紅に染めあげて、前に乗り出してしてきたよ。
「すまん!!今すぐ、聞きたい質問があるのだが、いいかね?」
コスタおじちゃんが、
「はい、コスタドル様。質問にお答えしますので、どうぞ、ご遠慮なさらずにお話ください」
対するラスレちゃんは、勇者と従者の2人を前面に配置した
「そうそうに何度も話の腰を折って、すまんな」
震えたくぐもった声で、自分の感情を何とか抑えようとしているコスタおじちゃんだけど、その手は感情の支配下から外れているようで、再び魔導剣の柄を強く握り締めようとしている。
「私も、もう、あまり口を挟まないようにしようと、考えてはいたのだが....流石に先程の発言は、捨て置けなかったのだ」
話の後半になるに連れて、心の防壁が崩れ落ちるように、どんどん声量が上がり、感情の制御が取り外されていく。
その姿も感情の制御が取り外れるにしたがい、表情が蛸の顔色と鬼の
「ラスレ嬢、どんな理由があるかと思っていたら、たかが性格の不一致だと?」
コスタおじちゃんは、
突き刺すような鋭い眼光が、更に目を細め狂気をはらんだ眼光にすげ変わり、その視線でこの場の空気が一変しちゃった....。
そういう風には見えてるけど....。
私の視界には、相変わらず、その威圧にも負けずに、数多くの
超綺麗な光景なんだけど、私には、コスタおじちゃんの迫力が、
まだ、この
勿論、純粋な脳筋さんのコスタおじちゃんも、全く何も感じ取れないから、
「たかが、お互いの性格の不一致ぐらいで、会わせないとは──君は本当に伯爵家のご令嬢なのかね?私は、王国男爵として、数々の戦場の修羅場を潜り抜けてきたのだ。その私に、そのような戯言で煙に巻こうとは──まさに、笑止千万!!そんな、性格の不一致などと言う障害にもなりえず、足枷にすらならない説明で、私の願いを切り捨てるとは、君の提案とやらも、そもそも聞いてあきれるな」
喋り始めると、逆にどんどん怒りが膨らんでいくように、お顔の
「その物言いのような、貴族の
その姿を目の辺りにしているラスレちゃんだけど、怖いもの知らずなのか、蛮勇に駆られたのか、ラスレちゃんの勇者を信頼しているのか、それとも他に何か策があるのかわからないけど、更に火に油を注ぐ発言を繰り返し、コスタおじちゃんを挑発する。
やはり、マジマジな心で、キレキレなコスタおじちゃんとやり合う腹積もりらしい。
「ほ―、先程の私の剣技を見て、それでもなお恐れずに、この私に意見するとは、なかなか勇敢なご令嬢だ。──だが、それで本当にいいのかね?」
コスタおじちゃんは、ウネウネ触手による気の
「──ええ、そのように理解して頂いても構いません」
ラスレちゃんは、強い決意を固めた顔を一瞬覗かせ、固い決意を述べたけど、述べ終わると直ぐに柔らかい笑顔を浮かべ、コスタおじちゃんに笑いかけている。
そのコスタおじちゃんは、激情に駆られたまま、剣の柄に手を添え、じりじりとお互いの距離を詰めようとしてきた。
しかし、コスタおじちゃんに向かい合うように、勇者グランさんが真剣な表情を浮かべ、鞘から剣を抜き放ち立ちはだかる。
「父上!!上位の貴族家に喧嘩を売る行為は、流石に見過ごせません」
グランさんの素敵カッコイイ声が、洞窟内の今居る大広間の空間に響き渡る。
ラスレちゃんのキラキラおめ目が、またまたグランさんに反応してHEART♡HEART♡に変化して、更に今度は、瞬間画像を脳内写真に保存してそうな感じで、ピカピカ光り輝いているよ。
「グランド、その進言は検討違いだ。これは喧嘩では無く、伯爵家のご令嬢と男爵家の御子息に貴族の心構えを教えているだけだ」
2人は、緊張の趣でお互いの間合いを測り合い、戦いが始まる気配が立ち込めたが、その前にラスレちゃんの声が割って入る。
「コスタドル様、私のほうからも、お尋ねしたい質問があるのですが、答えていただけますか?」
さっきは、コスタおじちゃんから、質問を投げ掛けられたけど、「さー次は私の出番よ」と言わんとした真剣な目つきの表情をして、「さー受けてみなさい、お返しよ」と言わんとした、茶色の髪をかきあげる仕草をして、ラスレちゃんから質問を投げ掛けた。
「ほ―まだ立ち向かってくるか?なかなか強情で面白いご令嬢だ。──まあ、いいだろう!!答えてやろうではないか!!」
グランさんに向けていた、強烈な威圧を込めた視線をラスレちゃんに移し、超偉そうで挑発する言葉で返答を返したコスタおじちゃんは、話してる内容と行動の整合性が全くとれていないよ。
自身の身体から沸き続けるウネウネ触手に見える気の
「父上。この行為は、命令違反に抵触します。──くそっラスレシア様、もっとお下がり下さい」
その気の
「──駄目だ。避けられた」
従者セルディさんも遅れ、気の
気の圧力で硬直させ自由を奪う目的なんだろうけど、重なり
しかし、その気の触手は、ラスレちゃんの周囲の近辺までくると、見えない壁に接触してしまい、接触した気の触手は、その場で
次々に気の触手が襲いかかるけど、結果は見ての通りで、見えない障壁を崩す事も消す事も叶わず、気の触手が美味しく障壁に食べられてるように見えてるよ。
気の触手さん達は、頑張ってるけど、全く目的を達成出来てなさそう。
「グラン様、ご心配にはお呼びません。私は大丈夫ですから、そのまま私を見守りください」
簡単に防衛ラインを突破され多少気落ちし、そんな中でも護衛対象者のラスレちゃんを心配そうに見つめていたグランさんに、安心させる言葉を笑顔と一緒に投げ掛けたラスレちゃん。
さっきの光景は、ラスレちゃんに渡してある、もう
ん──ん?この
まぁ──いいや!!気にしない、気にしない。
シフィ姉ちゃんには、
はっきり言うと、コスタおじちゃんクラスの見えない剣筋ぐらいじゃあ、この障壁は破れないからね。
ついでに言うと、幻獣の守護者のこの2人の装備を軽く振り回すだけで、簡単にここの騎士小隊を殲滅できるんだけど。
コスタおじちゃんは、確かに見たこと無いくらい凄い剣捌きだけど、シフィ姉ちゃんの
ぶっちゃけて言うと、コスタおじちゃんは、ラスレちゃんに遊ばれてるんだよ。
ご愁傷様でした。
そして、どう料理するかは、ラスレちゃん次第だけど、ラスレちゃんの野望を叶える為の生贄になるんだろうな。
──多分.....きっと....間違いなく、そうなる予感がしちゃうんだ。
だかどさ、今更ながら、本当に不思議に思うんだけど、なんで、シフィ姉ちゃんやラスレちゃんに過剰とも言える超絶装備を持たせてるのに、なんで、シフィ姉ちゃんがたった1人で、私に助けを求めに来たのか、未だに不思議で
今まで、見ててもそんな予兆は、全く無いのにね。
まあ、いいや。もうしばらく様子をみよう。そうしよう。
そんなラスレちゃんは、自分が直接攻撃されたのを承知の上で、その行為に歯牙にもかけず、まるで他人事のように振る舞いつつ、まだまだ持続中の幸福絶頂の天使の微笑を装備して、茹で蛸魔王に勝負を挑もうとしてる。
「ありがとうございます。それではお尋ねしますが、コスタドル様は今この場においても、普通に高圧的な手法を用いられていますが、その高圧的な手法で、全ての望みが解決できると、本当にそうお思いになっているのですか?」
明確にコスタおじちゃんとやり合うつもりのラスレちゃんは、貴族なら誰もが
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