第16話 お詫び

 昼休みになり俺は約束していた通り武宮さんとタイミング良く教室に俺が来ているのかを確認しにきた慎也と共に各々の昼食を持って中庭に移動した。

 

 約束通り俺は昨日の事の顛末を話した。と言っても、俺とみゆが一緒に住んでいることは言えないので俺が1人暮らしをしているという設定で話したので、俺が修学旅行やその費用に関してばあちゃんとの約束があると意固地になっていた事がきっかけで喧嘩になってしまったという感じの話となる。


「「はぁ.......これだから黒嶋くん(和哉)は.......」」


「うぐ.......」


「確かに約束を守ろうとした黒嶋くんも立派ではあるよ? あるんだけどさぁ、もう少しみゆちゃんの気持ちも考えてあげなよ」


「そうだぞ和哉。優先順位を間違えるなよ」


「返す言葉もございません.......」


 これはあれだな。自分でも全く同じことを思ったし、反省したが他人に直接言われると結構くるものがあるな.......。ばあちゃんに言われる分にはお説教というかこう、何か諭されているような感じもするんだが、友人やクラスメイトに言われるとなんとも言えない気持ちになってしまう。


「けどまぁ、仲直りしたんだったら私はもう何も言うことはないかな」


「俺もだ。けどな、今後また困ったことがあればどんな些細な事でもいいから相談してくれよな。お前は何でも1人で背負い込むからな」


「そうだね。友達なんだし何でも相談してよね」


 みゆといいこの2人といい俺は本当に周りの人達には恵まれているらしい。本当に俺なんかにはもったいないと思う人達だ。けどさ、


「武宮さん.......俺達って友達だったの?」


「ひどい!?」


「和哉.......それは俺も分からん.......」


「だろ?」


「だろ? じゃないよ! あと、加賀くんは私の味方だと思ってたのに!!」


 確かに武宮さんとは学校にいても話すことはまぁまぁある。けど、それはみゆが基本的に俺の傍にいるから武宮さんもみゆがお目当てで、あくまで俺はその場にいるからついでに一緒に話していると思っていた。どうやら俺の扱いは自分で思っていたよりも悪いものではなかったらしい。


「まっ、そんなことはおいておいて」


「まさかのそんなことで済まされちゃうの!?」


「早速なんだが2人に相談がある」


「「相談?」」


「あぁ」


 今から俺が言おうとしていることは俺が数時間かけても答えが見つからない問題であった。昨日寝る前にみゆのことを意識してしまい全く眠ることが出来なかった間に気を紛らわすという意味も込めてずっと考えていたのだが、思いつかずに今日の午前の授業中も考えても何も思いつかなかった問題。それは、



「.......みゆに今回の事でお詫びしたいんだが何をすればいいと思う?」


「「.........................」」


 .......やはりこの2人をもってしてもこの問題の答えはすぐには思いつかないのか。そりゃ、そうだ。そうでなければ俺は何時間も悩むなんてことはなかったはずなのだから。


「......それでみゆちゃんを教室に置いてきたのね」


 教室に置いてきただなんて人聞きの悪い言い方をしないで欲しい。当然のことだがみゆは俺達に着いてこようとしていたが、そんなみゆのことをチラチラと見て話したそうにしている人達がいたから俺はみゆとその人達を話させてあげようと思ってみゆを教室に残して来たのだ。もちろん話したそうにしている人達というのは全員女子だ。話したそうにしていたのが男子なら俺は無視していただろう。


「なぁ、和哉。お詫びってお前は白夢さんに何がしたいんだ?」


「それが分からないから相談しているんだろ馬鹿なのか?」


「誰が馬鹿だ! 誰が! そうじゃなくでだな! なんて言うか.......」


「要するに黒嶋くんはみゆちゃんに喜んでもらえるようなことがしたいってことだよね?」


「それだ!」


 うーん.......俺はみゆに喜んで欲しいのか? そもそも、お詫びっていうのは自分が悪いことをしたと思うから償うという行為だよな? そう考えるなら自分に罰を与えるのがいいようにも思えるけどお詫びとは自分を追い込むようなことなんて聞いたこともないし。


「なぁ、お詫びってなんのためにするんだ?」


「元も子もない事聞いてきやがったな.......」


「お詫びかぁ。これは私なりの考えだけどお詫びっていうのも仲直りの延長線じゃないのかな? これからもずっと仲良くしてくださいっていう。だから、ご飯に連れて行ってあげたり遊びに連れて行ったりするんじゃないかな?」


 確かに武宮さんの言う通りかもしれない。お詫びで何かを相手にしてあげるというのは自分といたらこれからもいい事がありますよ。だから、これからも私と仲良くしてくださいっていうことなのかもしれない。.......そう考えるとなんだか営業みたいだな。メリットを相手に主張することで良き関係を気付いていこうというところとかそっくりだ。けどまぁ、どんな形であれみゆが喜んでくれるならそれが1番いいような気がする。


「それなら俺はみゆに喜んでもらえるようなことがしたい」


「それなら簡単じゃん?」


「だな」


「え?」


「相手はみゆちゃんだよ?」


「和哉もまだまだ白夢さんのことを分かってねぇな」


「「黒嶋くん(お前)のしてくれることなら、何でも喜んでくれるに決まってるでしょ(だろ)」」


「!?」


 いや、さすがにそんなことは.......って言いたかったけどみゆだもんな.......。確かにみゆなら2人と言う通り俺が何をしても喜んでくれる気がする。それなら、俺の考えることは俺がみゆに何をしてあげたいのか、みゆとどこに行きたいのかってことだよな。


「それなら.......嘘を本当のことにしようと思う」


「「?」」

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