第3話 笑い声
取材させてくれませんか? 俺とみゆのことを? この人は何を言っているのだろうか?
みゆのことを取材するのは分かる。女優やモデルさんを取材するのと同じ感じだろうから。みゆは学年どころか学校内において1、2位を争うであろう可愛さであったが、今まではみゆが完全に他人を拒絶していたので話しかけにくいものがあった。しかし、最近はそういった態度も減っていき誰でも話しかけやすくはなった.......あれ? いい事のはずなのに悲しくもある? 今までは俺だけだったのがそうじゃなくなったことになるからか? .......俺ってここまで独占欲が強かったのか.......。
「はぁ.......俺って器が小さい人間だったんだな.......」
「どうして取材を申し込んだだけでそうなるんですか!?」
「本当にどうしたの和哉くん?」
「いやぁ、みゆが人気者になってしまうって考えると.......」
「考えると?」
うーん.......ここから先は自分では何となく恥ずかしくて言いたくないから察して欲しいんだけど.......。
「いや、だから、その.......」
「あぁ、自分だけの彼女さんだったのが周りからも注目浴びるのが嫌だってことですか?」
「ま、まぁ.......」
なんで武宮さんが察しちゃってるんだよっていう気持ちも無くはないけど俺の代わりに言ってくれたのは助かりもした。けど、これはこれで恥ずかしいものがあるな.......。
「.............」
「.......みゆさん?」
なんか、口をポカンとあけたまま固まってしまっている。呆れられているのだろうか? いやまぁ、呆れられても仕方ないよな.......。そんなことを思っていると、
「ふふ。あははは」
「!?」
「和哉くん可愛すぎるよ」
「.............」
「大丈夫だよ。私は和哉くんだけのものだからね」
この発言にも驚くほど嬉しいものがあったんだけどそんなことよりも.......
「.......みゆが笑った」
「和哉くん私のことなんだと思ってるの? そりゃ、私だって笑うことはあるよ」
「いやだって、みゆが思いっきり声を出して笑ってるのを見たの俺初めてだし.......」
そう。あのみゆが声を上げて笑ったのだ。みゆとはかれこれ半年くらい一緒に過ごして来たがあんなに笑ったみゆを見たのは初めてのことであったのだ。
「そうだっけ?」
「あぁ.......なんか嬉しいよ」
「私が笑ったのが?」
「うん。笑えるってことは今が幸せってことだからだろ?」
「!? そうだね.......これも和哉くんのおかげだね」
今のみゆを半年前のあの今にも死にそうなみゆに見せたらどう言った反応をするのだろうか? これが半年後の君だよって言っても絶対に信じてくれないであろうくらいには今のみゆは輝いて見えた。
「あの〜そろそろいいですか?」
「「?」」
「ここ一応教室なんでみんないるんだけど?」
「あたりまえだろ?」
「あっ、もう何言ってもわかってくれないやつですね」
「武宮さんは何を言っているの?」
「彼女さんもそういう反応になるんですね.......えぇ、分かりました。もう何も言いません.......」
武宮は本当に何を言っているのだろうか? 俺とみゆはただ話していただけだというのに。俺とみゆは教室で話しちゃいけないのか? この間も慎也が似たようなことを言ってた気がするし? そんなことを考えながら俺とみゆは自分の席に戻って行こうとしたのだが、
「何ナチュラルに席に戻ろうとしてるんですか!」
「「?」」
「取材のこと完全に忘れてますよね!!」
「あぁ、そういえばそんな話だったな」
「すっかり忘れてた.......」
「このバカップルめ!!」
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