The Math Book
Wam
海辺の向こうの先生
海辺に私はいた。
ずっと昔からの幼なじみと一緒に。
海なんて言った記憶がろくにないのだけれど。
幼なじみと何気なく海を見る。
あのグレートバリアリーフの様な青い海では
決してないけれど緑かかった綺麗な海だ。
綺麗だねって幼なじみが言っている。
いつもだったら
「うん、そうだね。」
って相槌を打っていた。
でも私は海辺の向こうをずっと見つめていた。
何もないはずの海の向こう。
でも、そこには私の大好きがいたの。
私の大切な人。
決して忘れることができない人。
いや、忘れてはいけない人。
あの人はあのくしゃくしゃな笑顔を私に向けた。
あの少し少年の面影がかかった笑顔。
私はその笑顔に釘付けにされた。
彼はずっと笑っていた。
気がついたら幼なじみがいない。
きっとそっけない態度をとった私に呆れたのだろう。
でも、そんなことはもうどうでもいいんだ。
あの人が私に向かって笑ってくれた。
それでもういいの。
記憶は定かではないけれど、
確かあの人はこんなことを叫んでいたと思う。
「なんでそんなに俺のこと見るんだよ。」
ゆっくりと私の気が遠くなっていって
遂には何も見えなくなった。
私は重くなったまぶたを押し上げた。
私を見下ろす白い天井。
ここでようやく私は夢の世界から帰ってきたのだと悟った。
今のは全部夢か。
なんだ。でも、まあそりゃそうだよな。
あの人が私になんか会いに来てくれる訳ないもん。
なんでかって?
それは私はもう日本にはいないから。
あの人のことで頭の中が支配されようが狂わされようが
私はあの人に愛されることは限りなくゼロに近い。
いやむしろ私はあの人のことを好きなることは決していけないことだった。
なんでかって?
それはあの人は私の先生だったから。
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