第6話 ルーブルシア王国での最後の仕事
途中で国王、王太子、エミリーと一緒になる。
エミリーは、王族の女性として正装をしていた。
私は、王族の方々の一歩後ろから付いて歩いている。
各国の国王が、王妃を送ってきている。私の時は王太子は一切来なかったのに、エミリーをエスコートしてゲストルームの扉の前まで来ていた。
丁度、大国アイストルスト王国の女王陛下が年若い王配を連れて来たところだった。
女性ばかりのお部屋に、一人男性が入ることになる。女王陛下は少し心配そうにしていた。
「キャ~。可愛い。男の子もいるんですね」
そう言ってはしゃいだのは、聖女であるエミリーだった。
ゲストルームの扉は開いている。中の王妃様たちが怪訝そうにこちらを見ていた。
「私の夫に気軽に触らないでもらえないかな」
そう言って女王はエミリーの手をはたく。
「え~、こわ~い。ウイリアムさまぁ~」
私が苦言を呈した時と同じ態度をエミリーは取っていた。
王太子は真っ青になって
「申し訳ございません」
と、平謝りをしている。
当たり前だ、大国の女王陛下の機嫌を損ねたら、聖女の召喚が出来るだけの我が国など、ひとたまりもない。
「え~、なんであやまるのぉ~。このおばさん、知らないんじゃない? 私、聖女なんだけどぉ~。この世界に必要な存在だよ」
その言葉を無視して、王太子は平謝りしていた。
私はフォローする気も失せて、扉の外から皆様方に礼を執る。
そして、もと来た道を戻ろうと思って歩き出した。
「ちょっと、何帰ろうとしているのよ。一緒に部屋に入んなさいよ」
そう言うエミリーに対して私は
「わたくしは、この部屋に入る資格がございません。この部屋に入れるのは、国王陛下、王太子殿下の配偶者のみでございます」
そう言って礼を執った。
王妃はさっさと部屋に入っている、我が国の国王陛下もこの騒ぎが起きる前に会議室に行ってしまっていた。
「ウイリアム~。一緒に入ってぇ~。何か怖そうなおばさんばかりだよぅ~」
王太子は、エミリーにそう言われて少しなら……と足を踏み入れようとした。
「ウイリアム殿。そこの部屋には、わたしとて入れぬのだ。各国の国王が守っている規則を、そなた破る気か?」
女王から言われて、王太子はビクッとなり
「じ……じゃぁ、エミリー。頑張って」
と言ってエミリーを部屋に押し込んでしまった。
「ルーブルシア王国の王太子妃になるのは、そなただと思っていたが」
少し歩いたところで、女王が私に言ってきた。
「彼女は、聖女に意地悪をする性悪なところがありまして、王族にふさわしくないと思い切り捨てました」
言い淀んでいた私の代わりに王太子が答える。
「そう……か。そなた、確かマーガレットとか申したな」
「はい。覚えていただき光栄に存じます」
私は恐縮して立ち止まって礼を執った。
「この国は居づらいだろう。もし国外に出ることあらば、私の国に、来ればよい」
そう言って、自分の首からネックレスの一つを外す。
「これが通行証代わりになる」
「ありがとうございます」
ネックレスを首に掛けられた後、私はもう動かず。礼を執り続けた。
ここから先は、国王や王太子しか入れないエリア。
ルーブルシア王国での、私の王族としての役割はこうして終わったのである。
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