第29話 紙芝居
聖騎士の指揮官は馬鹿なのかな最近そう思い始めてきた。
なぜかというと戦いが各個撃破になっている。
一度に対処しきれないぐらいの手数と物量を用意すればいいのにと思わないでもない。
今日の炊き出しはどうかな。
やっぱりきたか。
でも人数がかなり少ない。
五人しかいない。
精鋭部隊という事か。
炊き出しは撤収に掛かる。
俺は戦いを見物する群集に
今までは戦いの時に見える範囲には人がいなかったが、今日は遠巻きにしている。
今までの戦いを群集はどこかで見ていたのだろう。
それで見世物として味を占めたという訳だ。
「先生、やって下さい」
「強固なる結界を【バリヤ】」
結界師を連れてきたか。
「風の刃よ目標を切り裂け【ウィンドカッター】」
ヒュンと音がしてチンピラ神官の腕が飛んだ。
結界の中からは攻撃し放題かよ。
ずるい能力だな。
「うがぁ。どたまに来た」
チンピラ神官よ、言葉が素に戻っているぞ。
チンピラ神官が無事な方の手で結界を殴る。
そして、蹴り蹴り蹴り。
止めは頭突きだ。
パリーンと音がして、結界が砕け散った。
チャンスだ。
黒い霧が五人を包む。
悲鳴を上げ五人は
なるほど、結界魔法は物理と魔法をある程度しか防げないって事か。
無敵じゃないと思っていたが、こんな弱点があるのか。
チンピラ神官はアンデッドだから、生前の記憶に動かされている。
チンピラとしての記憶が素手での特攻を命じたのだろう。
チンピラ神官は持たせてある血を飲んだ。
おいおい、衆人の前では飲むなと言っておいたはずだが。
手が予想通り生えてくる。
俺はチンピラ神官の近くに寄った。
「神官様、大丈夫ですか」
「みなの者、落ち着きなさい。ほらこの通りなんともありません」
「神官様、さっきの薬は」
「あれは貧者の
うぁ、しれっと嘘をつきやがった。
マンドラゴラを細かく切り刻めばジュースにできるけどもさ。
家電もなしにやるなんて勘弁してほしい。
魔法でできる奴を連れてきてから発言して欲しい物だ。
俺がチンピラ神官を
「あれは本部が極秘に開発した物です。なんでも奇跡の一本だとか」
「そんな事が。私は貧者の
信者の一人がそう言ったので、俺はこいつにやらせようと考えた。
なんなら貧者の
俺が
「その時はお願いします。さあ、みなさん引き上げますよ」
おい、腕を忘れているぞ。
しょうがない奴だな。
俺は腕を拾うと見えない所で魔法を解除した。
腐った肉になる腕。
後はほっとけばカラスが後片付けしてくれるだろう。
現場に戻ると信者がまだ居たのでその人の後をついて行く。
隠れ家に到着した。
例によって踏み絵してから中に入る。
今日は紙芝居を前もってチンピラ神官に渡してあった。
先遣隊の中に絵描きがいたので描いてもらったのだ。
紙芝居が始まる。
「昔、ある所に心根の優しい影魔法使いの少女がおりました」
板には村の背景に少女が描かれていた。
「ある日、街で魔法を使うと敬謙なシュプザム教徒が現れこう言いました」
めくった板には街で影魔法で遊ぶ少女の姿。
「有り金の全て寄付しろ。お前は差別職だろう」
めくった板には少女を脅す絵。
「そんなご無体な」
「そこへ颯爽と現れる魔獣使いの男」
めくった板には狼の魔獣の絵と旅の男の姿。
「お嬢さんここは私に任せて」
「狼の魔獣がシュプザム教徒を威嚇します」
めくった板には
「聖騎士様ぁ。禁忌持ちが出て参りました。ぶっ殺して下さい」
めくった板には聖騎士。
「一刀のもとに切り捨てられる男と魔獣」
めくった板には切り捨てられる男。
「その時、ローブ姿の男が現れ良いました」
めくった板にはローブの男が
「人助けなんてするから」
「その時、光が天より指し込み。殺された男がむっくりと起き上がりました」
めくった板には天から光が差し込む絵がある。
「アンデッドになったのです」
「男は聖騎士とシュプザム教徒をやっつけて少女と仲良くくらしましたとさ。おしまいです」
めくった板には戦闘する男と聖騎士。
更にめくると少女と手を取り合う男の姿。
紙芝居は終わった。
うん、駄作だ。
一介の農家に傑作など書けるものか。
「みなさんどう思いましたか」
問い掛けるチンピラ神官。
「確かにシュプザム教会は強欲だ」
「禁忌持ちは問答無用で殺すよな」
「心根の良い人は救われるという事ですか」
「そうです。神は平等です。禁忌持ちでも良い行いをすれば助けが現れます。逆に良い職持ちだといっても、悪行はいつかは身を滅ぼします」
どうやら、心を打つものでは無かったようだ。
後で紙芝居を作る人間を見つけないと。
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