虚偽戦争
師走 葉月
プロローグ『戦争』
「戦争を仕掛けようと思う」
第1回国家戦争対策議案会議は俺のこの言葉で静かにゴングを鳴らした。
孤児院出身の大貴族であり、若干15歳最年少にして最高指揮官に任命されたイレギュラーすぎる男のさらなるイレギュラー発言に皆困惑する。
「ラムエア様発言をよろしいでしょうか」
ここは王国の未来を左右する議会であり当然発言には許可が必要でトップである俺ーラムエアに許可を取ってきたのた。
「あぁ言ってくれ」
「恐れながら申し上げますが今王国は衰退の一途を辿っております。そんな中更に戦争なんてやったら王国が滅んでしまいます!どうかお考え直しを」
貴族の男の発言は多くの貴族に共感され頷く。
「それも大事や意見だな。それで宣言しよう。ここでの発言は今日に限り許可を求めなくていい。王国を左右する話だ。言いたいことがある人は好きに言って欲しい」
その発言に1人の貴族が「では失礼致します。ラムエア様の考えには私は賛成です。これまでの功績から考えてもただ闇雲にやるだけではないとお察しします。ですが、そのやり方を先にお教え頂きたい。それが分からない限り善し悪しが付かないのが事実です。私からは以上です」
「そうだな。では今考えている作戦を話そう。この戦争は同時に3カ国堕とす。その予定ー」
「ふざけるな!」
1人の貴族が割って入り怒鳴る。
「失礼致しました。私としたことが感情のままに。ですがその作戦はあまりにも無謀すぎる!」
「まあ最後まで聞いて発言をして欲しい」
「……分かりました」
「では続きを。先程言われたように3カ国同時に攻めたところで勝てる確率は0だ。だがその確率を一気あげる方法がある。それは3カ国だけに戦わせればいい。勿論やり方も考えている。クライン王国とルーデル王国は同盟状態にあり、その貿易敵国であるバンズ王国を戦わせる。最初はクライン王国とバンズ王国の争いになるだろう。そこに同盟国であるルーデル王国に助けを求めるのは必然。そこにだ!そこに薬としてどんな方法でも体内に入れば一溜りもなく狂って行くナンシを混ぜ込む。今俺の仲間である奴が3カ国に潜伏している。そいつらに転移魔法で薬を送り内部を全て破壊し何も機能しなくなった所をぶっ殺しに行く」
貴族たちは皆神妙な顔つきになる。
「ですが!その敵国に潜伏している3人は信用出来る方なのでしょうか。もしも裏切られたら……。」
「この前の浮気されたことを引きずり議会にまで出すな!」
「それとこれとは全く別だ!」
領地問題で対立する貴族同士で争い始めた。
「浮気は可哀想だな……。だが今回は安心して欲しい。この3人が裏切ることは100ありえない私の命で保証しよう」
「わかりました。では裏切りはないと信じましょう。ですがそんなに上手くいくのでしょうか。このシナリオは上手くできすぎている」
「問題ない。私の持つ秘密魔導隊も影の仕事になるだろうが出させる。だから敗北はありえない」
「な、なら安心じゃないのか!?あの秘密魔導隊がでるんだぞ!?」
「確かにそうかもしれない」
秘密魔導隊ー基本は表に出ず影で動いている。魔法、剣術全てが神の領域と言われておりこの国が衰退で止まり崩壊しなかったのはこの存在が大きい。
メンバーは5人そしてそのリーダーとなるのがラムエアだ。
1人で普通の兵士1万人分の戦力があると言われその力は各国でも厳重警戒される程だ。
そんな国の英雄であり頼もしい存在である秘密魔導隊の存在は貴族たちの心を動かせる程だ。
「納得して貰えただろうか」
貴族同士で顔を合わせているが反論は出てこない。
「では3ヶ月後開戦を予定している。そのための出資、兵士の準備を進めるように。ただし孤児院から徴兵したやつはこの俺自ら首を飛ばすと思え」
「はっ!」
「ではこれで国家戦争対策議案会議を終わりとする」
……………………………………………………
会議を終え、自室の扉を開くとメイドであり元秘密魔導隊のメンバーである『イブ』が出迎える。イブと共に戦った事はなくイブの引退と共に入れ替わるようにリーダーに着いたのがラムエアだ。
流石に言われた時は驚いた。イブは大陸に名を広げた世界最高の魔導師だ。
ちょっとしたミスで力の大半を失い秘密魔導隊を辞めその時助けた俺に対する恩を返す為にメイドを買って出た。
そしてその空白となったリーダーに俺を任命した訳だが俺には魔法の才能は……。
「(こんなことより今は戦争だ)」
昔を思い出していた思考を切り捨てる。
「お帰りなさいませラムエア様」
「そんな仰々しいのは辞めてくれませんか?出会って3年以上経ちますしイブさんの方が年上なんですから」
「女の人に年齢のことを言うのは失礼ってものですよ。年齢は上でも立場はラムエア様の方が上なのですからそれに私は今メイドとしてラムエア様に仕えている人間なので当然では無いでしょうか?」
「まぁまぁ確かにぐうの音出ない正論ではあるけど、せめてそれは他の貴族とかそう言ったお偉いさんが見ている時だけに勘弁」
「はぁ。仕方ないですね」
彼女はため息を付きながらも、敬語をやめてくれた。
「あ、そうだ。忘れていましたがクイン様達から来てくれって言われてまして」
「なんでそれを言わない……」
「すいません」
イブが1つ謝罪する。
「まあいい。こっちに来い」
「はい」
「なぜ顔を赤くしている!」
「ラムエア様って昼間から誘うなんて大胆ですねさすが男の子です」
「男の子だけどこんな昼間から誘わないし、今は急ぎだ」
正直イブのこういったところはしんどいが自分がモテてると勘違いできるので正直嫌いじゃないな……。
「ほら掴まれ」
手を差し出しイブはそれを握る。
「白魔ムーブディスメント」
転移魔法を使い、クインの元へ一瞬で行く。
「クインおまたせ。そしてみんなも……は?」
目の前には無数の死体が転がっている。
「オェ」
見慣れたものだが、みんなでお茶でも飲むもんだと思って気楽に来ていたぶん反動が大きい。
目の前に広がる無数の敵兵。支援魔法を受けた形跡もあり普通じゃなくてもかなりピンチな状況だ。
「こいつら影を消せる奴が居るのか……。<黒魔改ジブシールド>」
状況的にイブは動けないと判断したラムエアは防御魔法を使う。
「クイン!何やってるんだ!」
いつの間にか更に前線で魔法をぶっぱなしてるクインを見つけ一気に駆け寄る。
「何って見ての通りよ!戦ってるの!」
「相手の数とか把握してるのか」
「ざっと5万」
「こっちの他の3人は他の国に行かせてたはずだ1対5万なんてお前なら無理って分かるだろ!?なんで……」
「ちょっとしくじって『神書』の1部をコピーされちゃってね。それを取り返す為に戦ってる」
「だからと言っても……」
「いっひひ。私もいるだよ?余裕に決まってるじゃーん。雑魚なんて<死んじゃえ>」
手短な挨拶のようなことをいいその瞬間大気が揺れる程の爆発があちこちで起きていく。空には爆発に巻き込まれた敵兵が吹っ飛んで行く。腕がないもの。足が無いもの。首から上が無いもの。空にはその威力を物語るのに充分な証拠があり赤く染った。
「なんだ……サーシャも来てたのか」
その安定感のある威力に安心感に浸る。
「(これなら5万人だろうと余裕だな。もう敵兵は半壊状態にあるし ……。面倒臭いのは影を消すことが出来る魔法使い位だな」
「サーシャ!サーシャは引き続き魔法をぶっぱなして置いてくれ。ただ捕虜は必要だ。全滅させない程度に殺せ」
「<リョーかいっ>」
「クインはイブとサーシャの援護を頼む!俺はボスであろうやつをを捕まえてくる」
「わかっ!ラム!後ろ!うしろ!」
「…………」
その瞬間俺の首は宙を舞った。
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