映らない僕

ずっとずっと不思議だったんだ

僕は鏡に映らないようだ

透明人間でもないのに

全く映らない

だから僕は自分の顔を知らない

楽しそうだね

嬉しそうだね

悲しそうだね

みんなが教えてくれるから

僕はどんな顔してるのかが分かる

だけどそのほとんどが

間違っている


僕はどんな顔してるか

自分では分からない

頭を叩かれた

嬉しそうだね

そう言われてまた叩かれた

幸せそうだね

嫌だやめて欲しい

心の中は僕以外分からない

皆は僕の顔が分かるのに

皆は僕の心を分かってくれない

僕の心は僕自身にしか

写らない


どこを見ても僕の顔は映らない

僕だって伝えたい

心の中を移したい

でも自分がどんな顔してるかなんて

自分で分からないんだから

どうすれば映せる?

悔しくて

辛くて

悲しくて

涙が流れたことは分かったんだ

感触はあるんだ


大丈夫?悲しいの?


僕は振り返った

そこにあったのは

涙を流す初めて見た

僕の顔

君には伝わったんだ

だから君には僕が映るんだ

その人は僕のこと

理解してくれた

受け入れてくれた

僕の心を写してくれた


それから僕はその人に会う度

心を移すことが出来たんだ


鏡には未だ映すことはできないけれど

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