出会いと旅立ち
気づいた時、レッドはゴツマにいた。心配したホージロが助けに来てくれたのだ。宿屋のベッドの上でレッドは体を起こした。
「大丈夫?」
目が覚めたレッドにホージロが声をかける。
「ああ。シャクーとスケリドは?」
「あの子はまだ小さいから。スケリド様はあんな姿だし」
「そうか、じゃあ君が」
「あなた強そうだけど、流石にサンガオー相手じゃ心配だし。このおじさんからあなたの場所を聞いたの」
ホージロの目線の先にはヘリコプターを売ってくれた武器商人がいた。レッドは二人の顔を見て言った。
「安心してほしい、サンガオーはもういない」
その言葉にホージロと商人は驚いた顔をした。
「あなた、本当に強いのね」
「す、すげえ……」
「すまない親父さん、ヘリコプターを壊しちまった」
「気にするな、あのヘリはあんたに売ったんだ。あれはあんたのものだよ」
「そうだったな」
「こうしちゃいられねえ。ゴツマのみんなにも伝えなくちゃ」
商人はそういうと急いで部屋を出て行った。
「僕ももう行かなきゃ」
「え? まだ傷が治ってないんじゃない?」
レッドは驚くホージロに背中の傷を見せる。深く抉られていたはずの背中がすでに形を取り戻しつつある。
「不思議なことに僕は昔から傷が治るのが早い。一日も休めば大抵の傷は治ってしまう」
「なにそれ? 特異体質なのかしら」
「わからない。ロボットでも魔法使いでも、ここまで回復が早い者はいない。軍に入るついでにダゴヤで有名なお医者さんに診てもらおうかと思ってる」
「行くのね。ダゴヤに」
「ああ」
「私も、付いていってもいい?」
「共存軍に入るのか?」
「うん。私も確かめたいことがあるの。自分の出自について」
「出自?」
「シャクーは本当の妹じゃないの。スケリド様も本当の叔父さんじゃない。私は小さいとき、この村の樹海で見つかったらしい。それで死んじゃったお父さんたちに育てられた」
ホージロは自分の白いショートカットの髪を撫でながら続けた。
「この白い髪だって地毛。私がどこから来て、どこへ向かうべきなのか。共存軍で戦いながら見つけたい」
「そうだったのか。ところでホージロ、君はまだ成人していないみたいだけど入隊検査は受かるのか?」
「スケリド様には黙ってたけど、私ロボットなの。レッドって成人したばかりでしょ? 私のほうが年上だから」
「え? 嘘だろおお。この見た目でロボット?! しかも年上?!」
街で見かけるロボットたちはゴツマの武器商人のように一目でロボットだと分かる風貌をしている。しかしホージロはどう見ても十代の美少女にしか見えない。どうりでやけに落ち着いているわけだ。
「どういう意味? なにか期待してた?」
ホージロはレッドを青い瞳で見つめる。
「んなわけないだろ」
レッドは顔を赤くして目を逸らした。
「それに入隊したら同期になるんだ。年は関係ない」
「まあそうね。よろしくねレッド」
「こちらこそよろしくな。ホージロ」
生きる答えを探している二人の剣士は、こうして出会った。
☆☆☆
――ヒュー、ドドーン
その夜、サンガオーから解放されたゴツマの空に花火が上がった。武器商人は花火を見上げ喜びと幸せを噛み締めた。魔法使いの国の人々は酒を飲み、宴を開いた。だがその中心に勝利の主役はいない。レッドとホージロはすでにダゴヤへ向けて旅立った。
スケリドとシャクーは宴の輪に入ることなく、遠くから祝祭を見つめていた。
「本当に行ってしまった」
「ねえ、お姉ちゃんまた帰ってくる?」
シャクーの問いかけにスケリドは爪を立てないように優しく彼女を抱きしめた。
「ああ、もちろんだとも。それまでふたりで頑張ろうな」
しかしスケリドにはホージロがもう二度と故郷へ帰れないと分かっていた。ホージロの剣術と能力はどの剣士をも凌駕している。そのことを知っていたからだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます