Gamedec - Definitive Edition

 "Gamedec - Definitive Edition"は、ポーランドの作家の同名作品を基にした、TRPG風アドベンチャーゲーム。神経接続タイプのMMORPGの中で捜査を行う私立探偵「ゲームデック」となって、一連の事件を捜査する。


 ゲームシステムは見下ろし型視点の、よくあるMMORPGっぽいものとなっている。

 会話や行動によってスキルポイントが貯まり、それを消費して専門能力を獲得することができる。専門能力が多いほど各行動や会話で選択肢が増える。


 聞き込みなどの捜査によって手掛かりを集めることで、それを基に推理を組み立てられるようになるのが特徴。推理は選択式だが、一定の証拠が集まらないと選択肢がアンロックされない。たとえば、ある人物が犯人であることを匂わせるような手掛かりをいくらか掴むことで、その人物が犯人だとする選択肢はアンロックされ、選べるようになる、ということ。


 推理によって決定した選択肢は、次の行動に反映される。たとえばAが怪しいという推理をした場合、Aの足跡を追うことになり、Bは放置することになる。途中でAを追ったのは失敗だったなあとプレイヤーが思っても、一度決定した推理は変えることができない。

 このシステム自体は悪くなく、本格的な推理ゲームをしている気分になれる。


 問題は、シナリオがこのシステムを活かせておらず、推理がほとんど意味のないものになっていること。

 というのは、正しい推理をしようが、間違っていようが、大してシナリオに違いがないのである。先ほどの例で言うと、Aを追ってもBを追っても、結局同じ結末に辿り着く。途中でちょっと分岐するだけで、結末に大きな影響を与えない。


 それよりも本作で重要なのは、普通の選択肢の方。捜査の過程で誰と協力するか、あるいは敵対するか。依頼を途中で放棄するか否か。依頼人を裏切って犯人側に付くか、犯人をその場で射殺するか、あるいは警察に突き出すか。そういった、推理とは関係のない決断の方がシナリオに影響を与える。


 結局、プレイヤーの役割である「ゲームデック」というのはただのお飾りで、本質的には私立探偵らしいことをあまりやっていない。

 というわけで、謎解きゲー、推理ゲー、探偵ゲーを期待する人は本作はプレイしない方がいい。



 本作の特徴はMMORPGの世界に潜入捜査するというもので、スラム街の暴力ゲー、西部劇風の世界で農業を営むゲーム、中国風の世界で採集クラフトするゲームに潜入できる。

 このアイデアは聞くと面白そうだが、やってみると案外しょうもない。肝心の各ゲームのデキの底が浅く、つまらないのである。この世界の人達は、なんでこんなクソゲーを熱狂的に遊んでいるんだろうと思ってしまう。


 そう感じさせる原因のひとつは、本作が見下ろし式の古くさい視点だからだろう。

 本作のゲームは、脳と神経接続してリアルな体験ができるタイプのもの、という設定になっている。だったら、VR対応とはいかずとも、せめて一人称視点だったら、この世界のゲームの体験に近いものが得られたかもしれない。ゲーム自体がクソでも雰囲気さえ良ければ、様々なゲーム世界に潜入調査するという雰囲気は味わえたかもしれない。しかし実際には古典的な見下ろし視点だから、プレイヤーとしてはどうしても「何十年前のMMORPGなんだ、これ」という印象しか受けないのである。未来感がちっともない。

 それが無理なら、せめてミニゲームとして遊んでもそこそこ面白い程度のものを用意するべきだっただろう。



 総評は、コンセプトは面白いが、シナリオで台無しになったゲーム、といった印象。ストーリーが一本道なのは、原作付きのゲームだから、あまり原作からかけ離れたシナリオにはできなかったせいかもしない。しかし、それならそれでやりようはあったと思う。『マトリックス』みたいな大風呂敷を広げたシナリオにしないで、もっと小規模な探偵ゲームにすれば良かっただけである。



 以下はネタバレあり。



 本作は、最初の2件は私立探偵らしく、依頼を受けて捜査する、という内容になっている。


 最初は大企業の息子が、ゲームにログインしたまま戻ってこないからなんとかしろ、というもの。息子自体は「カウチ」と呼ばれるゲームと神経接続する装置に繋がって寝ているのだが、何日もそのまま、という状態。

 同じ部屋には、同じくログインしたままの女性と、ログアウトした息子の友達がいる。


 この女性や友達にうまく聞き込みをすることで、息子がどのゲームにログインしているのかなどの情報が聞き出せる。いかにも探偵らしくて一見面白い。


 が、後々わかることだが、この聞き込みは失敗しても何も問題ない。失敗すると間違ったゲームにログインすることになるが、そのゲームには来ていないことが判明して、結局すぐに本命のゲームにたどり着くことになる。

 このゲームの探偵業はだいたいこんな感じで、調査や推理が雑で間違っていても、ストーリーにあまり影響がない。そのことに気付いてしまうと一気にしょうもなくなる。実は別に真面目に探偵する必要なんてないし、真面目に探偵しても報われないのである。それでいいのかよ。探偵ゲームなのに。



 とはいえ、最初の2件の依頼は、雰囲気的には探偵らしさを味わえるし、この時点では「プレイヤーの推理は実はほとんど意味がない」ことも知らないので、それはそれでそこそこ楽しめる。問題はこの後。


 2件の依頼をこなすと、その2件で手助けしてくれたケンという人物の仕事を手助けすることになる。「知識の木」とかいうのを探しているホン(本)クランというのがあって、そこを調査するとかなんとか。


 というわけでケンと待ち合わせするのだが、待ち合わせ場所でケンは死体となって発見される。そこでプレイヤーは、ケンの死因を調査し、ホンクランに潜入して「知識の木」が何なのかを潜入調査することになる。


 ケンの死因の調査では、かなりいろんなものを調べたり、いろんな人に聞き込みできたりする。最大4つの仮説を立てて、それぞれ検証することになるが、例によって無意味。真面目に推理すると、すべての仮説には問題があり、現状では死因を特定できない、という結論に至る。仮に間違った説を支持しても、何も問題なくストーリーは進む。



 その後プレイヤーは何者かに銃で撃たれるのだが、自分を撃った人物を追ってバーに入ることもできるし、追わずに家に帰ることもできる。例によってどっちでもストーリーに大きな影響はない。



 どっちにしても、プレイヤーはホンクランの本拠地である、クソクラフトゲーに潜入することになる。

 このクラフトゲーは、ゲーム内での説明が不足していて、どうすればいいのかよくわからないから、ざっとここで説明しておく。


 まず、素材については、同じものを4つ採取したときのみ、係の人に渡すことができるようである。鉄だったら鉄を4つ採取して、初めて「素材を渡す」という項目が出てくる。


 クラフトの仕方は、まず、中央のレバーを引いて、使いたい機材のところに熱が行くようにする。次に、中心の炉に木材を入れる。そして、機材の中に素材を入れる。

 あとは決められた時間が経過すれば完成。その場で待機してもいいが、出来上がるまでに他のことをしていてもいい。


 クラフトする前にセーブして、使い方を確認してからロードしてやり直すのがおすすめ。



 ……と、説明しておいてなんだが、実はこのクソクラフトゲーは、例によって真面目にやらなくてもいい。クラン内で真面目に働かずに3回譴責を受け、懲罰房に入れられても、そのままストーリーは進行し、どっちにしても知識の木には入れるようになる。



 これ以降、話は『マトリックス』になる。実は、このゲームの世界で「現実」と思われているのは企業のシミュレーション内で、企業は人間を閉じ込めてNPC化することで、「人間のようなリアルな反応をするNPC」として売り込んで儲けていたのである。やっていることは『マトリックス』と同じだが、なんかしょぼい話である。「まともなAIが作れないので中の人を入れてみました」って、なにそれ。


 この世界の「現実」はループしていて、知識の木にいる314というのは、要するに314ループ目の主人公ということ。そして主人公は316ループ目の人らしい。つまり、もともとは同一人物だということ。


 ここで、314と協力して企業と戦うか、あるいは314を企業に引き渡すかを選べるが、どっちを選んでも話は同じ。314と敵対することを選んでも、結局314が主人公の身体を乗っ取って、企業にケンカを売ることになる。



 なんやかんやあって、最終的に企業と主人公は交渉することになる。企業は6つの選択肢を提案するが、その選択肢には条件が付いている。人を殺していたらこの選択肢は選べない、とか。そのため、実際には、この交渉の時点であまり選択肢は残されていないことが多い。

 選択肢は、おおざっぱには、このシミュレーションを終わらせる、このシミュレーション内の神になる、314と主人公を切り離す、何もせずそのままループに戻る、などの選択肢がある。


 しかし、どの選択肢を選んでも大差はない。なぜかというと、結局これは企業との「交渉」による決定だからである。どの選択肢を選んでも、企業の手のひらで踊らされていることには変わりない。『マトリックス』のネロのように、AIに反逆してAIどもをぶっ潰すとかいう楽しい選択肢はない。

『マトリックス』のパクリのくせに、『マトリックス』よりネガティブでつまらんオチしかないのってどうよ。



 そして、ここまで読めばわかるように、プレイヤーの捜査や推理、意思決定には、ほとんど何の意味もなかったことがわかる。何をどうしようがストーリーは一本道で、最後は企業と交渉して、限られた選択肢の中から何か選んで終わりである。

 非常に残念なシナリオである。『マトリックス』のパクリをやるなら、せめて本家と同じように、シミュレーションをぶち壊して支配者と戦うルートがあって然るべきだろう。


 一本道シナリオならいっそ、プレイヤーに無意味な選択肢など与えなきゃいい。あれだけいろいろプレイヤーに考えさせ、選ばせ、自由があるように見せかけておいて、実はその選択肢のすべてが無意味というのは、少々プレイヤーを馬鹿していると思う。

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