第61話 作戦会議と言う名の報酬話

 前回に続いて地下の現場の引継ぎは終えたが、作戦会議は継続中だ。

 要救助者と其々の死体を回収を終えると、一般の方々は逃げる様に引き上げて行ったので、人の目は無く、ある意味ではおあつらえ向きらしい。



「そんな訳で、クトルーが出る事は確定した、儂も出るから予算確保しとけ?」

 葛様が確定事項だと断定する、こうなると止められる存在は居ない。

「えっと、お幾らで・・・・?」

 一三さんが恐る恐ると言った調子で確認する。

 葛様が三本指を立てる。

「三千万?」

 残念そうに首を振る。

「さっきの選別分で足が出るぞ?」

 一体何を貰ったのか・・・・

「3億・・・・」

 一三さんが青い顔で指定金額を呟く。

「アレが本格的に起きた場合の被害総額考えれば格安じゃぞ?」

「ええ、確実に安いです、自衛隊に仕事任せるよりも確実に安いんです・・・」

「殺すだけなら自衛隊の装備でも無理では無いが、予算的に足が出るからな?」

「人死に的な損耗出た時の保証金考えても安いんですよね・・・・・」

「そんなに安いんですか?」

 思わず聞く。

「被害総額で考えるか? アレの結界に呑まれた場合、流れて水子が大量発生して国民幸福度下がる辺りから? 経済的にGDP下がる辺りから? それとも必要人材から?」

「分かり易い方でお願いします」

 色々語るネタは多そうだが、余り難しいのを話されても困る。

「じゃあ、クトゥルフの殺し方じゃが、割と物理よりじゃから儂ら以外、所謂自衛隊が持ってる現代兵器で殺せん事も無い、イージス艦のミサイルやら戦闘機の高高度からのバンカーバスター、潜水艦からの核ミサイルを当てれば純粋に死ぬ、陸上部隊は安全な足場が無いから射程距離的にお留守番じゃ」

「あれ? 其れなら自分達が出張る必要が無いのでは?」

 思わず突っ込む、之だから素人は・・・・と言う様子で3人が首を横に振る。

「先ずイージス艦のミサイルで考えよう、イージス艦とミサイルは高度なコンピュータとセンサーでターゲットをロックするが、クトルーの勢力範囲は一種の結界に成ってて、デジタル機器が変な電磁波で誤作動を起こすので、先ず当たらない」

 意外な事に、部長が説明を始めた。

 後ろで思いつめた様子で一三さんが本部に予算を確保しろと電話を始めた。

「当たりませんか・・・」

「で、そもそも霊体的な防御機構が無い一般人がクトルーの勢力範囲を観測すると、大抵精神に異常をきたして発狂する」

「SAN値直葬と言う奴じゃな?」

 葛様が以心伝心と言った感じに茶々を入れる。

「場合によっては人の形を保てるかすら怪しい」

「えー」

 其処まで行くだろうか?

「身体は精神と魂の形に引きずられるからな? 限界まで狂ったのなら身体も引きずられるわい」

「あの系統の神話生物、常時電磁波かく乱があるお陰で、そもそものセンサーが無意味で、肉眼の有視界戦になるから、結局例のSAN値直葬が発動するって言う堂々巡りで使い物にならなくなる」

 自衛隊を今一頼れない理由が肉付けされて行く。

「で、バンカーバスターも結局コンピュータの諸々の援護が無いと当たらない、いっその事第二次世界大戦のスキップ爆弾の方がマシかもしれない」

「だが、爆発ネタだと、余波で波が立つじゃろ?」

「ええ、其れは立ちますよね?」

 確かに其れは当然の物理現象だ。

「下手に大きい波立てると、例の最南端の沖ノ鳥島が波にさらわれて沈んだなんて事になったら領土問題で、隣国が鬼の首を取ったような騒ぎになる訳じゃな?」

「絶対にやかましい国が来ますね……」

 げんなりと言った様子で部長が同意する。

 確かに、一度沈んだとかで大騒ぎに成ったのはニュースでやって居たのを覚えている気がする。

 地殻変動で何だか浮かんで無事に済んだらしいが。

「だから、潜水艦で核兵器何てのも選考外、大陸弾道弾でも駄目じゃろうな?」

「そもそも、幾ら自国の領海内だろうと、自衛隊を下手に災害派遣以外で動かすと反日運動な議員とマスコミと隣国が鬼の首を取ったような騒ぎになる」

「ついでに言うと、護衛艦やら潜水艦使うと、さっきやったディープスのエルダークラスが水中適応の最大値、まさに水を得た魚状態で襲って来るからかなり危険じゃしな?」

「成程、そう考えるとかなり安いんですね」

 納得するしか無かった、果てしなく泥臭く生生しい。


「報酬の予算要求通りました! お願いします!」

 電話を終えた一三さんがほっとした様子で叫び、手で大きく丸を作った。

「じゃあ、心置きなくやるとしようか」

 葛様が狂暴な笑みを浮かべて居た。


 追伸

 因みに前回貰った物のお返しの品として、先程確保したCの触手とダゴンの死体が送られます、確実にあの人以外喜ばない。(Cの触手は作品によっては戦略兵器に成りかねませんが)

 クトルーの呼び声によると、丁度100年ぐらい前、大正時代に日本近海でルルイエが浮上して結構な被害者が出たらしいです、感覚的には関東大震災と被る感じでしょうか。

 葛様を代表する神様が人に対価を要求するのは、純粋に欲がどうとかでは無く、神等の神霊やらと人が一方的に与えられる関係と成った場合に、呪いじみた良くないモノ、若しくは穢れ的なモノが発生する為です、コレが発生すると世界全体でプラスマイナスの辻褄を合わせる為によく分からない所、致命的な所で悪いことが起きます。そう成っては何処で揺り戻すか制御できなくなるので、報酬を要求してそれによってプラスマイナスを平坦にする必要が有ります。

 例え片方が儲かって居ようと、当人達が釣り合って居ると認識できていれば問題ありません。

 他作品ですが、CLAMP先生の「xxxHOLiC」なんかで詳しく書かれています、名作ですので良かったらどうぞ。

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