第56話 地下大神殿と管狐
管理局の方々にお願いしますと泣き着かれつつ4人揃って地下に降りると、ヘドロと魚の腐ったような生臭い匂いが鼻に突き刺さった。
「それ使うと勿体無いから、こっち使え」
そう言うと、葛様が何処からともなく鉄パイプを手にしていた
「実体ありですか?」
「うむ、何時も狩っておる概念よりは生き物側じゃ、」
「刃物じゃダメですか?」
「魚の鱗相手に刀で真っ直ぐ斬れるか問題じゃ、割と硬いぞ?」
「硬いですか……」
応えつつ鉄パイプを受け取る。
「尚且海洋生物じゃ、塩分と血液は刃物の天敵じゃし、刃物駄目にするより素手の方がマシまであるぞ?」
「いや、素手?」
「こう、脇腹の辺りに鰓蓋(えらぶた)が有るから、その隙間に抜き手で指突っ込んで鰓(えら)の辺りをこう、指を引っかけてピッとな?」
抜き手を突き出し、指を鉤状に曲げて引っ張る動きをして見せて来る。
人間に例えると、あばらの隙間に抜き手で突き刺した後で、肺を掴んで引きちぎれと言う事である、グロイ……
「まあ、若いの限定じゃがな? 成体のエルダーに成ると鱗が固く成るし、鰓耙(さいは)のトゲも固くなる、狙うのは鰓耙が少ない一番下の辺りじゃ」
「流石に素手では怖いので、こちらを使わせてもらいます」
そう言って、受け取った鉄パイプを掲げる。
「結局其れを使う時のコツも、鰓蓋の辺りを力いっぱい殴りつけるのがポイントじゃ」
「どっちにしても鰓を狙えば良いと・・・」
「素手で分が悪い場合でも、足で鰓蓋蹴り砕けば十分じゃからな」
と言うか、この人の場合、武器の必要性が無いんじゃなかろうか?
「儂は未だ手を出せん、頼るのはお門違いじゃぞ?」
念を押された。
螺旋階段に成って居る通路を歩いて下り、神殿と呼ばれる広場、天井が高く、柱が林立する部分に到着する、水は既に引いて居たが、未だ湿って居て、うっすら泥が積もっている。
つくづくこの恰好には似つかわしくない、因みに傍から見て女に見えれば問題は無く、足元まで可愛らしい必要は無いと言う事で、動き易い様に少々ゴツ目のハーフブーツを履いて居る、こう言った場所では滑らずに済んで助かった。
しかし、広い、横幅100m天井高さ20m、総延長は6キロと言われるこの巨大な地下構造体は、この施設備え付けの照明が点灯している状態でもまだまだ薄暗く、反対側の壁すら見えずに闇に埋もれている。
偵察用らしい一三さんの管狐が何匹か先行して走って行った。
「アレって何匹居るんです?」
思わず聞く
「最大75匹です」
「多いんですね……」
思ったより多かった。
「お陰で食費も馬鹿になりません」
少し困り顔だ、増え過ぎているらしい。
「餌って?」
「味噌です、75匹居ると、一日で味噌1キロ平らげます」
えっと、安めの500gで400円として、日当たり800円ぐらい・・・・
「貰って育てるなんて考えるなよ? 一家族で必ず75匹まで増えるのが管狐だから、適性無しだと言うこと聞かない猛獣が75匹増えるだけだ」
部長が釘を指して来る。
「見鬼と使い魔の適正無いと、言う事聞かないと言うか、そもそも指示出せませんし」
一三さんが釘を指して来る。
「あれ? 今その肩に居るのは?」
「私の方で一緒に居る人と連携獲り易い様に見えるように指示出してますから、普通に見えます、と言うか、この子に限っては私の最初の一匹で力が強いんで、割と誰でも見えますね」
「まあ、儂が脅せばどうとでも成るが、其れじゃ意味無いしな?」
揃って止めとけと言われる、どっちにしても適正無いらしいので、諦める事にする。
「と言うか、既に儂が居るんじゃから、新入りに手を出す余裕はないじゃろう?」
ナチュラルに惚気られた、部長と一三さんがうっかり砂糖を噛んだような表情を浮かべて居た。
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