にゅうめんマン、悪の教団に乗り込む(15)

「そいつはすごいな」

 六地蔵ファイブ1号は、不法侵入者の強さを説明する相手の坊主に答えた。

「ああ。何でも、いつも俺たちの活動を邪魔をする『にゅうめんマン』という奴で、こいつをやっつけたら褒美(ほうび)としてあの美人の新任副管長からキスしてもらえるそうだ。……それじゃ、俺は急いでるからもう行くぞ」

 坊主は本館の方を目がけて走り去った。


「聞いたか、みんな」

 1号が他のメンバーに言った。

「ああ。これは行かねばなるまい」

「俺たちの出番だな」

「一肌脱ぐとするか」

 2号と3号と4号は即座に同意した。


「お前たち、さっきまで全然やる気がなかったのに、まさか副管長のご褒美というのが目当てで――」

 卦六臂が言った。

「断じて違う」

 2号がすかさず否定した。3号も同調して言った。

「そんなものに興味はない。純粋に組織を守るためだ。――さっきからずっと騒ぎが収まらないのは誰もにゅうめんマンを止められないからだろ?」

「そうだろうね」

 卦六臂は答えた。

「それなら取るべき行動は明らかじゃないか。今分かっていることは、俺たちが行かないと宗教法人六地蔵が危ないってことだ」

「前たちが行ったって危ないだろ。この間にゅうめんマンと戦ったとき1人あたり2〜3秒くらいでやられたじゃないか」


すると3号が答えた。

「あのときのことは俺たちも反省しているんだ。なあ4号?」

「ああ。ちょっと手加減しすぎたってな」

「手加減だって?」

「そのとおり。あまり痛めつけてはかわいそうだと思ったんだ」

「なんでみんな、そんなに自信満々なんだよ。ほんとに相手より強いなら、手加減するにしたって2〜3秒でやられるわけないじゃないか」

「まあ見てなって。今度は負けないから」

「どうしても行きたいみたいだね。やっぱり副管長のご褒美がほしいんじゃないの。私というマスコットガールがありながら……」

 卦六臂は六地蔵ファイブの紅一点であり、公式マスコットガールでもある。


「――分かってくれ、卦六臂。宗教法人六地蔵を救えるのは俺たちしかいないんだ。俺たちだって、にゅうめんマンが強いことは百も承知しているさ。でも、男には行かねばならぬときがあるんだ」

 4号がまじめくさって答えた。

「そうだ。神経衰弱なんかして遊んでいる場合じゃない。行くぞ!」

「おう!」

「ヒア・ウィー・ゴー!」

 1〜4号は宗教法人六地蔵を救うため一斉に駆け出した。


「裏切りもの!」

 卦六臂は叫んだ。だが、戦いにはやる男たちの耳にその声は届かなかった。

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