出会い系の悲劇

オバケくん

 オフ会に行きまくり、感覚が麻痺していた。

 女性としての危機管理である。


 そもそも彼氏が欲しいと言い、出合い系掲示板に行くのがビッチらしい考えである。


 返信があった男と約束を取り付ける。


 28歳、オバケ君である。

 細身で、スポーツカー乗り。

 熱帯魚好きで、ブラックゴーストと言う魚を飼っていた。


 昼はペットショップを見て周り、夕食も一緒に食べた。


 私は量を食べる為、最初から別会計にした。

 それにしてもオバケ君、女子みたいなの食うなぁ…。そんな量で足りるのか?ガツガツ!!


 熱帯魚について、会話が盛り上がった。


 車に戻るとオバケ君が、

「湖を見に行こう!」

 と言い出した。


 そんなに水棲生物が好きなんだ…!


 私よ!気付け気付け!今は夜だぞ!


 峠を越え、湖の休憩スペースに停めると、オバケ君「やらせろ」と迫ってきた。


 ほら見ろ!

 今度は何っ!?じゃないぞ!

 これはお前も悪いんだぞ!

 あぁ、昔の私を説教したい。


 しかし、やらせてなるものか!


「やらせろ!」

「嫌だ!」


 しばらく押し問答が続く。


 辺りには人っ子一人いない。


 車は通るものの、深夜一時である。


 そしてオバケ君が言う一言。


「彼氏が欲しいんだよね?」


 はぁああああ!?彼氏の対応じゃねーだろソレェ!!


 大体、強姦魔のクセしていちいち了解得るな!

 だらしない!

 やるならば無言で女襲え!

 ビシッと襲え!

 断るに決まってんだろ!


「誰がテメェとヤルかよ!

 そんなにやりたきゃ、私を殺してそれからソレとヤレ!」


「やるかボケェッ!!」


 オバケ君掴みかかってきた!


 クソっ、ここまでか!


「ぅおらッ!!」


「南無ーーーーっ!!!」


 どうする!

 隙を見て目潰しするか?玉を齧るか!?


 だがオバケ君、私の服には掴みもせず、シートベルトを取っ払うと助手席のドアを開けた。


 えぇぇっ、もしかしてっ!?

 こんな寂しい場所に置いてく気かよ!

 最低野郎めっ!!


「落ちろぉぉぉっ!!」

「いででででで!」


 そのまま、足でゲシゲシと蹴られ、車から降ろされた!


 オバケ君はそのままUターンして走り去って行った。


 ぐぅぅぅーーーーーっ!!


 この身は死守したけど、なんか負けた気がする!

 アァアアア!ムカつくムカつく!!

 ふぬーーーー!!!


 全く、何もなくて本当に幸いであった。


 そして、今にして思えば、結婚など焦ってするものではないのだ。


 私は元同僚の友人に連絡し、迎えに来てもらった。


 無様すぎて、事情は話せなかった。


 この友人は前回の鬱期間に心配して、私の家を訪ねてきた者である。

 私は7年後、この男と結婚する事になるのである。


 まぁ、半年で離婚するんだけどね!

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